ロールス・ロイス・カリナン、公道テストに

公開 : 2015.06.10 22:50  更新 : 2017.06.01 02:09

カリナンというネーミングが明らかになったロールス・ロイスのSUVのプロトタイプが公道テストに供された。このカリナンは2017年に発売が予定されているモデルだ。

ロールス・ロイスの4×4モデルの存在は、2月18日に公開されたロールス・ロイスのCEO、トルステン・ミュラー・エトヴェシュと会長であるピーター・シュワルツェンバウアーの署名の入ったステークホルダー、つまりカスタマー、従業員、サプライヤー、そしてメディア宛ての書面で明らかになっている。

「すべてが新しいボディを持ったロールス・ロイスを開発していることを発表できることは誇りに思う。」とエトヴェシュは語ったが、その際に、ニュー・モデルに関して “SUV” という単語を敢えて避けた。「このモデルは、最高のラグジュアリーを与えるというわれわれのブランドに課せられた使命を果たすものだ。」ともコメントしている。

この4×4モデルの登場は、ロールス・ロイスの売り上げを10年間で3倍にするという計画の一翼を担うものとなるだろう。昨年、ロールス・ロイスは4,000台のモデルを販売したが、ロールス・ロイスの関係者によればあくまでこれは通過点でしかないと考えているようだ。

また、ロールス・ロイスの顧客の多くが、他とは違うモデルを望んでいるという点も見逃せない。ベントレーは、今年後半にSUVモデル、ベンテイガを発売する予定だが、ロールス・ロイスの4×4モデルは、そのベンテイガよりもサイズ的にも価格的にも大きく上回ることとなるだろう。

デザイン責任者であるジャイルズ・テイラーは、ファントム・クラスの巨大なモデルを製造することについては、何も問題を感じてはいないという。実際、4×4モデルも、その長さはほとんどファントムに近いものとなる予定で、モダンで誇りを感じさせるようなフロント・グリル・デザインを持つ。

現時点ではロールス・ロイス関係者はその価格に一切触れないが、フル装備だと£500,000(9,200万円)程度、ベーシックなモデルでも£250,000〜£280,000(4,600〜5,100万円)程度と予想される。

4×4モデルは、すべて新しいアルミニウム製のアーキテクチャーで、将来的にはすべてのロールス・ロイスの基礎となるスペース・フレーム構造となると思われる。エンジニアリング的には、どんな地形でも横断することのできるパフォーマンスを持っているという。

ロング・ホイールベース・モデルを持つ今年11年目となるファントムを見る限り、数の少ないモデルについてはスペースフレーム・シャシーのほうが優位なことは明らかだ。ベントレーやマイバッハのようにある程度量産が期待できるのであれば、モノコック構造のほうが安くつき柔軟性も高いのだが、ロールス・ロイスに関しては、コスト的な面は重要視しないと思われる。従って、将来的にもスティール・モノコックといった量産車のような構造は採用しない方針だ。

エンジンはファントムから移植された6.8ℓのV12をベースに専用のチューニングを与えたものが搭載される予定。ロールス・ロイスの顧客は、エンジンがパワフルで静かでスムーズであれば文句は多く言わないという。ロールス・ロイスは、プラグイン・ハイブリッド・モデルや、2011年には102EXというEVモデルもテストしている実績はあるが、今回は見送られることになりそうだ。また、ディーゼル・モデルもプロトタイプとして実験されたが、やはりその静粛性に問題がありとして、採用は見送られた。しかも、ロールス・ロイスのメイン市場となる中東、中国、アメリカではディーゼルの必要性を感じていないという。

ネーミングに関しては、まだロールス・ロイス社内でも決定していないという。ただし、開発はRR31というネーミングで進められている。

この4×4モデルの製造に関して、自らの歴史を紐解く作業をしたという。その結果、4×4モデルを製造するということは、決してロールス・ロイスのポリシーに反するものではないという結論に達した。

ロールス・ロイスのCEO、トルステン・ミュラー・エトヴェシュとのQ&A

何故この時期に4×4の存在を明らかにしたのか
われわれはロールス・ロイス・ファミリーの新しい存在を早い時期に公開することが必要と感じた。それは、顧客にとって、彼らの熱心なニーズにわれわれが応える仕事をしているということを知らせる必要があったからだ。また、メディアにもそのことを知らせるべきだと考えたからだ。

その決定はのぐらいの重要性を持つのか
この4×4モデルは、新しいアルミニウム・アーキテクチャーをベースとしている。このアーキテクチャーは、今後のわれわれの創りだすすべてのモデルに影響を与えることになるだろう。このグッド・ニュースと呼べる決定が、私にとっても大きな決定だった。つまり、BMW X7とは異なるアーキテクチャーを持つことになり、それは、このモデルが、単にBMW X7のリスタイル版ではないということを示している。つまり、隅から隅まで本物のロールス・ロイスであるということだ。もちろん、今後のロールス・ロイスのニュー・モデルに関しても、このことは変わることがない

このプロジェクトへの反対はBMWからはなかったか
反対意見とは考えていない。注意はあった。しかし、BMWはロールス・ロイスの持つ価値に気がついていたし、われわれが提案したこの新しいビジネスが、ブランドのために必要だと確信したと考える。また、会長であるピーター・シュワルツェンバウアーのサポートも大きかった。

この4×4モデルがどのぐらいのボリュームをロールス・ロイスに与えるこのになるのか
ボリュームがわれわれのメインの目的ではない。しかも、われわれの顧客は、そういった話にはあまり興味がないようだ。むしろ、ロールス・ロイスは、希少価値があるクルマであって欲しいと望んでいるようでもある。

4×4は新しい顧客を獲得することになると考えているか
われわれはそう信じている。既にロールス・ロイスを所有している人と、まったくはじめてわれわれのブランドに興味を持ってくれる人が半々ではなかろうかと考えている。しかし、レイスの80%が初めてロールス・ロイスのユーザーとなった人たちだし、ゴーストにしても60〜70%がそういった人たちだったので、心配もしていないし、そういった新しいユーザーの取り扱いについても不安は抱いていない。

エンジニアにとっては、シリアスなチャレンジになるが
確かに、われわれが自身に課している標準的なクオリティを成し遂げるのは難しいことかも知れない。しかし、われわれの目の肥えた顧客を満足させるためのクオリティが確保されるものと確信している。

今後4年の計画について

ロールス・ロイスは2018年までにさらなるリフレッシュを考えている。それは、新しいゴースト、新しいファントムとスピンオフ・モデル、そしてこの4×4だ。

ゴースト・フェイスリフト
2914年後半にショールームに到着するフェイスリフトされたゴーストがジュネーブ・モーターショーで公開される予定だ。よりモダンな演出がほどこされているのが特徴。また、ダイナミック・ドライビング・パッケージも新たに選択が可能となる。

ファントム・スピンオフ・モデル
スピンオフ・モデルとして、クーペとカブリオレの計画が進行している。新しいカーボンファイバーとアルミニウムのアーキテクチャーを採用すれば、可能性は高い。

ニュー・ゴースト
2018年に登場予定。現在のスティール・モノコックに変えて、BMWの洗練されたカーボンファイバー・アーキテクチャーを流用すると考えられる。基本的なベースは7シリーズではあるが、先にも述べたとおり、BMW 7シリーズの単なるリスタイル・モデルではない。

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