アウディS1スポーツバック

公開 : 2014.03.15 22:50  更新 : 2017.05.29 18:18

■どんなクルマ?

もともとアウディS1は、当初、2010年にミニ・クーパーSジョン・クーパー・ワークスに対抗するインゴルシュタットの解答として計画されたモデルだ。それは左ハンドルしか用意されない限定モデルのアウディA1 2.0 TFSI クワトロとして、2012年には現実のものとなる。そして、今回、正式な “限定生産でない” カタログ・モデルとしてS1がラインナップに加わることとなった。

開発責任者であるウルリヒ・ハッケンベルグによれば、電子制御の機械式マルチプレート・クラッチによる4WDシステムと、トーション・ビームにかわってマルチリンクとしたリア・サスペンションの採用に時間がかかったのだという。「単純な仕事ではなかった。われわれはクルマのリア・エンドすべてを変更しなければならなかった。」とハッケンベルグは語っている。

今年後半にもベース・モデルのA1のフェイスリフトが予定されているが、S1は現行A1をベースにスポーティなルックスに仕上げられている。冷却性能を向上させるためにエア・ダクトが拡大されたフロント・バンパー、ブラックにペイントされたフロント・グリルとミラー・ハウジング、そしてリア・ライセンス・プレート・パネル、新しいヘッドランプ・グラフィックス、より大型化されたドアの下のサイド・シル、テールゲートに付けられたスポイラー、ディフューザーを装備するリア・バンパーなどがスタンダードなA1との違いだ。

ボディ・スタイルは3ドアと5ドアのスポーツバックの両方が選択可能で、専用のボディ・カラーも用意される。

クラムシェル・スタイルのボンネットの下に収まるのは、アウディでもお馴染みのEA888型ユニット。ターボチャージャーを備えた2.0ℓ4気筒で、231psのパワーと37.6kg-mのトルクを持つ。これはA1の最もパワフルなモデルである1.4TFSIよりも46ps、12.2kg-m多い数値である。

■どんな感じ?

予想通りパワフルで楽しいクルマだ。エンジンは非常に扱いやすい。ロー・エンドでのフレキシビリティ、ミッド・レンジでのパンチ力を兼ね備え、そしてスムーズな特性を持っている。ピーク・トルクは1600rpmで発揮されるため、低速でも高いギアを選択しても何ら問題はない。そういった意味では都市部でドライブするにも適しているといえよう。

回転を上げると粗いサウンドが4気筒エンジンから発せられる。コーナーの進入でスロットルをオフにしても、ヒビ割れたようなサウンドがエグゾーストから奏でられる。

ギアボックスは6速マニュアルのみの設定で、Sトロニックの設定はない。この6速マニュアルとA1のボディには初採用となる電子制御の機械式マルチプレート・クラッチによるクワトロ・システムが組み合わせられることとなる。また、クワトロ・システムはリアに最大50%のパワーをデリバリーすることが可能で、2ステージの電子制御のスタイビリティ・コントロール・システムも備わる。

どんな悪路であろうと、ホイールスピンなしにS1は充分なグリップとトラクションをもたらす。公式のパフォーマンス・データによればS1スポーツバックの0-100km/h加速は5.9秒(3ドア・ボディは5.8秒)だ。しかし、感覚的にはもっと速いフィーリングがある。

S1は、A1に対してクワトロ・システムを組み合わせただけのシャシーではない。高いシャシー・チューニングがされている。25mm低くされた車高、215/40サイズのタイヤと、17インチ・ホイール、修正されたスプリング・レートとダンパー、強化されたアンチロールバーなどが組み込まれている。

また、電子制御の機械式ステアリング・アシストも大掛かりに修正されている。そのステアリングは、センター付近を離れると適度な重さとなり、緊張した感じをドライバーに与えるマッピングとなっている。しかし、フィードバックが少ないのが残念だ。

適当なワインディングを見つけてS1を走らせると、非常に楽しいドライビングが可能だ。横方向のグリップは高く、ロールもかなり抑制されている。前輪駆動のA1よりも遥かにニュートラルなセッティングで、当然のことながら明らかに機敏だ。

乗り心地については堅いのひとこと。しかし、その素晴らしいシャシーは、どんな荒れた道であっても本当のハーシュネスを伝えることはない。

どんな気象状況にも左右されることなく、オールラウンドに素早いクルマがこのS1ということができよう。

もうひとつS1の美点を上げるとしたら、それは有無をいわさぬスタイリングとシンプルでハイグレードなインテリアだろう。しかし、今回テストをした左ハンドルについては、センター・トンネルのためにペダル類が左にオフセットされていたのは若干問題あり、というものだった。

■「買い」か?

3ドアの£24,900(420万円)、5ドア・スポーツバックの£25,630(432万円)という価格は、ベースとなるA1から驚くほどかけ離れたプレミアムが付いたものだ。しかし、その大きな能力は非常に魅力的だ。そのエンジニアリングも正当化できるものでもあるし、それなりの数が売れることは容易に想像がつく。

(グレッグ・ケーブル)

アウディS1スポーツバック

価格 £25,630(432万円)
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 5.9秒
燃費 14.1km/ℓ
CO2排出量 166g/km
乾燥重量 1340kg
エンジン 直列4気筒1984ccターボ
最高出力 231ps/6000rpm
最大トルク 37.6kg-m/1600rpm
ギアボックス 6速マニュアル

▶ 海外初試乗 / アウディA1 2.0 TFSI クワトロ

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