1956年ル・マン総合5位、クラス優勝のポルシェ 550最強モデルがオークションに

公開 : 2023.08.24 21:53

クラシック・ポルシェの中でも別格といえる550の、しかも1956年ル・マンのクラス優勝車が先日、海外で行われたオークションに出品されました。本来ならポルシェ・ミュージアムに収蔵されていて然るべきといえる名車ですが…

今年のモントレーに登場したとびきりの一台

コレクターズカー・オークションの世界的リーダー格であるRMサザビーズは、8月のモントレー・オークションを頂点と位置付け、飛び切りの逸品を用意することで知られている。2023年のモントレーには愛好家を唸らすレアモデルが数多く用意された。その中でポルシェ・エンスージァストの注目を集めたのが、1956年に作られたポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペだった。

現在までにポルシェのワークスチームが走らせた競技車両は、そのほとんどがシュツットガルトにあるポルシェ・ミュージアムに収蔵されている。しかし実はミュージアムにも漏れがある。そんなミュージアム未収蔵車のひとつが、1956年のル・マン24時間レースに参戦するために製作されたポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペなのである。

ポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペ
ポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペ    Robin Adams/RMサザビーズ

ポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペとは

ポルシェは1953年のル・マンに550RSクーペで挑み、1.5リッターながら大排気量のマシンを相手に総合15、16位、S1.5クラスの1、2位という快挙を成し遂げた。続く1954年は1.5リッターと1.1リッターの550/4 RSスパイダーを投入し、総合12位とS1.5クラス優勝。総合14位でS1.1クラス優勝と快進撃を続ける。翌1955年は総合4-5-6位を勝ち取り、S1.5クラスの1位から3位までを独占する快挙を成し遂げた。

それらの結果を踏まえてデザイナーのヒルドは1956年シーズンに向けクーペのデザインに更なるモデファイを加えた。フルワイズのウインドスクリーンが要求される新規定に対応するとともに、ル・マンでの最高速度を伸ばすために、キャビンを縮小し前面投影面積を減少。機構的にも戦闘力を高めるために、軽量スペースフレームとサスペンションに改良を加え、5速トランスアクスル採用のほか、数多くの改良が施された。特徴的な部分としては、通風スリットが刻まれたプレクシグラス製のサイドウィンドウ、二重構造のリアバルクヘッド、エンジンを容易に点検できるヒンジ付きアクセスパネルがある。

ポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペ
ポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペ    Robin Adams/RMサザビーズ

1956年のタルガ・フローリオではウンベルト・マリオリが駆る550Aワークス・プロトタイプ・スパイダー(C/N:550A-0101)がデビューを飾り、フェラーリ290MMやマセラティ200S、メルセデス・ベンツ300SLなどの大排気量マシンを相手に、15分ものリードを築いて総合優勝を飾った。同年7月のル・マン24時間レースには2台のポルシェ550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペで挑んだ。ゼッケン25(C/N :550A-0104)は、リヒャルト・フォン・フランケンベルグとウォルフガング・フォン・トリップスがドライブし、総合5位、S1.5クラスの優勝を遂げ、パフォーマンス・インデックス2位を獲得するなど素晴らしい成績を成し遂げた。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 編集

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

関連テーマ

おすすめ記事