日産エクストレイル 詳細データテスト 動力性能と操縦性には満足 静粛性と低速での乗り心地は要改善

公開 : 2023.03.04 20:25  更新 : 2023.04.04 00:19

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

新型エクストレイルは、オフローダー色を強めたスタイリングとなった。それでも、ヒョンデスコダなどの競合モデルに比べれば角の取れたエクステリアだ。

いっぽうでメカニズムは、弟分のキャシュカイとの関連性が強まった。プラットフォームはどちらもCMF−C/Dのバリエーションで、開発の主体は日産だ。パートナーのルノーが主体になったのは、ジュークやキャプチャーといった小型モデルに用いられるCMF−Bだ。

日本ではe−パワーのみだが、英国市場では同じエンジンを用いたマイルドハイブリッドも設定。1.5Lエンジンはコンパクトで、エアインテークを除けば占有容積は小さい。2.5Lエンジンを用意するマーケットもある。
日本ではe−パワーのみだが、英国市場では同じエンジンを用いたマイルドハイブリッドも設定。1.5Lエンジンはコンパクトで、エアインテークを除けば占有容積は小さい。2.5Lエンジンを用意するマーケットもある。    MAX EDLESTON

ルノーと日産の大きな相違点は、パワートレインにある。ジュークではルノーのE−テックシステムを流用するが、エクストレイルは自社開発のe−パワーを用いる。すでにe−パワー採用モデルは数多いが、エクストレイルのそれには目新しい点もある。

ご存知のとおり、エンジンは駆動用ではない。発電にのみ用いられ、キャビン床下に配置される総量2.1kWh/実用量1.97kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを充電する。前輪を駆動する電気モーターは、204ps/33.6kg−mを発生する。

このメカニズムはキャシュカイにも設定されるが、エクストレイルにはe−4ORCEと銘打たれた4WDが用意される。136ps/19.9kg−mの後輪駆動用モーターを、リアに追加したシステムだ。一般的なシステムは前後モーターが別個に作動し、出力は前後の合計となる。しかしエクストレイルのそれは、システム出力が213psに制限されている。これは、バッテリーが供給できる電力量の限界があるからだ。

このe−パワーの利点のひとつは、メカニズムが複雑になりすぎないことで、多段ギアボックスやプロペラシャフトは不要だ。また、日産によれば、ワンペダル運転も含めたEVのようなドライビングフィールを、充電に心配なく味わえるのもメリットだという。

ガソリンエンジンそのものも、興味を惹かれるものだ。3気筒ターボだが、斬新な圧縮比可変機構を備えるのだ。クランクシャフトにアジャスターを備えることでピストンのストロークを変化させ、排気量と圧縮比が変化するのだ。

高負荷時には8:1、一定した低負荷時には14:1を限度に、段階的に変更する。さらに、可変バルブタイミング機構も装備し、クルージング時にはアトキンソンサイクルとすることで、効率をさらに高める。

価格重視のユーザー向けには、マイルドハイブリッドが設定されている。e−パワーと同じ可変圧縮比3気筒を前輪駆動用に搭載し、CVTを組み合わせる。マイルドハイブリッドは12Vシステムで、ベルト駆動のスターター・ジェネレーターは主にスタート/ストップシステムをスムースに作動させるのが目的だが、加速時には0.6kg−mの動力アシストも行う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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