ルノー・ルーテシアGT

公開 : 2014.07.26 16:09  更新 : 2017.05.29 19:22

ルーテシアの“GT”の位置づけも、基本的には前ページのメガーヌGTと同じ。トップエンドのR.S.に次ぐスポーツモデルであり、アシの開発をルノー・スポールが担当、内装調度にもR.S.と共通点が多い。さらに、メガーヌにある“GT-line”が複数のパワートレインで選べるのに対して、GTはひとつのパワートレイン決め打ちで、アシをそれに最適化しているのが特徴だ(もっとも、ルーテシアには現時点でGT-lineは存在しないが)。ルーテシアGTのその例にならってパワートレインは世界的に1種のみだが、そのパワートレイン選択がメガーヌGTとはちょっと異なる。ルーテシアGTではR.S.のディチューン版ではなく、通常ラインナップの最上級モデルのものを使う。つまり、既存の日本仕様ルーテシアと同じ1.2ℓターボ+6段DCTだ。

ルーテシアGTのアシの仕立てはご想像のとおり、R.S.(のシャシースポール)より、さらにちょっと柔らかめ……が大まかな方向性だが、その手法はちょっと興味深い。タイヤは17インチのミシュラン・プライマシー3。タイヤ銘柄とサイズ、そして 空気圧指定も、既存のルーテシア・インテンスと同じである。そのうえで、フロントがスタビライザー径をそのままに、ノーマル比でバネレートとダンパー減衰力をアップ(前者が40%、後者が30%)。リヤはバネダンパーを変えずに、サスペンションアームそのものをワゴン版のクリオ・エステート用(中間のトーションビームが太め)に換装して、一部マウントブッシュに先代のルーテシアⅢのR.S.のもの使っているという。つまり、フロントはバネ/ダンパーを引き締めつつ、リヤは単純に硬くするというより、ロール剛性とタイヤの位置決め性に注力した思想がうかがえる。

……といった前知識を得たうえで、ルーテシアGTに乗ると「なるほど」と思えるポイントがいくつかある。まず、良路での乗り心地の悪化は最低限だが、コーナーでのフロントの入りがノーマルより明らかに鋭く、そして正確になった。コーナー途中でステアリングをさらに切り増したときの“ツキ”もノーマルの比ではない。全体にステアリング操作によるコントロールの自由度があがった感じで、今風にいう“アジリティ”はあきらかにアップしている印象だ。

同じタイヤを履く従来のインテンスだと、少しばかりオーバータイヤの傾向があることを否定しない。ノーマルのサスチューンだと、ベストマッチはおそらく16インチあたりなのだろう。そこに45扁平の17インチをそのまま履かせたインテンスは、荒れた路面でバネ下重量をもてあまして、タイヤがバタつくようなクセがちょっとあるが、このGTでは、同じタイヤでもそういう齟齬めいた部分が見事に消え失せている。どんな路面でもタイヤだけが勝手に暴れるような感覚はまったくない。ただ、前後左右がランダムに蹴りあげられる路面での上下動はちょっと強めなのが、ノーマルに対するGTのクセといえばクセだ。基本的にフロントを締めたシャシーチューンなので、ターンインでも確実にブレーキングして、フロントサスを積極的に動かしてあげることを心がけたほうが、GTはライントレースも安定して、きれいに曲がる。

1.2ℓターボは従来の1.6ℓプラスアルファのスペックを標榜するダウンサイジング過給エンジンだから、GTとはいっても、ルーテシアでこれ以上をのぞむのは贅沢だろう。ただ、205幅のプライマシー3のグリップを存分に引き出しているGTで、今回の箱根ターンパイクのように、急勾配をフラットアウトでのぼるようなケースでは、完全にシャシーファスターで物足りない感があるのも本音だ。GT専用の“R.S.ドライブ”でスポーツモードすると、エンジン・ピックアップが高まって、変速スピードも速まる(この制御はR.S.のスポーツモードと同じ)が、それもしょせん気休めである(?)。

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