ロンドンで「廃車待ち」の列 環境規制で処理能力オーバー 市民の間で苛立ちも

公開 : 2023.11.03 18:05

・英首都ロンドンで、古い車両の「廃車」を待つ長蛇の列。
・何千人ものロンドン市民が補助金を求めて行政と解体業者に殺到。
・大気汚染対策で排出ガスの多い車両を排除する狙いだが…。

補助金求めてロンドン市民が殺到

英国の首都ロンドンで、排出ガスの多い車両の通行を規制するULEZ(超低排出ガスゾーン)に関連して、「廃車待ち」の長い列が発生している。

ULEZの対象エリアに入るには一定の排出ガス基準をクリアしなければならず、不適合車には通行料金が課せられる。対象エリアは8月29日にロンドンの全自治区に拡大された。英RAC(王立自動車クラブ)によると、対象エリアが拡大された時点で、グレーター・ロンドンには約70万台の不適合車が登録されていたという。

ロンドン交通局と解体業者の両方で遅れが生じている。
ロンドン交通局と解体業者の両方で遅れが生じている。

1月30日、ロンドンのサディク・カーン市長は拡大に先立ち、1億1000万ポンド(後に1億6000万ポンドに増加)を投じて不適合車の廃車支援制度「スクラップ・スキーム」を開始した。ULEZ適合車の購入費用として1台あたり2000ポンドの補助金を設定し、すでに合計1億ポンド以上が請求されている。TfL(ロンドン交通局)によると、補助金申請は10日以内の処理を目指しているという。

しかし、ULEZ拡大後、申請にはかなり時間がかかっていると言われる。トゥイッケナム地区に住む申請者の1人、ルーシー・ヒルさんは「わたしの申請は6週間も『コンピューターにノーと言われる』状態が続いている」と話す。

また、ロンドンの解体業者には多くの車両が持ち込まれ、廃車まで時間がかかっているため、2000ポンドの補助金受け取りに必要な破壊証明書を発行することができないという。

同じくトゥイッケナムに住むアニー・ムーアさんは「申請が承認されるとすぐに廃車に持って行きましたが、手続きと証明書の発行に3週間かかると言われました」と話している。

トッテナム地区の解体業者ダーンフォード・ストリート・カー・ディスマントラーズ社は、取材に対し、この3週間で廃車の依頼が85%も増えたと語った。「当社だけではありませんし、破壊証明書の発行に苦労している解体業者もあると思います」

TfLによると、申請から手続きまで10日、破壊証明書の受領後に補助金の小切手が発行されるまでさらに10日かかるという。

解体業者での遅れも含めると、ロンドン市民の中には2000ポンドの支給を受けるまで1か月以上も待たされる人もいることになる。

TfLの広報担当者は次のようにコメントしている。

「スクラップ・スキームの申請に時間がかかりすぎている方にはお詫び申し上げます。できる限り迅速に対応できるよう努力しております」

「ULEZスクラップ・スキームが不適合車を持つすべてのロンドン市民に拡大するのに先駆けて、我々は申請の量に対処するためにリソースを増やしました」

補助金を受けるには、グレーター・ロンドンに居住していなければならない。さらに、保険に加入し、納税義務を果たし、MOT証明書(車検証)が必要である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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