メルセデス・ベンツCLA180&CLA250

公開 : 2013.09.27 20:23  更新 : 2017.05.13 12:51

この仕事を20年以上やっているというのに、クルマのヒット予測がいまだに大の苦手である私(泣)だが、CLAを見て「これは売れそう」と、くやしいけれど直感的に思った。最近のメルセデスは改めて“最善か無か?”のキャッチフレーズを大々的に掲げる一方で、細かい派生モデルを次々と繰り出して、とにかくスキ間というスキ間を埋めていく。そういう最近の彼らはじつに商売上手……というのがその根拠のひとつである。

もうひとつの根拠は、CLAが理屈ぬきでカッコイイからだ。もちろんカッコよさの基準というのはいろいろある。マニア的見地でいえば、単純目的に対して愚直なまでに徹した機械にこそ機能美が宿って美しくカッコイイ。近年のメルセデスでいえば、たとえばゲレンデヴァーゲンであったり、あるいはセダンの究極形という意味でW124やW201(190E)も機能美メルセデスの典型にあげる人もいるだろう。

今さら説明の必要もないと思うが、CLAは現行AとBに続くFFプラットフォームの第3弾。メルセデスはこのFFでもFRの兄貴分たち同様に一大ファミリーを築く予定であり、第4弾はクロスオーバーのGLA、そして具体的になんなのかは未公表だが第5弾までの存在がすでに公表されている。これらのFFで若者とダウンサイザーを取り込む戦略だ。

CLAは少なくとも4ドア乗用車という意味では、機能美とは対極にある存在だ。しかし、CLAは素直にカッコよく見える。全高はAクラスとほぼ同等だが、3ボックスでこんなに強烈にキャビンが小さく、さらにこんなに低い……というのはやはり新鮮。実際の全高はCクラスとほぼ同じなのに、全長が長いこともあって、視覚的には明らかに低く見えるのだ。キャビンと前輪が接近したFFなので、写真ではアンバランスに見えるかもしれないが、実物を前にするとあまり気にならない。素直に流麗である。CLAが“最善の4ドアパッケージ”とは程遠い存在だとしても、実物を見せられると“ロング&ワイド、そして低いスモールキャビン”というのはクルマをカッコよく見せる基本なのだなあ……と思わざるをえない。

CLAは基本的にAクラスのパッケージをそのまま3ボックス化したもの。Aクラスからして明らかに後席空間を割り切ったスポーツ・ハッチクーペだったが、4ドアクーペを謳うCLAはルーフがリヤに向けてさらに下降していくプロポーションなので、後席の閉所感はより強い。ホイールベース2.7mのエンジン横置きFFレイアウトだから、後席の足もと空間はほどほどにある(メルセデスの説明では現行Cクラスに優るとも劣らないとか)ものの、とにかくヘッドルームが超絶にタイトである。身長178cmの私でも、お尻を引いてきちんと座りさえすれば、純粋な後席レッグルームはヒザを揃えてもオツリが来るくらいなのだが、胴長体形の私では、実際は頭が天井に当たってしまう。そこで仕方なくお尻を前にずらしてヘッドルームを最低限に確保すると、両ひざで前席シートバックを抱え込むような姿勢にならざるをえない。おそらくAクラスそのままの後席シートバックはヘッドレストも一体型で、角度も直立気味。エクステリアから想像されるように乗降性もハッキリ悪い。

プラットフォームの基本構成やパワートレインもAクラスやBクラスと共通だが、リヤのアクスルキャリアが“剛結→ブッシュ”になったことが、CLAにおける最大にしてほぼ唯一のハードウェアの変更点だという。そのブッシュ効果によるものか、初期のAクラスなどと比較すると、CLAは乗り心地がハッキリと快適になった。日本仕様はスポーツサスが標準であることもあって、サスストロークを規制したミズスマシ系の基本特性はそのままでも、路面からのアタリは、今回のような低速市街地では“ちょっとベンツっぽい”と思わせるくらいの柔らかさと快適性がある。もっとも、一説には現在のAクラスも、初期よりかなり乗り心地が改善されているらしいが。今回はハンドリングを試せるような試乗ルートではなかったが、車重やボディ構造による剛性、空力特性を考えると、Aクラスより悪くなっていそうな要素はない。

ただ、後方視界の悪さだけはちょっと閉口する。とくに斜め後方はほとんど見えず、レーンチェンジや合流などでは、誇張なく、ひと昔前のスーパーカーなみに気をつかう。安全のためには斜め後方車両を警告してくれるブラインドスポットアシスト(BSA)は必須なので、レーダークルーズやレーンキープアシスト、低速自動ブレーキなどとセットのセーフティパッケージ(19万円)はなにはなくとも選んでおくべき。ただ、その頼みのBSAも30km/h未満では作動しないのが、ちょっと不安をぬぐえないところだけど。

CLAはセダンとしての正統性においてCクラスにはるかに及ばない。しかし、このカッコよさでCLA180なら335.0万円である。日本のCクラス潜在顧客の半数以上は「後席などめったに使わない」が現実(?)と考えると、Cクラスからかなりの比率でCLAに流れそうだ。少なくともビジネス的には見事なまでに“最善の商品企画”である。

(文・佐野弘宗 写真・田中秀宣)

メルセデス・ベンツCLA180&CLA250

価格 335.0万円 459.0万円
0-100km/h 9.3秒 6.7秒
最高速度 210km/h 240km/h
燃費 17.9km/ℓ 16.4km/ℓ
CO₂排出量 130g/km 142g/km
車両重量 1470kg 1500kg
エンジン形式 直4DOHCターボ,1595cc 直4DOHCターボ,1991cc
エンジン配置 フロント横置き フロント横置き
駆動方式 前輪駆動 前輪駆動
最高出力 122ps/5000rpm 211ps/5500rpm
最大最大トルク 20.4kg-m/1250-4000rpm 35.7kg-m/1200-4000rpm
馬力荷重比 83.0ps/t 141ps/t
比出力 76.5ps/ℓ 106ps/ℓ
圧縮比 10.3:1 9.8:1
変速機 7段DCT(7G-DCT) 7段DCT(7G-DCT)
全長 4640mm 4685mm
全幅 1780mm 1780mm
全高 1430mm 1430mm
ホイールベース 2700mm 2700mm
燃料タンク容量 50ℓ 50ℓ
荷室容量 470ℓ 470ℓ
サスペンション (前)マクファーソン・ストラット マクファーソン・ストラット
(後)4リンク 4リンク
ブレーキ (前)Vディスク Vディスク
(後)ディスク ディスク
タイヤ 225/40R18 225/40R18

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