30馬力でも半端ないスピード感 ジャンニーニ500 TV アバルト695 SS 凝縮された楽しさ 後編

公開 : 2023.01.22 07:06

入念なチューニングが施された、2台のヌォーヴァ500。笑いが止まらないほど楽しいクラシックを、英国編集部がご紹介します。

見た目の違いは限定的なジャンニーニ

小さなイタリアン・ハッチバックが、ロンドン北部のハートフォードシャー州を突っ走る。活気に溢れた2台を所有するのは、アンディ・ヘイウッド氏。根っからのイタリア車ファンだという。

ジャンニーニ500 TVの容姿は、ノーマルの後期型フィアット・ヌォーヴァ500 Fと一見すると違わない。ボディサイドのエンブレムとホイールキャップを除いて、わかりやすい変化は与えられていない。

ナローボディのジャンニーニ500 TVと、ワイドボディのアバルト695 SS
ナローボディのジャンニーニ500 TVと、ワイドボディのアバルト695 SS

インテリアは、120km/hではなく130km/hまで振られたスピードメーターと、ステアリングホイール・ボスが異なる。だが、その程度。

それでも500 TVは、1966年にジャンニーニ・モデルとして登録されている。チューニングされたヌォーヴァ500 Fではなく、1つのメーカー・モデルという位置付けだった。

アバルト695 SSも同様。フィアットのシャシー番号と一緒に、アバルト独自のシャシー番号が振られている。今回ご登場願ったクルマの場合、1964年12月に登録されている。

ベースとなったのは500 Dで、両サイドのドアはリアヒンジのスーイサイド。ルーフは本来フロント側がカンバストップだったが、アバルトの手により金属製のハードカバーが載っている。

それ以上の容姿の違いといえば、ワイドなフェンダーラインと、やんちゃな角度のリア・キャンバー。サスペンションの構成はフィアットと変わらないが、アグレッシブにローダウンされ、トレッドも広い。前後にアンチロールバーが追加されている。

ファンファーレ・サウンドが体験の中心

ヘイウッドのクルマは、当初はアバルト595だったが、どこかの時点で695 SSへアップグレードされたという。空冷の直列2気筒エンジンの見た目は、オイルサンプとエグゾースト系しか違わない。だが、その内側にはアバルトの魔法が掛けられている。

サウンドもノーマルのヌォーヴァ500 Dより勇ましい。スターターとチョークのレバーは、シフトレバーのすぐ後ろ。これもベースのフィアットと同じだ。

ナローボディのジャンニーニ500 TVと、ワイドボディのアバルト695 SS
ナローボディのジャンニーニ500 TVと、ワイドボディのアバルト695 SS

アクセルペダルを軽くあおると、怒り狂ったように轟音を放つ。ノーマルではないことは、誰が聞いても理解できるだろう。690ccしかないことを、ボリュームでは感じさせない。

運転席まわりの操作系は、殆どオリジナルのヌォーヴァ500のまま。ステアリングホイールは軽く回せ、適度にダイレクトでキックバックは伴わない。クラッチペダルは想像以上に重い。

前後のブレーキはフィアットと同じドラム。ペダルの感触には剛性がなく褒めにくい。ドライバーズシートは、見た目よりは身体を支えてくれる。ステアリングホイールとの距離が近く、腕で抱えるような姿勢になる。

リアから放たれるファンファーレのようなサウンドが、695 SSのドライビング体験の中心にある。カリカリにチューニングされた2気筒の音響は、ぜひ一度、機会があれば生で味わって欲しい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ヘーゼルタイン

    Richard Heseltine

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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