経験が活きた電動スクーター ヤマハ・ネオス(NEO’S)へ試乗 クラスベストの完成度

公開 : 2022.05.20 08:25  更新 : 2022.09.26 14:41

優れた製造品質や長い経験が反映

今回は、日中に48.7kmを走行した後で、24.9kmぶんの電気が残っていた。合計するとメーカーの公表値より航続距離は長いことになり、性能は上々といえる。午前中に試した時は合計62.4kmだったから、気温や乗り方などで変化することもわかる。

バッテリー1本だけの場合、最高速度で連続して走ったり急な丘を駆け登ると、25km程度まで航続距離は短くなる。価格は安くないが、2本目のバッテリーは欲しいところだ。

ヤマハ・ネオス(NEO’S/欧州仕様)
ヤマハ・ネオス(NEO’S/欧州仕様)

ただし、原付スクーターに乗るのは主に都市部で、通学や通勤などが中心となるはず。多くのユーザーにとって、往復で1日20kmも走れれば充分とはいえる。ヤマハも、それを前提としている。

ブレーキはフロントがディスクで、直径200mm。リアはワイヤーで操作するドラムブレーキとなる。車重98kgのスクーターを45km/hから減速するのに、充分な制動力が得られる。サスペンションは上質で、減速時に姿勢が乱れることはない。

ネオスが搭載するシステムはシンプルで、ABSは備わらない。トラクションコントロールも付いていない。

ネオスの価格は中国製の電動スクーターと比べると割高ではあるが、ヤマハとしての優れた製造品質や長い経験が活かされた結果といえる。KYB社製のサスペンションは、市街地で乗るスクーターに好適。タイヤのグリップ力にも不安はない。

少しコーナーを積極的に走り、ネオスを27度まで傾けたが終始安定していた。スタンドが地面に擦ることもなく、125ccスクーターのような安心感すらあったほど。

クラスベストといえる完成度

ヤマハ・ネオスは、優れた電動スクーターだといえる。乗り心地に優れ、軽量で機敏で、駆動用モーターは静か。魔法のじゅうたんのように滑らかに進む。ブレーキの効きは良く、加速も鋭く扱いやすい。

エンジン音のないスクーターの場合、ボディやサスペンションのノイズが目立ってしまうものだが、そんな雑音もない。バイクを理解したヤマハだけあって、プレミアムな質感すら備わっている。

ヤマハ・ネオス(NEO’S/欧州仕様)
ヤマハ・ネオス(NEO’S/欧州仕様)

スマートフォンを置ける小物入れには、12Vのソケットも付いている。SUBポートはオプションだ。シート後方に追加できる、34Lのラゲッジボックスも用意されている。

最高速度は45km/hだが、基本的にこのクラスのスクーターにはすべて同じ制限がかかる。航続距離は短いといえ、アクティブな大学生や働き盛りの青年にとっては、1本のバッテリーで走れる37kmは不足気味かもしれない。

2本目のバッテリーで航続距離は伸ばせる。だが、980ポンド(約16万円)は気軽に買える金額ともいえない。

電動スクーターの人気は上昇中。ヤマハの販売台数の推計も、それを示している。クラスベストといえる品質や完成度を持つネオスも、広く受け入れられるだろう。唯一、航続距離が気がかりではあるけれど。

ヤマハ・ネオス(NEO’S/欧州仕様)のスペック

英国価格:3005ポンド(約50万円)
全長:1875mm
全幅:695mm
シート高:795mm
最高速度:45km/h
0-100km/h加速:−
航続距離:38km(シングルバッテリー)
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:98kg(シングルバッテリー)
パワートレイン:3相同期モーター
バッテリー:8.9kWh
最高出力:3.4ps
最大トルク:13.8kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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