【詳細データテスト】シトロエンC5 X C以上D未満 快適志向のソフトな足回り 静粛性はあと一歩

公開 : 2022.10.08 20:25  更新 : 2022.10.10 00:57

クロスオーバーワゴン風ですが、上級セダン的な役割も帯びたC5 Xは、とにかく快適志向で、価格帯の割に装備も充実。乗り心地と静粛性に改善の余地ありですが、それでも同価格のワゴンやSUVより見返りの多い選択肢です。

はじめに

もしも狂気の沙汰が幾度も繰り返されて、違う結果が期待されているのだとしたら、C5 Xはシトロエンの経営陣にとってグッドニュースではない。これまで大型のセダンやワゴンに関して、フランスのメーカーは販売で芳しい成果を上げられなかったことが多い。もっと言えば、ドイツのプレミアムブランド以外に、その分野での成功を収めたメーカーはほとんどないのだが。

多くのユーザーがSUVやクロスオーバーを選び、フォードヴォグゾールにモンデオやインシグニアの次期モデルを開発する気配がない今、シトロエンは新世代のC5を生み出した。実質的に、2016年に消滅したモデルの復活だ。

テスト車:シトロエンC5 Xピュアテック180シャイン・プラス
テスト車:シトロエンC5 Xピュアテック180シャイン・プラス    LUC LACEY

もっとも、C5 Xは、Xの一文字が付け加えられた以上の変化を遂げたクルマだ。まず、各部の寸法を仔細に観察してみると、シトロエンの5番台でありながら、フォルクスワーゲンパサートやシュコダ・シュパーブ、プジョー508などと直接的に競合するものではないことがわかる。もちろん、消えゆくモンデオやインシグニアのライバルでもない。

それらDセグメントモデルより、C5 Xはやや小さい。とはいえ、フォルクスワーゲン・ゴルフやシュコダ・オクタヴィア、プジョー308といったCセグメントモデルのワゴンタイプよりは大きい。独自のニッチを生み出したと言える。

さらに重要なのは、かつてのグループPSA、現在のステランティスはグローバルカンパニーでありながら、一部のモデルを欧州へ導入しないような戦略を取ることがないということである。ほかに売り上げを見込めるマーケットがあるから、生産できる余裕があるからだ。

欧州では販売を終了したC5なども、中国ではニーズがある。だから、欧州でさほど売れ行きがよくなくても、リスクは小さい。その代わり、このフランス車は、ほとんどの数が中国で生産される。

最近のシトロエンはヒット作に恵まれているとは言えないものの、明確な方向性を見出している。ほどほど奇妙で、アグレッシブさやスポーティさとは無縁の、とにかく快適さを追求したクルマに注力しているのだ。もし、それが全車に共通しているのなら、大型のセダンやワゴンもそうであるはずだが、はたして。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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