マクラーレン720S

公開 : 2017.03.10 14:02

マクラーレンのスーパー・シリーズに初めてのフルモデルチェンジが施された。その名も「720S」。マクラーレンにとって、この720Sが初めて経験するモデルチェンジとなる。モデル・レンジでも中核をなす新しいスーパー・シリーズはどのようなモデルに仕上がっているのだろうか。

text:Motohiro Yamazaki (山崎元裕)

 

2020年までに15のニュー・モデルをリリース。その中核となるモデル


2011年に誕生した、MP4-12Cを原点とする、マクラーレンのコア・モデル、スーパー・シリーズ。このスーパー・シリーズがフルモデルチェンジされ、そのファースト・モデルが、「720S」のネーミングとともに、ジュネーブ・モーターショーで正式に発表された。マクラーレンからは、今後2022年までに、トータルで15モデルの新型車が市場に投じるという、きわめて戦略的なプランが発表されているが、720Sはまさに、その幕開けを飾る重要な役割を果たす一台といえる。

マクラーレンが描く、このニュー・モデルのプランが夢物語でないことは、ロザハムに、マクラーレン製スーパースポーツの核となる、カーボン・モノコックを生産する新工場を、5000万ポンド(約70億円)もの新たな投資によって新設する計画を明らかにしていることにも証明されている。スーパースポーツ・メーカーとしてのマクラーレン。その未来にはさらなる成長が待っているのだ。

エアロダイナミクスに優れるボディ


ジュネーブ・モーターショーのマクラーレン・ブースで、720Sがアンヴェールされた瞬間、それを見る者がまず感動させられたのは、当然のことながらより妖艶な姿へと生まれ変わったエクステリアのデザインだった。パワーユニットをミドシップしていることを容易に想像させる、キャブ・フォワードのシルエットは、もちろん前作に共通するものだが、エアロダイナミクスや視認性といった機能をさらに魅力的なものとするために、新たなディテールが数多く採用されている。大きくそのサイズを拡大したと思えるヘッドランプは、上部にエア・インテークの機能を併せ持つもので、ランプ自体もアダプティブLEDマトリックス、すなわち個々のLEDランプを点灯、消灯させることで照射範囲を最適にコントロールするシステムが採用されている。

ボディ・サイドに目を向けると、これまでのスーパー・シリーズではリア・フェンダーの前部に配置されていた、大型のエア・インテークが廃止され、それが720Sのサイドビューをより魅力的な造形としていることに気づく。720Sには、Aピラーを支点として開閉する、ディヘドラル・ドアが採用されているが、マクラーレンが「ダブル・スキン」と呼ぶこのドアは、F1マシンのバージボードと同様の機能を持つもので、ここからのエアフローによって、ダウンフォースを発生させるとともに、先代比で約15%増という冷却効果を得ることに成功しているのだ。

リア・セクションのディテールも、エアロダイナミクスへの積極的な取り組みを象徴している。アクティブ・ウイングは走行状況に応じて最適なダウンフォースを生み出すほか、ブレーキング時にはわずかに0.5秒以下という動作スピードで、エア・ブレーキとしての機能も果たす。マクラーレンはこの720Sで、200km/hからの完全停止に必要な時間と走行距離、それぞれ4.6秒、117mと発表しているが、この制動性能を絶対的な安定感とともに実現するために、エア・ブレーキの機能が果たす役割は大きい。


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