トヨタ・オーリス 120T

公開 : 2015.04.08 23:50  更新 : 2022.12.12 21:30

  • 初代オーリスはヨーロッパ向けカローラの後継として、2006年に誕生。ゴルフ、フォーカス、308などと戦うべく、群雄割拠する欧州Cセグメントに極東から果敢に打って出た。

  • 現在の2代目は2012年8月に発売となった。日本で地味なのはハイブリッドがないためもあるだろう。

■どんなクルマ?

打倒ゴルフ、フォーカス! の心意気でもって、初代オーリスは開発された。なにしろヨーロッパ最大のボリューム・ゾーンである “Cセグメント”、いわゆるゴルフ・クラスに挑むべく開発された。東洋からのチャレンジャーなのだ。当然、イギリス工場で生産することも決まっていただろう。リアにダブル・ウィッシュボーンを奢るなど、トヨタとしては欧州で通用する動的性能にも意を注いだ。

デザイン面でも意欲的で、そういえば、初代はセンターコンソールがブリッジ型の空中回廊みたいな、少なくとも独自の造形を採用していた。当時、秋のパリ・サロンかどこかで、オーリスを手がけたデザイナーが初代シトロエンC4のインテリアを見ながらこんな感想を漏らしていた、と記憶する。
「そうとう攻めたつもりでやっていたけれど、あれと較べたら、まだまだやることがある」
初代C4は別次元のアバンギャルドだった。

初代オーリスは2006年に登場し、欧州ではプリウスのハイブリッド・システムが移植されて異彩を放った。2代目の誕生は2012年。欧州主要5カ国で、ゴルフ、フォーカスに継ぐ第3の存在となった。去年、新型308が加わったことで4位に後退したけれど、大善戦というべきだろう。日本でよりもヨーロッパで輝いている小型ハッチバックがオーリスなのだ。それがモデルライフの折り返し地点に到達した。ようするに3年目のフェイスリフトを受けた。

今回の最大の目玉は、新開発の1.2ℓ直噴ターボ・エンジンである。8NR-FTSと呼ばれるこれは、オーリスの国内における最上級グレード、120Tに搭載される。排気量はもはやヒエラルヒーを示さない。ダウンサイジングという世界的なビッグ・ウェーブがいよいよ極東にも到達したのだ。8NR-FTSはバルブ開閉の制御の幅を広げることでアトキンソン・サイクルを実現し、小型ターボチャージャーによって小排気量化によるパワーとトルクのダウンを補う。最高出力は116psながら、最大トルクは18.9kg-mと1.8ℓ自然吸気並みを誇る。ギアボックスはデュアルクラッチではなくてCVTと組み合わせている。結果は、「動力性能でも実燃費でも負けていない」。なにかとゴルフと較べたがる筆者にエンジンの実験担当者はそう言って胸を張った。

フロント・マスクはFCVのミライを彷彿させる。トヨタの最近のデザイン言語である “キーン・ルック” はいっそうキーンになった。金属調の眉が描かれ、バンパーのグリルは中央台形型から左右に広がって、ワイド感を強調する。シャア・アズナブルの愛機にふさわしい、とガンダム・ファンが泣いて喜ぶのではあるまいか。

内装は、それこそオーナーでもない限りなにが変わったのかわからない。外から見えないのだから仕方がない。担当者によると、「ごっそり変わった」。1.2ℓターボを搭載する目玉グレードの120Tでは、木目調と呼ぶには鮮やかすぎる加飾パネルが助手席の前のダッシュボードに貼られる。

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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