アストン・マーティン・ヴァンテージGT3が公開

公開 : 2015.03.04 22:41  更新 : 2017.06.01 02:10

ジュネーブ・モーターショーにて公開された、アストン・マーティン・ヴァンテージGT3の生産台数は100台のみ。5.9ℓ V12ユニットが叩きだす最高出力は600psに及ぶ。

車両価格は約£250,000(4,595万円)となり、主にアストン・マーティンが抱えるVIPカスタマーにデリバリーされる予定だ。

ベースとなったのはロードカーであるV12ヴァンテージSであり、設計におけるフィロソフィーはヴァンテージGT3レーサーから大いに影響を受ける。

内外装にはカーボンファイバーやマグネシウム、チタニウム、アルミニウム等の軽量素材を多用することにより、1665kgであったV12ヴァンテージSからは、軽量オプションをフルに追加した状態で150kgもの軽量化に成功した。なおオプション追加前のヴァンテージGT3の車重は1565kgとなる。

7速のセミATやトレッド、アダプティブ・ダンパーのセッティングなどはヴァンテージGT3専用に見なおされ、エグゾースト・システムもチタン素材に置き換わった。

アストン・マーティン・スペシャル・プロジェクトのディレクターであるデイビッド・キング氏はAUTOCARに対して「既に名声をほしいままにしているヴァンテージですが、GT3レーサーのエッセンスを取り込むことにより、より深く歴史に名を刻みたいのです」と語る。

「同時に、公道だけでなく、サーキットでもヴァンテージGT3を存分に走らせて欲しいです」とも。聞くところによると、アストン・マーティンならではのクラフツマンシップも随所に生きているのだという。

AM57と呼ばれるエンジンは基本的にはV12ヴァンテージSの流用であるが、もちろんGT3用にモディファイされている。例えばインレット・マニフォールドは新設計となり、素材はマグネシウムに、ジオメトリーも改められた。

チタニウム製エグゾースト・システムも19kgの軽量化に成功。結果、最高出力は573ps→600psに、最大トルクは63.2kg-m→63.7kg-mに増強された。

ドライブ・シャフトも専用設計となり、素材はマグネシウムを使用。7速セミATも、変速タイム短縮のためにリキャリブレーションされた。ギア比はV12ヴァンテージから据え置きだ。

最終的なエンジン出力の詳細はまだ明かされていないが、最高速度はV12ヴァンテージSの298km/h→330km/hにアップ。エアロダイナミクスの改善による成果でもある。0-100km/hタイムは3.5秒とV12ヴァンテージSよりも0.2秒短縮されている。

シャシーの大部分とサスペンション・システムはV12ヴァンテージSから据え置きであるが、主要部分はGT3の専用設計となる。車高もまた据え置きだが、車体底部のエアロダイナミクス改善により、最低地上高は低められる。

トレッドはフロントが15mm、リアが33mmワイドになっており、スプリング・レートやスタビライザーの設計はGT3専用のセットアップだ。ビルシュタイン製アダプティブ・ダンパーもGT3専用のキャリブレーションが施されている。

ノーマル/スポーツ/トラックからなる3つのモードもV12ヴァンテージSのものをそのまま利用。ダンパー・セッティングの硬さやスロットル・レスポンス、変速スピード/タイミング、エグゾースト・ノート、ステアリング・アシストの強弱が同時に切り替わる。

「異次元のフィールをお楽しみください」とキング氏。これから2ヶ月におよぶテストが始まるのだそうだ。シャシー・チューニングのために、レーサーのダレン・ターナー氏も特別に参加しているとのこと。

ブレーキはV12ヴァンテージSと同じく大径のブレンボ製カーボンセラミック。軽量の19インチ・マグネシウム・アロイはミシュラン製パイロット・スーパー・スポーツ(アストンがミシュランを選んだのは初めて)が組み合わされる。フロントは265/35、リアは325/30サイズとなり、センター・ロッキング式(これも初)マグネシウム・キャップがそなわる。

ボディ・スキンも最新のカーボンファイバー・パーツを使用し、V12ヴァンテージSからは20kgのダイエットに成功。ボディ単体では50mmワイドになっている。よってルックス上のV12ヴァンテージSとの違いは明白なもので、大きく開けられたエア・インテークとともにGT3レーサーに近い雰囲気を放つ。

内装にも軽量化の成果が見られる。カーボン製シートやセンター・コンソールがそれだ。インフォテイメント・システムもダッシュボードからポップ・アウトする形式に変更された。スポーティであるが高級感に溢れているのは、アルカンターラやレザーによるところも大きい。

チーフ・デザイナーのマレック・ライヒマン氏とのQ&A

ずばりこのクルマはV12ヴァンテージSの改良版ですか? それともGT3レースカーのロード・ゴーイング版ですか?

「この場合、’どちらでもある’ というのが適切に思えます。V12ヴァンテージSの高級感とGT3レーサーの弾けるようなパフォーマンスを同時に楽しんでいただきたいです」

美しさは、機能ゆえでしょうか?

「まずは機能を優先させました。エアロ・パーツなどがその例です。そうして辿り着いたのが、突き詰めた機能ゆえの美しさです。’ジェントル’ でありながら、うちに秘められた野蛮さを好むアストン・ファンに捧げたいです」

日常使用も可能ですか?

「もちろん。V12ヴァンテージSとGT3レーサーの間の隔たりを埋めることが当初の目的です。したがってディテールには最新の注意を払っています。カーボンファイバー製のエンブレムやリア・ディフューザーの角度と合わせたウイングの角度、エア・フローをイメージさせるボディのペイントをじっくりとご覧になって欲しいです」

次世代のアストン・マーティンが目前ですが、それらを凌ぐ究極のマシンという理解でいいですか?

「われわれは、思考やポテンシャルのうえで、常に最高峰を目指しております。現時点での功績とこれから現れるプロダクトを楽しんでいただきたいと思います」

▶ 2015 ジュネーブ・モーターショー

関連テーマ

おすすめ記事

 

アストン マーティンの人気画像