【現実の環境でテスト】ボルボC40リチャージ・ツイン 一般道/高速道路/峠道で検証

公開 : 2022.05.17 18:05

インフラ整備をするべきだと思う

5月5日には、川崎の自宅から仕事場のある甲府に向かう。

多摩丘陵界隈の中速域では、都内とはやや異なった印象が感じられた。古い舗装で、整備が行き届いていない路面では、路面の段差や凹凸を全て拾うサスペンションの渋さが気になった。

古い舗装で、整備が行き届いていない路面では、路面の段差や凹凸を全て拾うサスペンションの渋さが気になった。
古い舗装で、整備が行き届いていない路面では、路面の段差や凹凸を全て拾うサスペンションの渋さが気になった。    戎大介

ストロークが少ないのか動き自体がボディとマッチしていないのかわからないが、とにかく突っ張ったようで吸収されない。

それゆえ、高速道路でも、姿勢を作りづらいので、コーナーに入りにくく普段のスピードで走る気になれない。

最近まで所有していたレンジローバー・イヴォークなら、何の抵抗もなく入っていったコーナーに神経を使うのはつらいものである。

残念ながら、都内の低速域の印象とは大きく異なった感触となってしまった。また、回生ブレーキの選択は、オン/オフの2つしかなく、切り替えも、画面を探し出すのが面倒で辛い。

ワンペダルは慣れれば便利だが、複数台を乗っている人にはお勧めできない。せめて、もう一段階欲しいと思う。

甲府に到着した時には、オドメーターは3447km、従って113kmを走行したことになる。バッテリーの電力残量は66%であった。

甲府の常磐ホテルには、3kWの充電器が2基、ポルシェの8kWが2基用意されている。これは現在、国内の普通充電器では、最強の組み合わせであろう。

まず、3kWでセットしてみると満充電まで9時間30分かかると表示された。その後、すぐに8kWに変えると、4時間30分という結果がでた。

計算上も、このクルマの78kwhのバッテリーを3kWでゼロから満充電するには、26時間かかり、それを8kWなら9.75時間で済む訳で、この事実だけでも如何にインフラの強化が必要かをお分かりいただけると思う。

現在、ボルボメルセデス・ベンツの推奨する6kWでも13時間かかるのだから、まだ足りないと思う。

初期の日産リーフの時代ならともかく、高性能なEVを作るのなら、国に頼るだけでなく、ポルシェのように、メーカーとしても連携してインフラ整備をするべきだと思う。

試しに地方の、或るボルボのディ―ラーに問い合わせをしてみたところ、3kWの普通充電器と50kWの急速充電器は装備されていたが、EV先進メーカーを謡うのなら、せめて、ディーラーに6kWの普通充電器と90-150kWの急速充電器はほしいものだ。

ワインディングでは強烈なパワー

5月6日には甲府から川崎の自宅へ移動。この時は、川崎で充電をせず、8日の帰りに中央道の談合坂サービスエリアで急速充電を行ってみた。

この時のオドメーターは3620km。従って173kmを走行して、残電力は47%であった。

談合坂サービスエリアで急速充電した際の様子。
談合坂サービスエリアで急速充電した際の様子。    笹本健次

談合坂の急速充電器は恐らく50kWのはずであったが、データを見ると、出力電圧398-407V、出力電流85Aと記述されていたから、35kWなのかもしれない。

事実、30分の終了後は、17.5kwh充電されたことを示していて、車輌の残量は67%まで回復していた。

しかし、これが150kWであれば、ゆとりで満充電になるはずで、将来、全国のサービスエリアに150kWの充電器が配置されるようになれば、本当のEVの時代が来るのだろうと思う。

なぜなら、現在、もし仮にこのボルボで1日に600km(東京~神戸程度)を走るとすれば、恐らく3回充電しなければならず、その度に30分以上の充電時間のロスを考えると苦痛である。

しかし、150kWの急速充電器で80%の充電が可能なら、1回の充電で更に遠くまでゆくことができるであろう。

5月11日には、甲府の仕事の合間を縫って、ワインディングに出かけた。ここで一番驚いたのは強烈なパワーで、アクセルを踏み込んだ途端、猛烈な加速が体を襲ってくる。

しかし、サスペンションはそれに追随する動きをしてくれないので、コーナーではかなり気を遣ってしまう。

確かにパワーは有り余るほどあるが、はたしてこのボルボに必要なのか、いつこのパワーを使うのか、疑問が湧いてきた。

本来、ボルボは、際立って優れてはいないものの、あらゆる点で平均点より上で、しかも安全第一であり、安心して乗ることのできるブランドではないかと思う。

そう考えると、このC40リチャージは、意欲は買うものの、まだEVとしての「ボルボらしさ」という意味でのバランスは取れていないように思う。

おそらく、今後、更に改良を重ね、より優れたEVに仕上がってゆくはずで、このことは何の心配もいらないが、やはり、インフラを早くどうにかしなければと思う。

偶々、現在、私の環境はとても恵まれているが、これが当たり前にならないとEVの普及は無いだろう。

さて、5月12日には、普通の3kWの充電器で充電をしてみる。バッテリー残は72%から充電を開始して、満充電まで7時間34分掛かったが、夜間なので、何の問題もない。この時のオドメーターは3765kmであった。

そして5月13日の最終日は甲府から川崎まで走り、自宅のガレージで8kWの充電を行った。

この時のオドメーターは3915kmを指しており、トータル635kmの試乗は終わりとなった。

ボルボC40リチャージ・ツインは、デザインも優れ、取り回しも楽で、EVの良さを前面に押し出したクルマだと思う。

もう少し、中高速域の走りを煮詰めれば、パワーに見合った更に良いEVとなるのは間違いない。

残された問題は充電インフラである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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