オイル交換だけで265万円 ブガッティ・ヴェイロン 英国版中古車ガイド 2000年代の量産車最速

公開 : 2023.04.07 08:25

量産車最速の記録を残したヴェイロン。その中古車を購入する注意点とは?少々現実味は薄いですが、英国編集部がご紹介します。

スーパースポーツが431.0km/hを達成

人類は記録更新のために努力を重ねてきた。乗り物の速さも、挑戦対象の1つ。列車や船、飛行機、そして自動車にとって、速さは性能を端的に示す指標といえる。

2005年、ブガッティ・ヴェイロンは量産車として新たな記録を残した。メーカーが主張した最高速度は407.1km/h。グレートブリテン島の南部に位置するロンドンから北部のグラスゴーまで、全開なら2時間で到着できるスピードだ。

ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)
ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)

ただし、ヴェイロンには頻繁な給油が求められる。最高速度で走った場合、12分毎にガソリンタンクは空になるという。

スペック表に記載された燃費も、3.9km/Lと褒められるものではない。最高出力1001psと最大トルク127.0kg-mを発揮する、W型16気筒クワッドターボエンジンの排気量は8.0Lもある。そのかわり、0-100km/h加速を2.5秒でこなせる。

ヴェイロンは、それまで量産車最速の座にあったマクラーレンF1を凌駕した。もしドラッグレースを競わせたら、発進から200km/hほどまではF1が先行するだろう。だが、300km/hへ先に到達するのはヴェイロンだ。

更に記録を伸ばすべく、2010年に進化版となるヴェイロン・スーパースポーツが登場。エンジンカバーをフラットにするなど、空力特性を磨いたボディで431.0km/hの最高速度に達した。最高出力は1201psまで引き上げられていた。

超高速でオープンエアを楽しみたい富豪のため、タルガトップのヴェイロン・グランスポーツは2009年に追加。スーパースポーツのタルガトップ版、グランスポーツ・ヴィテッセも2012年に設定されている。

妻をオペラ鑑賞へ乗せていけるほど上品

このハイパーカーを生み出すことを決めたのは、当時フォルクスワーゲン・グループの最高責任者を務めていたフェルディナンド・ピエヒ氏。ブガッティというブランドを再起させる狙いがあった。

世界最速となる量産車のスケッチは、東京から名古屋へ走る新幹線のなかで描かれたという。実は日本にも縁があるモデルといえる。

ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)
ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)

その速さを叶えたパワートレインは、アウディ由来のV型8気筒を2基組み合わせたエンジン。冷却用のラジエターは合計10枚も備わっている。エンジンカバーの上部に並ぶ2本の峰は、4基のターボチャージャーへ空気を送っている。

空気を滑らかに受け流すふくよかなボディラインは、レーシングカーを開発するザウバー社の風洞実験施設で当初テストされた。しかし、360km/h程度までしか計測できず、最終的にブガッティは別の施設を利用している。

その場所は明らかになっていない。少なくとも9176psを発揮するパワーユニットが、幅8mのファンを回したことは確かなようだ。

開発でチーフドライバーを務めたのは、最高速度にも挑んだピエール・アンリ・ラファネル氏。F1レーサーだった彼は、ヴェイロンに1万1000回も試乗。テストコースの場所は23か国に及んだという。

「ピエヒがヴェイロンへ求めた技術要件の1つに、オーナーが妻をオペラ鑑賞へ乗せていけるほど、上品で洗練されていることでした」。と、ラファネルは後に発言している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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