電動化したマセラティってどうなの? デザイン責任者にブランドの未来を問う

公開 : 2022.04.02 18:05

マセラティらしさを感じる要素

――テールライトはマセラティ3200GTにインスパイアされていますが、歴史的なモデルを振り返りたかったのでしょうか?

「答えはノーです。マセラティに限らず、世界的に最もアイコニックなクルマは何かと自発的に考えるのは、とてもいいエクササイズになりました。実際、わたしは60台思いつきましたが……」

「レトロなデザインが良いというわけではありません。ピュアさも強調したいのですが、同時に、これがマセラティであると見てほしい。もし、バッジやロゴが見えないとしたら、そのクルマを表すためにいくつの要素が必要でしょうか?ブランドメッセージを伝えるために5、6、7、10、15個の小さな要素が必要なクルマもありますし、1つだけでいいクルマもあります。ジープのセブンスロットグリルが良い例ですね」

マセラティ・グレカーレ
マセラティ・グレカーレ    マセラティ

「マセラティにとって、フロント、サイド、リアに少なくとも1つの明確な要素があることが重要でした。フロントはトライデントのある顔、サイドは完全にアプローチを変えたホイール、リアは3200GTのライトが当時としては刺激的なディテールだったので、『いいじゃないか』と」

「マセラティに関連する非常に強いディテールです」

車載スクリーンにもマセラティ流のこだわり

――このセグメントの他のクルマからはインスピレーションを受けましたか?

「はい。ですが、おそらく皆さんが期待するようなものではないでしょう。他のクルマがお客様に何を提供し、何が優れていて、何がわたし達にできるのか、ということです。快適さ、収納、直感的な操作、適切なものが適切な場所にある……クルマの実際の使用シーンを決して忘れないことが重要なのです」

「また、スクリーンに関しても、市場の動きを観察しています。どこまでが『スクリーンのピーク』なのか、スクリーン・デトックスは必要なのか?わたし達にとって、マセラティは常にパフォーマンスを体験するためのものです。巨大スクリーンに気を取られることなく、クルマを体感したい」

マセラティ・グレカーレ
マセラティ・グレカーレ    マセラティ

「このクルマにはかなり大きなスクリーンが搭載されていますが、表示モードを設定できます。わたしのお気に入りはリラックスモードで、必要最小限の情報しか表示されません。マセラティに乗るということは、自分へのご褒美であり、不必要なグラフィックで気を散らさないということが大切なのです」

EVでは冷却性能と空力に注目

――EVでは、デザインのアプローチをどのように変えるのですか?

「フォルゴーレ(マセラティのEVシリーズ)は、基本的な土台は同じで、90%クリアなものを使っています。わたし達が注目するのは、冷却条件の違いや、より積極的な空力要求、これはホイールやドアハンドルにも影響を与えましたね、そしてコミュニケーション(例えば色使い)です」

――燃焼パワーが恋しくなりませんか?

「わたしは自然吸気のV8エンジンを搭載したグランカブリオに乗っているので、朝のコールドスタートは特別な瞬間です。しかし、結局のところ、時代の現実を無視することはできません。EVだってすごいんだ、と思ったのは、4年前、デザインスタジオでディスカッションをしていたときです」

ステランティスのデザイン担当副社長クラウス・ブッセ
ステランティスのデザイン担当副社長クラウス・ブッセ    マセラティ

「そこで面白いエクササイズをしました。1954年にピニンファリーナがデザインしたA6 GCSをブレシアの街で走らせるビデオを撮ったのです。エンジン音を消して、クラシック音楽を流したのですが、その時に『ああ、本当は素晴らしいものなんだ』と思ったんです。1マイル先から存在を主張するのではなく、静かに近づいてくるのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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