100万ドルの輝き アストン マーティンDB5 メルセデス・ベンツ300SL フェラーリ275GTB 3台を乗り比べ 後編

公開 : 2023.02.12 07:07

1950年代の象徴といえる、300SL。1960年代のDB5、275 GTBとともに、英国編集部がサーキットで魅力を確かめました。

同社唯一のトランスアクスル・レイアウト

フェラーリ275GTBに備わる2脚のシートは、横方向にも身体を支えてくれるバケットタイプ。黄色いベースに黒い跳ね馬が描かれたセンターボスで彩られた、ウッドリムのステアリングホイールも握りやすい。前方には長いボンネットが広がる。

後ろを振り返ると、控えめなパーセルシェルフが用意されている。ボディ後方の荷室は、スペアタイヤとツールキットで大部分が埋まっている。

フェラーリ275GTB(1964〜1968年/欧州仕様)
フェラーリ275GTB(1964〜1968年/欧州仕様)

外からは見えない部分こそ、275GTB最大の魅力。独立懸架式のリア・サスペンションを採用したフェラーリ初の量産モデルで、3.3L V型12気筒エンジンの重量バランスを改善するため、トランスアクスル・レイアウトを採用した同社唯一のモデルでもある。

エンジンは、3基のウェーバー・キャブレターによって燃料が送られ、最高出力は280psを発揮する。だが、アストン マーティンDB5の286psには僅かに届かない。最大トルクでも、メルセデス・ベンツ300SLを超えてはいない。

動力性能を向上させるため、フェラーリは1966年にアップデート版の275GTB/4を投入。ダブル・オーバーヘッド・カムを採用し、ウェーバー・キャブレターを6基に増やし、20psを上乗せした。

今回のシングル・オーバーヘッド・カムでも、印象は素晴らしい。シンフォニックなサウンドが心を震わせ、特別なモデルであることを強く訴えかけてくる。

最高峰のサウンドトラックに包まれる

クラシカルなオープンゲートから伸びるシフトレバーはやや重く、大きなフェラーリを運転している実感が湧く。ペダルレイアウトは完璧で、ヒール&トウしやすい。エンジンは粘り強く扱いやすい。

必要に応じて、低回転域でも構わずボディを進めてくれる。それでも、イタリアン・サラブレッドとして、熱意的に扱われることを好むようだ。

フェラーリ275GTB(1964〜1968年/欧州仕様)
フェラーリ275GTB(1964〜1968年/欧州仕様)

アクセルペダルを蹴飛ばせば、自動車として最高峰のサウンドに一帯が包まれる。そのさなか、レッドライン目掛けてパワーはひたすらに高まっていく。

ステアリングのレシオは、予想に反してスロー。ステアリングホイールをそのぶん回せば、意欲的に、驚くほど正確に向きを変えていく。

独立懸架式のリア・サスペンションと、当時のパターンを継承するミシュランXWXタイヤが、サーキットのアスファルトを確実に捉える。280psを不安感なく展開でき、自信を持って本域に迫れる。

一般道を走っている限り、DB5と275GTBの印象に明確な違いはなかった。英国かイタリアの一般道を、他車よりハイスピードで駆け抜けるために開発されている。

ところがサーキットへ足を踏み入れると、コーナリングでは275GTBが遥かに優れていると実感する。200kg以上軽い車重と、高回転域まで許容するエンジンが、扱いやすさを大幅に高めているようだ。

ただし、安心感が高い反面、軽快感は今ひとつ。身のこなしにも、どこか鈍いような印象が残ったことは事実だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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