LEVC TX 詳細データテスト 最新ロンドンタクシー 乗り心地は極上 発電用エンジンは洗練不足

公開 : 2023.09.02 20:25  更新 : 2023.10.24 19:47

走り ★★★★★★☆☆☆☆

ロンドンは広範囲が32km/h制限区域となっているので、このクルマの直線スピードを問うのは、アリエル・アトムで走りの上質感を論じるのと同じくらい無意味だ。もっとも、タクシーは郊外の空港などへの長距離客をのせることもある。流れの速い車線に合流することもあるだろうから、一応は触れておこう。

ローンチコントロールはないが、発進はきわめてキレがいい。48km/hへの到達は、ホンダEにコンマ数秒遅れるのみ。コンパクトなシティコミューターながら、そのわりにはまずまずのパフォーマンスを持ったクルマとほぼ同等というわけだ。

当然というべきか、速さを競うクルマではないが、必要な速度域で必要十分な動力性能は得られる。いっぽう、制動性能には物足りなさを覚える。
当然というべきか、速さを競うクルマではないが、必要な速度域で必要十分な動力性能は得られる。いっぽう、制動性能には物足りなさを覚える。    JOHN BRADSHAW

そこを過ぎると、TXの動きは重い。最終的に、0-97km/hは12.7秒で、0-100km/hが13.2秒というLEVCの公称値にも符合すると言える。乗員が6人いると400kgほど重くなるが、そうなるとパフォーマンスはだいぶ鈍るだろうと思うのではないだろうか。とはいえ、最高速度は130km/hに達するのだから、英国内では困ることはない。

巡航速度に到達するまでは遅いかもしれないが、それを維持するのは比較的簡単だ。高速道路でもいい感じに走り、97−113km/hの加速もまずまず楽だ。スロットルを床までベタ踏みしなくてはならないような感覚は一切なく、充電量を維持するためのセーブモードでも、1.5Lエンジンが発電してそれをそのまま使うことで、加速力に不足を感じさせることはなかった。

また、市街地の速度域では直感的に運転できる。スロットルレスポンスは素早いがシャープではない。ブレーキはタッチが硬く、早めに効きはじめるが、その後の調整はイージーだ。こうしたディテールには熟考の跡が感じ取れ、その結果はハッキリしている。運転して疲れることは決してない。

パフォーマンスに関して批判する意味のある項目があるとすれば、制動距離だ。乗員なしでも、48−0km/hで9.6m。これはだいたい、メルセデス・ベンツGLSBMW X7といったフルサイズSUVより1mほど余分にかかっている。人通りが激しく、動きの読めない歩行者も多いエリアを走るクルマとしては、ここは改善を望むところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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