時代の最高速モデル 100年を振り返る 1920年代 ヴォグゾール30-98 OEタイプ 162.0km/h

公開 : 2022.04.16 07:05

時速100マイルを突破した英国初の量産車

第一次世界大戦後、ポメロイの後輩としてヴォグゾールを牽引した技術者のCE.キング氏は、30-98の4気筒エンジンを改良。排気量を4224ccへ僅かに小さくしつつ、最高出力を99psから116psへ引き上げることに成功した。

エンジンブロックは堅牢で、大径のバルブに対応。3400rpmという当時としては高い回転数に対応させるため、ダブルバルブ・スプリングとジュラルミン製のコネクティングロッドが採用された。

ヴォグゾール30-98 OEタイプ(1923〜1927年/英国仕様)
ヴォグゾール30-98 OEタイプ(1923〜1927年/英国仕様)

トランスミッションは、初代と同じヴォグゾール社製の4速マニュアルだが、マルチプレート・クラッチへ交換。そうして誕生したのが1920年代の代表、改良版となる30-98 OEタイプだ。

すぐに高性能モデルとしてドライバーの共感を集めたが、特に熱意に溢れていた1人が、メジャーL.ロプナー氏。AUTOCAR英国編集部へ、時速100マイルを達成できる量産車が手に入らないことについて、以前から手紙を寄せていた。

そこでヴォグゾールは、30-98 OEタイプならその速度に届くとロプナーに約束。彼をブルックランズ・サーキットへ招待し、自社のテストドライバー、マット・パーク氏がドライブする様子を披露した。

走ったクルマは、マッドガードとフェンダー、スペアタイヤを装備した、完全な公道仕様。違いといえば、フロントガラスが小さなモノに交換されていたことと、ラジエターにカウルが追加されていた程度だった。

そして実際に時速100.7マイル、162.0km/hを達成。英国の量産車として、初めて時速100マイルを突破したモデルとして公式に認められた。

座ってすぐに運転できるクルマではない

今回ご登場願ったのは、ヴォグゾール社のヘリテイジ・コレクションが保有する1926年製30-98 OEタイプ、OE268だ。1947年にヴォグゾールへ寄贈され、75年間大切に維持されてきた。

EタイプとOEタイプを合わせて、生産台数は598台。現存するなかで、最もオリジナル状態に近い1台といえる。

ヴォグゾール30-98 OEタイプ(1923〜1927年/英国仕様)
ヴォグゾール30-98 OEタイプ(1923〜1927年/英国仕様)

アクセルペダルは3枚並んだ中心で、Hパターンのマニュアル・シフトレバーはドライバーの右端。1番手前側にリバースがある。ブレーキはボディ外側のレバーで操作する。

現代のモデルとは操作系が異なり、座ってすぐに運転できるクルマではない。ゼニス社製キャブレターへ燃料を送り、点火タイミングを遅らせて、エンジンを始動させる。

大きなグリフィン・マスコットの載ったボンネットの内側で、1056ccのシリンダー4本が爆発し、回転する勇ましい音が放たれる。重いクラッチペダルを踏み、シフトレバーを右前方へ倒すと、30-98 OEタイプが走り出す。

4速MTにはギアと回転数を同調させるシンクロメッシュが備わらず、フライホイールも重量級。耳で音を聞きながら、探るようにレバーを倒してシフトチェンジ。トップまでシフトアップする頃には、1725kgあるヴォグゾールは猛進している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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