自動車がスマートフォンのようになる? ソフトウェア中心の未来のクルマとは

公開 : 2023.06.27 06:25

コンピューター(ECU)を大量に使用することで進化してきた現代の自動車。さらなる高機能化が求められ、ソフトウェア中心の自動車開発に移行しつつあります。「ソフトウェア定義自動車」とは何なのか、簡潔に解説します。

ソフトウェア中心の自動車 どこへ向かう?

自動車業界における最近の流行語の1つに「ソフトウェア定義自動車(software-defined car)」というものがある。この響きを嫌う人もいるかもしれないし、ソーシャルメディアはすでにバグだらけの自動車ソフトウェアに対する苦情であふれかえっている。

しかし、自動車は1970年代後半から特殊なコンピューターに頼ってきた。一般的には「ECU」(電子制御ユニット)と呼ばれているが、実質的にはプログラムされたコードを実行するコンピューターの箱である。

運転支援・自動運転の強化は車載ソフトウェア・アップデートの1つの目標である
運転支援・自動運転の強化は車載ソフトウェア・アップデートの1つの目標である

自動車でECUが最初に使われたのは、おそらくエンジンの制御向けだろう。エンジンの点火システムや燃料補給をすべてエンジン・マネージメント・システムの制御下に置くことができ、エンジンをより効率的に、よりパワフルにするなど大きな一歩となった。

やがてECUは、ABS、照明システム、車両安定制御システム、そしてトランスミッションなどを制御するようになり、その用途を拡大していった。今日の自動車にはECUがあふれており、中には100個近いECUが搭載され、それぞれが特定の仕事をこなしている車種もある。

自動車が複雑化するにつれ、ECUをたくさん使うようになった利点の1つは、高価で重いワイヤーハーネスを減らせたことだ。

CAN(コントローラー・エリア・ネットワーク)の導入により、個々のECUが制御する電子機器群を数本の信号線で接続できるようになった。現在の課題は、自動車のさらなる複雑化に伴い、もっと高度なものが必要とされていること。

それこそがソフトウェア定義自動車である。例えばルノーは、スマートフォンと同じような(多少複雑ではあるが)方法で、集中型アーキテクチャーによってライフサイクルを通じて車両のアップデートを行うとしている。

これは、小さいが大きな変化だ。単に車載機能を操作するために電子部品を使用するのではことから、所有中に機能を進化させるために使用することへと移行するのだ。ルノーの場合、消耗の予測による予防メンテナンス、室内機能のパーソナライズ、バッテリー充電管理、インフォテインメントなどをカバーする。

物理的な変化はかなりのものになるだろう。ルノーによると、現在の60~80個のECUに代わって、初期段階に必要とされる以上のパワーと柔軟性を備えた中央コンピューターが導入され、将来のアップグレードのために膨大なデータ量に対応する能力が与えられる。

ルノーはこの点でクアルコムと協力し、「CAR OS」なるものを開発するためにグーグルとも手を組んでいる。

これは一例に過ぎないが、他の業界大手も同様の道を歩んでいる。大手サプライヤーであるZFフリードリヒスハーフェンは、ブレーキからステアバイワイヤー、サスペンションシステムまで、自動車のすべてのシャシー・アクチュエーターを直接調整・制御する制御ソフトウェア「Cubix」を開発した。

では、この道はどこにつながっているのだろうか? 究極のソフトウェア定義自動車は、未来の自動運転車になるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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