冬こそオープン・エア アバルト124スパイダーの「絶妙な気持ちよさ」

2018.11.26

カルロ・アバルトの信念

思えばアバルトの創設者であるカルロ・アバルトは、レーシングカーには過激といえるほどの高度なチューンナップを施してスピードを追求したけれど、ロードカーではツボをしっかり押さえつつ行き過ぎない辺りで加減を抑えたクルマ作りをするのが常だった。

乗りづらかったり持て余したりすると楽しさも半減だということを、よく知っていたのだ。

その「寸止めの美学」のようなバランス感覚は、時を経た今もアバルト・ブランドの中に活きているのだろう。だからこそアバルトのステアリングを握るドライバーは、日常と非日常をシームレスに行き来するときの快い刺激を味わうことができるのだ。

こうしたワインディングロードへのドライブはもちろん、仕事からの帰り道や買い物のための5分の道すがらでも、気持ちを浮き立たせることができるのだ。

それが最も濃厚なのが、オープンエアまでも手に入れられるアバルト124スパイダーなのかも知れない。

そんなことを考えるでもなく考えながら走っていたら──ポツリと来た。ウインドースクリーンで、水滴が次々と弾かれていく。これは堪らない。

凍てつくほどの気温じゃないが、この時期に濡れるのは誰だって嫌だろう。こんなときに現代のオープンカーは素晴らしいな、と思う。クルマを停めさえすれば、手動であっても20秒ほどで屋根を得ることができるからだ。

閉じた幌に雨粒が落ちるパサパサパサという音も、僕は嫌いじゃない。雨音がショパンの調べだとまでは思わないけれど、耳に心地好いのは確かなのだ。

さて、と。これからどうしようか。雨の中、どこに行こうか。

そんなことをボンヤリ考えながら助手席のフロアに何となく目をやったら、橙に色づいた木の葉が1枚、ふんわりと落ちていた。何と情緒深いことか。

これだからオープンカーは素晴らしい、と思わされてしまうのだ。