スマート#1 詳細データテスト 個性的なデザイン 優れた静粛性 シャシーと操縦系は改善の余地あり

公開 : 2023.11.18 20:25  更新 : 2023.12.12 20:37

結論 ★★★★★★★☆☆☆

過去10年ほどで、TVゲームや携帯電話の業界は変化し、完成形に達する手前の商品でも市場へ投入されるようになった。あとからネット経由で改善するのが簡単になったからだ。

それが問題の原因となっているのがスマート#1というクルマだ。発売時点では、スマートフォンのミラーリングや予期しづらいスロットルペダル、信頼度の低いアダプティブクルーズコントロールなどがそのままになっている。おそらくこれらは、ソフトウェアのOTAアップデートで修正するつもりなのだろう。おそらく、ミラーリング機能はすぐに追加される。

結論:ドライバビリティに、ほかの長所を損なうくらいのフラストレーションを感じる。
結論:ドライバビリティに、ほかの長所を損なうくらいのフラストレーションを感じる。    JACK HARRISON

それらが是正されれば、総合評価は7から8へ星ひとつ向上する。それでも補えない星ふたつは、小さい荷室や出来のよくないシート、印象に残らないシャシーによる減点だ。

同時に、おおいに納得できるクルマでもある。印象に残らない点は、むしろクセがなくて心地いいと受け止めるユーザーも多いはずだ。競合車と勝負できる価格や、経済性と航続距離、充電性能も高評価できる。

荷室の問題を別にすれば、室内は入念にデザインされていて、個性的なスタイルも兼ね備えている。そして、静粛性は高い。

BEV市場に、高級車ならばBMWのiXやi7、中型SUVではキアEV6やヒョンデアイオニック5といった定評あるモデルが揃いつつある中で、まだ決定版を見つけられずにいるカテゴリーがハッチバックやクロスオーバーだ。スマート#1もそこを埋めてはくれなかったが、急成長するセグメントにあって、魅力的な選択肢のひとつだということはできる。

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

プリプロダクションモデルをクプラボーンBYDアット3と比較した際、スマートは僅差ながら優位性を見出せた。今回、英国内でより長く乗って、シャシーの不足が露呈し、期待した改善が果たされていないこともわかった。

マット・ソーンダース

フロントワイパーは、メルセデス水準の開発がなされていなかった。高速道路では吹き上げが軽くなり、160km/hを超えると完全にクリアな視界が得られなくなる。雨の降るアウトバーンでテストしていないのは明らかだ。

オプション追加のアドバイス

プレミアムにはヒートポンプをはじめ、レザーシートや高速AC充電が備わるため、われわれはこれを選びたい。最廉価なプロの価格は未発表だが、小容量ながら信頼性の高いLFPバッテリーを搭載するため、値付け次第では有力な選択肢となる。

改善してほしいポイント

・スロットルペダルの設定は修正を。OTAアップデートで対応できるといいのだが。
・ミラー調整にはハードスイッチがほしい。
・アダプティブクルーズコントロールと車線追従は改善を。あと、通常のクルーズコントロールを追加してほしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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