低エネルギー・コストに驚く メルセデス・ベンツSクラス S 580e(2) 長期テスト

公開 : 2022.09.17 09:45

ドイツの名門ブランドが提供する、最上級PHEVの完成度は? ラグジュアリー・サルーンの実力を長期テストで確かめます。

積算6794km 14.0km/L近い燃費を簡単に出せる

筆者は最近まで、古いランドローバーディフェンダー 90に乗っていた。とても素晴らしいクルマだと1秒毎に感じるほど、気に入っていた。ただし、燃費はイマイチ。丁寧に運転しても、9.0km/Lを超えることはなかった。

ガソリンタンクを満タンにすると、筆者の財布は空っぽになるのが常。2.0Lの直列4気筒と控えめなエンジンだったが、現在の原油価格の高騰を受け悩みのタネになっていた。ディフェンダーのボディは四角く、空気抵抗が悪いこともあるだろう。

メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)

それでは、ほぼ同じ車重を持つSクラスのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)はどうだろう。滑らかなボディラインに、3.0Lの直列6気筒エンジンが載っている。

PHEVだから、駆動用バッテリーだけで一定の距離は走れる。だが、タッチモニターでバッテリー量を温存させる状態に切り替えれば、ガソリンエンジンだけで走行もできる。

実際に試して驚いたのだが、トリップコンピューターの積算が甘い数字だとしても、14.0km/L近い燃費を簡単に出せる。駆動用バッテリーをまったく使わずして。

緩やかな下り坂でも、優しく運転しているとエンジンは即座に停止。必要のないエネルギー消費を止めてくれる。

坂を下ることで生じる必要のない運動エネルギーは、電気エネルギーとして効果的に回収してもくれる。EVモードでの航続距離が2km前後伸びることすらある。

驚くほど低いエネルギー・コスト

普段は、自宅のウォールボックスと呼ばれる家庭用充電器で駆動用バッテリーを満たしている。容量は28.6kWhもあるため、EVモードで最長101kmを走れるとメルセデス・ベンツは主張する。ベントレーベンテイガ・ハイブリッドは40kmだ。

しかも長期テストのS 580eは、最近の運転の傾向から106kmを積算している。カタログ値より長い。

メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)

この距離を超えて走らない限り、ロングホイールベースのSクラスは、過去に所有したり運転したあらゆる内燃エンジンを載せたモデルより、エネルギー・コストが低いことになる。車重2.4tの高級リムジンで、最高出力は500馬力以上あるのに。

ロンドンへの往復という少し長めの往復でも、途中充電することなく、燃費は18.0km/Lへ迫る。この効率の良さで、ガソリンスタンドへ立ち寄る機会は大幅に減った。自宅で一晩充電すれば、約100kmの航続距離が手に入る。

駆動用バッテリーとガソリンタンクを使い切る前提での航続距離は、約1400kmになる計算。長距離旅行も、より速く快適にこなせるというわけだ。

S 580eでマイナスといえるのは、駆動用バッテリーの影響で荷室の3分の1が削られていること。ラグジュアリー・サルーンとして、軽視できない点ではある。

もっとも、筆者の息子たちは独立しているし、基本的に移動時の荷物は少ない。今のところ困ることはなさそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト メルセデス・ベンツSクラス S 580eの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

メルセデス・ベンツ Sクラスの人気画像