同じ出発点 異なる到達点 ランチア・ガンマとシトロエンCX 協力関係が生んだ2台 後編

公開 : 2023.05.21 07:06

協働プロジェクトとしてスタートした、ガンマとCX。似たシルエットを持ち、異なる結果へ至った2台を英編集部が振り返ります。

37年も保管されていたガンマ・ベルリーナ

改めて今回の2台を並べて見ると、どちらのスタイリングも新鮮。シトロエンCXは一般的な感覚で評価しても美しい。現代の交通に紛れても、存在感は小さくない。他方のランチア・ガンマ・ベルリーナは個性が強く、クセがある。

レッドのシトロエンCXは、後に登場した高性能な2400 GTi。1978年式で、アルミホイールを履き、マットブラックのボディトリムが印象を引き締めている。ファストバックのフォルムを持つが、ガンマと同様にトランクリッドは独立している。

レッドのシトロエンCX 2400 GTiと、シルバーのランチア・ガンマ・ベルリーナ
レッドのシトロエンCX 2400 GTiと、シルバーのランチア・ガンマ・ベルリーナ

オーナーのリチャード・ジェームス氏は、ロールス・ロイスベントレーの内装を手掛ける職人。普段使いのクルマとして不満はないと笑顔を浮かべる。「クロームメッキ・バンパーが備わる、前期モデルの方が好きです」

このCX 2400 GTiは2022年にフランスで購入し、サスペンションとステアリング、ブレーキ、電気系統などを整備。気兼ねなく乗れる状態へ仕上げた。「現代的ですが、面白いくらい変わっていますよね」

シルバーのランチア・ガンマ・ベルリーナは、走行距離が僅か1600km足らずという極上車。現存する例では、最も走行距離が短い1台だろう。オドメーターが25kmを指した状態で、トリノのランチア・ディーラーに眠っていたという。

英国人が注文したクルマで、契約後にグレートブリテン島へ持ち帰る予定だったが、その人物がディーラーを訪れることはなかった。そのまま2014年まで、37年も保管されていたらしい。

エレガントな雰囲気が漂う両車の車内

ガンマ・ベルリーナの容姿はCXよりフォーマル。Cピラーが太く、スリットの入った装飾部分には給油口が一体になっている。ヘッドライトは、バキュームポンプで水平が保たれるという高機能。トランクリッドはダブルヒンジで大きく開く。

初期型から細かな改良が加えられた1977年式で、マニアの間ではシリーズ1.5と呼ばれている。内装には、ファッションデザイナーのエルメネジルド・ゼニア氏が手掛けたクロスが用いられている。Lのパターンが特徴的だ。

ランチア・ガンマ・ベルリーナ(1976〜1983年/英国仕様)
ランチア・ガンマ・ベルリーナ(1976〜1983年/英国仕様)

レザーシートとエアコンはオプションだったが、リアのブラインドとパワーウインドウは標準。組み立て品質も高く、車内にはエレガントな雰囲気が漂う。ダッシュボードは直線基調。ヒーターや送風の操作パネルには、個性的なボタンが並ぶ。

CXのインテリアも同じく上質。フローティング・メーターパネルが他ブランドとの違いを主張する。ドラム式のメーター類だけでなく、ライトやワイパーなどのスイッチ配列にも、少しの慣れが必要だろう。

ボンネットを開くと、ボッシュ社製の燃料インジェクションを採用した、シトロエンのプッシュロッド式直列4気筒が美しい姿を表す。ランチアの水平対向4気筒は、ウェーバー・キャブレターにかぶさる大きなエアクリーナー・ボックスの下に隠れている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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