よりスポーティにリフレッシュ アルピーヌA110 Sへ試乗 1.8L 4気筒ターボは300psへ

公開 : 2022.04.23 08:25

2017年に登場した、見事な完成度のコンパクト・スポーツクーペがリフレッシュ。英国編集部が「S」を評価しました。

軽く素早く快適なスポーツクーペ

2017年、われわれの期待を背負って舞い降りた、アルピーヌA110。軽く素早く快適で、素晴らしい仕上がりのコンパクトなスポーツクーペだ。早いもので、登場から5年が過ぎようとしている。

まったく新しいモデルが、当初から突出した完成度を得ていることは珍しい。同時に、その改良版が素晴らしい初代を超える存在になりにくいことも、自動車の不思議なところではある。

アルピーヌA110 S(英国仕様)
アルピーヌA110 S(英国仕様)

アルピーヌA110は、英国の自動車関係者にも大きな感銘を与えた。レーシングカー・デザイナーのゴードン・マレー氏も、A110のローンチエディションを楽しんだという。

ロックバンド、ピンク・フロイドのドラマーで自動車コレクターでもあるニック・メイスン氏や、BBCトップギアやアマゾン・グランドツアーなどに出演するジェームズ・メイ氏も、ガレージに納めている。

発売以来、軽量なミドシップ・シャシーに、シンプルで低コストなルノー製コンポーネントと美しいスタイリングが融合し、多くの自動車ファンを虜にしてきた。クラシカルすぎず、デフォルメしすぎず、1960年代のA110を現代へ蘇らせたといっていい。

しかし、期待ほど販売台数は伸びなかった。A110へ心が打たれても、実際にはポルシェ718ケイマンを選ぶ人が少なくなかったようだ。

新CEOのビジョンで販売は74%向上

そんな煮え切らない状況が続いていたアルピーヌA110だったが、親会社に当たるルノーのCEOとして、ルカ・デメオ氏が着任。ルナウルションと彼が呼ぶ新生プランのもと、アルピーヌの再起が図られている。

ルノーの高性能部門、ルノー・スポールとF1チームは、アルピーヌにリブランド。アルピーヌのプロトタイプ・レーシングカー、A380が2021年のル・マン24時間レースに参戦した。2022年シーズンも、意欲的に活動するという。

アルピーヌA110 S(英国仕様)
アルピーヌA110 S(英国仕様)

アルピーヌ・ブランドの存続が危ぶまれたことも、一時はあった。しかし、状況は一変したといえる。

その成果として、A110の販売台数も向上。COVID-19の流行で市場は冷え込んだ状態ながら、2020年の1527台に対し、2021年は2659台と74%も伸ばしている。英国では前年比で92%、フランスでは117%も多く売れたとのこと。

アルピーヌというブランドの認知度が、広く高まったことが要因だろう。英国の高速道路でA110を目撃する回数も、最近は確かに多くなったように思う。

そして次の課題が表れた。走りも見た目も高い評価にあるクルマの輝きを維持するため、どのようにリフレッシュするかだ。そろそろ、市場を刺激する時期がやってきたというわけ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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