ロータリーエンジンの栄枯盛衰 名車・珍車36選 前編 メーカー各社の挑戦

公開 : 2023.12.17 18:05

・ロータリーエンジンの歴史をゆっくり振り返る前編。
・ロータリーは誰の発明? メリット、デメリットは?
・マツダだけじゃない! 世界のロータリー車36台を厳選。

ロータリーの歴史と名車・珍車を振り返る

過去130年間、自動車に搭載されるほぼすべての内燃エンジンは、1個から16個のピストンを使用してきた。しかし、エンジンのバリエーションはこれだけではない。

一部のメーカーは、ロータリーエンジンを採用したり、その実験を行ったりしてきた。一見するとピストンエンジンよりもスマートな設計に見えるが、かれこれ60年近く研究されているにもかかわらずほとんど普及していないという事実が、ロータリーエンジンの難しさを如実に表している。

ロータリーエンジンの栄枯盛衰を前編・後編にわたって振り返っていきたい。
ロータリーエンジンの栄枯盛衰を前編・後編にわたって振り返っていきたい。

とはいえ、非常に魅力的で興味深いエンジンであることは間違いない。今回は、その歴史と設計について簡単に振り返った後、実際に発売された、あるいは計画されていた36台のロータリーエンジン車について、登場時期のおおよその順序(時系列が一部曖昧なため)で紹介する。

発明者

「ロータリー」と表現できるエンジンは1種類だけではない。ここでは、ドイツのエンジニア、フェリックス・ヴァンケル氏(1902-1988)にちなんで名付けられたヴァンケル型を取り上げる。

実は、自動車に搭載されたロータリーエンジンで、ヴァンケル氏の独創的なアイデアに忠実に従ったものはない。しかし、彼が1つまたは複数のローターで中央のクランクシャフトを取り囲んで駆動し、そこからトランスミッションを介して動力を駆動輪に伝達するというコンセプトを思いついたことから、その名が付けられている。

フェリックス・ヴァンケル氏(1902-1988)
フェリックス・ヴァンケル氏(1902-1988)

設計

よく知られているように、ヴァンケルエンジンは、ほぼ数字の「8」の形をしたチャンバー内で偏心回転する三角形のローターで構成されている。ローターが1回転するごとに、燃料と空気の混合気を取り入れ、圧縮し、点火し、排気するという通常のプロセスが3回行われる。クランクシャフトはローターと3:1の比率でセットされているため、このプロセスで3回転する。

ロータリーは回転数が高いとよく言われるが、これは少し語弊がある。エンジン回転数が9000rpmを示している場合、確かにクランクシャフトはその速度で回転し、燃焼サイクルを繰り返しているが、ローター自体は3000rpmでしか回転していない。

「8」字型のチャンバー内で、三角形のローターが回転する。
「8」字型のチャンバー内で、三角形のローターが回転する。

長所

ヴァンケルローターの作動が非常にスムーズなのは、1回の燃焼サイクルが比較的小さいことと、ローターが常に動いているためである。従来型のピストンはシリンダー上部で一旦静止し、加速してから減速してシリンダー底部へ向かい、再び加速してシリンダー上部へ戻るというプロセスを繰り返す。これは、わたし達が思っている以上に大きな問題を生むが、ロータリーではまったく問題にならない。

また、ロータリーはピストンエンジンよりも長さが非常に短い。たとえばフロントに搭載した場合、その質量は車体の中心近くに集中する。重量配分の面では有利であり、ロータリーエンジン車がしばしば非常に優れたハンドリングを発揮する理由の1つとなる。

ロータリーエンジンの吸気・排気・燃焼サイクル
ロータリーエンジンの吸気・排気・燃焼サイクル

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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