電気自動車の保険料が72%上昇 修理費用に原因 それでもEV普及する英国

公開 : 2023.11.24 06:05

・英国ではEVの自動車保険料が過去1年で7割も上昇。
・EV保険料が高い要因は、バッテリーや修理期間にある?
・専門家に聞く今後の見通し、対策は?

英国では新車販売におけるEV(電気自動車)のシェアが2割近くになり、従来のエンジン車からの乗り換えが進んでいる。しかし、電動化が順調に進み始めた矢先、保険料の上昇という暗雲が立ち込めている。

中古車やスペアパーツの価格高騰、労働力不足、自動車ローンの長期化、人身事故の保険請求件数の増加、保険会社の運用利回りの低下といった要因により、すべての車種の保険料は過去1年で大きく上昇している。

ガソリン車とディーゼル車の保険料は29%上昇したが、EVではさらなる上昇が確認された。英国で今、何が起こっているのだろうか?

EVの自動車保険料はいくら上がった?

保険の比較サイトを運営するコンフューズド・ドット・コム(Confused.com)によると、英国における全車種の平均保険料は過去1年で58%上昇し、586ポンド(約11万円)から過去最高の924ポンド(約17万3000円)となった。しかし、EVに焦点を当てると、平均を大きく上回っていることがわかる。EVの保険料はなんと過去1年で72%も上昇したのだ。

保険会社が出資する自動車関連NPO法人であるサッチャム・リサーチ(Thatcham Research)は、今年初めに発表した報告書の中で、保険会社がEVをカバーする上で直面する課題と、EVの保険料上昇の要因を挙げている。

修理費用、修理にかかる期間、保管費用などがEV保険料高騰の主な要因だという。
修理費用、修理にかかる期間、保管費用などがEV保険料高騰の主な要因だという。

その要因とは、事故による保険金請求費用がエンジン車よりも高いこと、修理に時間がかかること、損傷したEVを安全に保管するために費用がかかることなどである。英国保険会社協会(Association of British Insurers)が発表した数字によると、EVの保険金請求額は、ガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車よりも25.5%高く、修理期間は14%長い。

専門家の意見は?

サッチャム・リサーチはまた、事故がEVの寿命に及ぼす影響について、「安価なバッテリー修理や事故後の診断ソリューションがないことが懸念され、EVが早期に償却され、請求費用が不釣り合いに上昇する原因となっている」と指摘している。

この点、保険会社にとって大きな問題となるのが、交換用バッテリーの価格が、装着されるEVの価値に比して高いことである。交換費用は1万4200ポンド(約265万円)から2万9500ポンド(約550万円)で、サッチャム・リサーチは平均的なEVの製造1年後の市場価値よりも高いと指摘している。

交換用バッテリーの金額が、車両本体の価値を上回ることも。
交換用バッテリーの金額が、車両本体の価値を上回ることも。

同社のエンジニアリングマネージャー、マーク・フライ氏によれば、これは従来の保険モデルを覆すものだという。

「これまでリスクのバランスはドライバーにあったのですが、この新しいEV技術が入ってきたことによって、リスクは自動車にシフトし始めています」

「この問題に対処するため、わたし達は自動車メーカーと協力し、修理のしやすさを念頭に置いてEVを設計し、修理方法と部品供給能力を確保することで、持続的に修理できるようにしています」

保険について消費者にアドバイスするコンサルタント会社、モーター・クレーム・グールー(Motor Claim Guru)の創設者であるティム・ケリー氏は、修理費と部品交換費が高いことがEVの保険料上昇の一因であることに同意したが、最終的にはEV自体の車両価格の高さにその責任の大半があると主張する。

「保険会社にとって最もリスクが高いのはクルマの時価であり、修理費は保険料の6%程度に過ぎません。EVへの移行が加速し、EVに関連する請求が増加するにつれ、保険会社はこのリスクにさらされることになります」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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