フォード・レンジャー 詳細データテスト 柔軟な操縦性 操舵はSUV並み 乗用に不満のないトラック

公開 : 2023.06.24 20:25  更新 : 2023.07.04 00:11

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

ライトコマーシャルヴィークルであるピックアップトラックは、乗用車ほど流行に敏感ではないため、フルモデルチェンジの頻度はそう多くない。先代の登場は2011年で、自動車業界的には古いモデルだといえる。しかし、2015年のビッグマイナーチェンジと、2019年の新型パワートレイン導入で、クラストップを維持してきた。

そのエンジンと10速ATをキャリーオーバーしたのは、賢明な判断だった。2.0Lディーゼルには、レスポンスのいい小型の可変ジオメトリー高圧ターボと、固定ジオメトリーの低圧ターボが1基ずつ備わる。出力は205psで、これより低出力なシングルターボや、3.0Lの新型V6も用意される。ガソリンモデルは、高性能版のラプターに搭載されるV6のみだ。

4気筒ディーゼルは、負荷がかかるとかなりガラガラ鳴る。これは基本的に商用車だが、ボンネット下の遮音が高められている。しかも、それによって大きく価格が上がってはいないが、洗練性の面でのプラス要素になっている。
4気筒ディーゼルは、負荷がかかるとかなりガラガラ鳴る。これは基本的に商用車だが、ボンネット下の遮音が高められている。しかも、それによって大きく価格が上がってはいないが、洗練性の面でのプラス要素になっている。    JOHN BRADSHAW

フレームは先代のそれをアップグレードした。ラダーシャシーにリアのリーフスプリングを用いるリジッドアクスルを使用するのは、積載重量を最大限確保するためだ。

それ以外は実質的に新開発だ。前輪は50mm前進し、ホイールベースが伸びてフロントオーバーハングが短縮された。トレッドも50mm拡幅され、V6搭載スペースが確保された。先代レンジャー最大のエンジンは3.2L直5で、V型ほどのエンジン幅がなかったからだ。

V6が用意されたのは、フォルクスワーゲンのおかげだ。新型アマロックのベースがレンジャーで、開発はフォードが主体になったものの、アマロックをややプレミアムな値付けとしたいフォルクスワーゲンが、V6搭載にこだわったのだと言われている。

シャシーの拡幅は「ほかの駆動テクノロジー」の採用も可能にする、とフォードでは説明している。これはF−150ライトニングのような電動トラックの、欧州市場に適したモデルを求めるユーザーに向けて、レンジャーの電動モデルが開発されることを匂わせている。

そう、新型レンジャーはF-150よりは小さい。それでも、かなり大きなクルマだ。新型レンジローバーと全幅は同等で、全長は30cmも長い。ルックスはF-150似で、切り立ったスクエアなフロント周りを採用している。

いっぽう、ホイールアーチはこぎれいにフレアし、サイドにはショルダーラインが走る。無塗装バンパーにスティールホイールの実用本位グレードも用意されるが、上級仕様は本当にぶつかっても耐えられそうなゴツいバンパーが装備される。

英国市場では、レンジャーはシングルキャブとダブルキャブ、荷台のないシャシーキャブが設定される。スーパーキャブは、需要が小さいため用意されず、関連車種のSUVであるエベレストもラインナップされていない。

先代レンジャーと同じく、新型もフォードがオーストラリアに設置しているプロダクトデベロップメントセンターで開発の大部分が行われた。小型トラックマーケットの規模を考えれば、妥当な判断だ。欧州向けレンジャーは、アマロックとともに、フォードの南アフリカ・シルバートン工場で生産される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

フォードの人気画像