【詳細データテスト】トヨタ・アイゴX 1クラス上のシャシーと洗練度 エンジンは非力 価格は高すぎ

公開 : 2022.05.21 20:25  更新 : 2022.06.21 04:52

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

パッと見、アイゴXは先代までとあまり変わったように思えない。デザイン言語は大きく異なるものではないし、ずんぐりしておどけた感じのシェイプも、低く設置されたグリルも、ルーフ近くまで伸びたテールライトやガラスのテールゲートも、これまでとそっくりだ。

ところが、実際にはまったく違うクルマなのである。もはや、ほかのメーカーとコンポーネンツを共有する必要がなくなったので、すべてがトヨタのオリジナルに置き換えられた。

ホイールは、コンパクトカーとしては大径の17〜18インチで、堂々としたサイドビューを演出する。しかし、幅は狭いので、リアから見るとつま先立ちしているような印象だ。リミテッドエディションには、専用のオレンジのアクセントが入る。
ホイールは、コンパクトカーとしては大径の17〜18インチで、堂々としたサイドビューを演出する。しかし、幅は狭いので、リアから見るとつま先立ちしているような印象だ。リミテッドエディションには、専用のオレンジのアクセントが入る。    MAX EDLESTON

まずプラットフォームは、ヤリスのTNGA−Bをモディファイして使用している。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームというおなじみのレイアウトで、おおまかにいえば、これまで通りということになる。ただし、技術面は更新され、シャシーの操縦性と洗練性を高めている。

とはいえ、もっともわかりやすい変更点を挙げるなら、サイズアップということになる。先代比で、全長は235mm延びて3700mmとなり、全幅は125mm拡がった。いまどきのハッチバックがたいていそうであるように、ラインナップは5ドアのみとなったが、後席ドアは笑ってしまうほど小さい。

SUVやクロスオーバーと呼んでいいかは疑問がある。全高1525mmでは、ベントレーベンテイガに踏みつぶされそうだ。とはいえ、ボディを拡幅し、エントリーグレードでも17インチ、ほとんどのグレードは18インチのタイヤを履くので、このセグメントとしてははかなり堂々たるスタンスに仕上がっている。

もっとも、それは少なくともサイドからみれば、という話。アルミホイールの幅は5インチしかないので、後ろから見ると細いタイヤが踏ん張った、農業用トラクターに似た眺めと言えなくもない。

サイズアップしたということは、必然的にウェイトも増量してしまう。テスト車はフル装備のリミテッドエディションだが、974kgという実測値は、2014年に計測した先代アイゴより84kg重い。それでも、i10よりはほんの少し軽いのだから、トヨタのうまく重量増加を抑制したといえる。

いっぽう、先代からキャリーオーバーしたコンポーネンツもある。エンジンだ。1KR型1.0L直3の発展版が、アイゴXには搭載されるのだ。ダイハツが開発したこの小型車用ユニットは、最新のエミッション規制に適合させるべく、これまで数々のアップデートが施されてきた。しかしながら、出力については大幅な向上をみていない。今回の仕様も、72ps/9.5kg-mと慎ましやかなスペックだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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