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10年が経過した今、ロータス・ヨーロッパSを再考する



こんにちは、オーセンティックカーズです。

弊社ショールームには、ただ今2007年式ロータス・ヨーロッパS LX225を展示中です。実質的な生産期間は2年ほどの短命なモデルに終わったヨーロッパS。商業的には成功したとはいえず、日本へは上陸したのも120台足らずといわれています。しかし同車の現オーナーには熱心な方が多く、登場から10年が経過した今でもそのユーズドカーが市場に出回ることは非常に稀です。今回はそんなヨーロッパSを再考してみたいと思います。

2006年に登場したロータス・ヨーロッパS。純粋なスポーツカーであるエリーゼに対してヨーロッパSはGTカー的な要素をもったラグジュアリーなクーペとして生を受けました。マイケル・キンバリーとロジャー・ベッカーという、かつてコーリン・チャップマンの許でヨーロッパ・スペシャルを開発したエンジニアたちが作り上げたその成り立ちはまさにリインカーネーション(輪廻転生)ともいえるものでした。

かの名車エランは、その後のロータス車のアイデンティティともいえる鋼板バックボーンフレームにファイバー製ボディの組み合わせを持つFRオープンスポーツカーとして1962年に登場しました。そのエランに対して長距離を走ることを主眼として開発されたのが『ヨーロッパ』という名のクローズドボディを持つミドシップ・クーペでした。ルックス的には何の関連性も感じられないエランとヨーロッパですが、そのボディの下は、エランのバックボーンフレームの前後をひっくり返してミドシップとしたシャシーを持ち、ドライブトレーンはルノーから(その後フォードから)持ってきたモノを載せるという『使い回しと借り物』で異なるモデルを作り上げるという、歴代のロータスで行われている手法が取られていました。さらにヨーロッパ・シリーズ2ではそれまで固定式だったサイドウィンドウはパワーウィンドウになり、インテリアも快適で豪華なものとなりました。その後、ヨーロッパTCでパワフルなツインカムヘッドを、スペシャルでさらに強力なビッグバルブを採用するなど、GTカーとして相応しい動力性能を獲得しました。


それから40年、チャップマンの意志を受け継いだエンジニアたちは、オープンボディのピュアスポーツであるエリーゼに対するクローズドボディのGTカーとしてヨーロッパSを生み出しました。その成り立ちもオリジナル・ヨーロッパときわめて似ています。シャシーはオペル・スピードスターのために開発したものを流用し、ロータス独自のセッティングを施しました。スピードスターのシャシーも元はエリーゼから派生したものですが、ホイールを4本のボルトで固定するエリーゼに対し、恐らくはオペル(GM)の社内基準からスピードスター(=ヨーロッパS)では5本となっているといったディテールからも、ヨーロッパSの生い立ちが窺えます。そしてエリーゼよりも強力な2リッター直4エンジンも、オペル製のECOTECをベースにロータスでチューニングしたものです。ここでも『使い回しと借り物』というロータスの伝統が現れています。



しかし、エリーゼではアルミのモノコックがむき出しになっていたインテリアも、ヨーロッパSではフロアカーペットと内装トリムで覆われています。特にこのLXグレードではサドルタンのレザーが用いられているので、豪華で華やかな雰囲気を持っています。一方のエクステリアでは、骨格部分でエリーゼとの関連性の強さを感じさせながらも、ほとんどがヨーロッパS専用にデザインされたもので、エリーゼよりも伸びやかで優雅なラインを描いています。ここで特筆すべきは前後のランプ類とドアをヨーロッパSのために新たに作り起こしたということでしょう。この部分、実はエキシージでさえエリーゼと同じモノを使用しているということからも、ヨーロッパSが別格として考えられていたことが感じられます。

ロータスの伝統に沿った成り立ちを持ちながら、惜しげもなく専用部品を投入して仕立て上げられたヨーロッパSですが、当時は残念なことに商業的には成功せず、短命なモデルとして終わりました。その原因の一つはエリーゼとの差別化が不充分であったことが考えられます。優雅なクーペボディもどこかにエリーゼの存在を感じさせるもので、また市場が求める上級クーペモデルとしてはいささか上品過ぎたのかもしれません。2リッターターボエンジンも直列4気筒ということでアピールの面で弱かったのでしょう。市場的にはスペック面で見劣りするととらえられたヨーロッパSですが、その新車価格は約700万円とポルシェ・ボクスターやメルセデスSLKに並ぶものでした。これは熱心なロータスファン以外の購入層にとっては高すぎると判断されたのです。かくてヨーロッパSは“失敗作”の烙印を押されました。

しかし、そんなことは過ぎた過去のことです。その登場から10年が経った今、中古車の価格もお値頃になってきたヨーロッパSの実車を目の前にすると、大きすぎない、程よいサイズ感が実に心地よいことに気付かされます。悪目立ちしない、上品なデザインも好ましいですね。インテリアもスポーティながらもエリーゼのスパルタンさとは異なり、居心地の良い快適な空間となっています。2リッターターボのエンジンもエリーゼ由来の軽量なシャシーには充分にパワフルです。ハンドリングはエリーゼほどクイックではなくコンフォート寄りなものですが、いざ本気になればドライバーの意志にしっかりと応えてくれるという、ロータスならではの懐の深いセッティングに仕上がっています。これすなわち、ヨーロッパSは日常遣いとしても気を使わずに乗ることができる理想的なロータスであるということなのです。

そういったことを前提にしてみると、この“失敗作”が実は非常に魅力的であることに気付かされます。確かにヨーロッパSを実際に購入し、日常遣いされているオーナー様がこのクルマを手放さないわけです。今や市場にはこれほどまでにコンパクトで華やかなスポーツクーペなど見当たらないのですから。「クルマの複数持ちは許されないが、ぜひともスポーツカーを所有したい」という方にも最適な一台でしょう。「俄然、ヨーロッパSが気になってきた!」という方は、ぜひ週末にでもご来店ください。その魅力のほどを理解していただけるはずです。


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