マセラティ・ギブリS Q4

公開 : 2013.12.26 20:21  更新 : 2017.05.29 19:12

まずは、これがどういうクルマなのかを解き明かしていかねばならない。初代がジウジアーロだとか2代目がビトゥルボ変奏曲だとか、これが初めての4ドアだとかいう半可通な話を前振りにしている暇はない。書くべきことは多いのだ。

マセラティは年初に投入した4代目クアトロポルテでLセグメントを、この3代目ギブリでEセグメントを、それぞれ本腰を入れて攻略していくという思い切った方策に出た。ターゲットは言うまでもなくベンツ、BMW、アウディのドイツ御三家である。かつて同じように高性能GTからセダンを派生させていった異郷の同類たるジャガーがXJとXFで既に行っているのと同じ戦法をマセラティは採ることにしたわけだ。

プラットフォームという面で眺めると、マセラティはベンツやジャガーではなく、BMWと同じ方法を選んだ。すなわちLセグメントとEセグメントを同一のプラットフォームで仕立てることにしたのである。つまりギブリはクアトロポルテのホイールベース短縮版。その軸距の差は17cmで、全長は30cm。現代の車体生産技術はプラットフォーム共用であっても幅方向を異なるものにすることくらい難なくこなすが、マセラティの場合はそこまで生産ラインをフレキシブルに出来なかったのか、する必要を認めなかったのか分らないが、幅はほぼ同じ。ということはギブリはEクラスや5シリーズやA6よりも10cmほど幅広い、Lセグメント級の身幅を持つことになったわけで、このあたりは日常的に使おうとするひとには敷居の高さに見えるかもしれない。。

そんな車体にインストールされるエンジンは、現時点では2種類。ガソリンの3.0V6直噴ツインターボと直噴ディーゼルターボである。後者に関してはフィアットと関係の深い伊VM社製のものとはっきり分かっており、これはクライスラー300やグランドチェロキーに搭載されるものと基本的に同じである。かたや日本仕様に用いられるガソリンV6のほうが今のところミステリーである。実は、業界筋は、これはクライスラーのペンタスターV6の3.0ツインターボ版ではないかと事前予想していた。ペンタスターはクライスラーがダイムラーと連合を組んでいた頃に基本設計を行ったエンジンで、両者が袂を分かったのち、その基本設計をベースにしてクライスラーはペンタスターに仕上げ、ベンツは現行Eクラスが使うM276型を完成させた。M156B型と命名されるこのギブリ用ガソリンV6は、異母兄弟の3人目の弟ではないかという推測が専らだったのだ。マセラティは公式にそれを否定したが、違うと言えばペンタスターとM276型だって別のエンジンではある。ところが実車を検分して、その異母三兄弟説はあっさり消えた。実測でM156B型のボアピッチは約104mm。ペンタスターとM276型は106mm。ボアピッチはエンジン設計時の起点になるものだから、それが違えは育ちだけでなく生まれも異なるエンジンだと言える。そして104mmで想い出すことがあった。フェラーリとマセラティが使い分けるV8は、クランク形式やデッキハイトは異なるけれど、ボアピッチは104mmで共通する。ということはギブリ用M156B型は、そのV8の基本設計をそのままに、これを6気筒に減らしてバンク角を60°に採ったものという可能性が高い。

このエンジンが生む56.1kgmという大トルクはトルコン+遊星ギヤ式の8段A/Tに流される。これは5シリーズも使うZF製の8HPだ。そしてそこから先は2通り。RWD仕様だと電制差動制限機構が盛り込まれた後輪デフに向かう。かたやQ4版は、その名の如く4WDとなる。その仕掛けは、前後を縦置きアウディのようにトルク分配機構(トランスファ)と差動制限機構を挟んで結ぶ真正フルタイム式ではなく、前後軸が電制多板クラッチで自在に結離されるオンデマンド式。つまり日産GT-RやBMWのXモデルが採用するシステムと同工で、基本はRWDながら、必要があるときに多板クラッチを滑らせて前輪に一部のトルクを割り振る。ちなみにQ4のリヤデフにはLSDは備わらないようだ。今回の試乗車はこちらのQ4だった。最近のターボとは全く違う。

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