ボルボV40 ドライブ-E T5

公開 : 2014.07.01 23:50  更新 : 2017.05.29 19:08

■どんなクルマ?

最近加わったボルボの最も力強いエンジンが、ドライブ-Eファミリーにも採用されることになった。

新たなD4ディーゼル・エンジンを組み合わせたV40を試乗した際、われわれが高い評価を与えたことは記憶に新しい。したがってとても経済的なガソリン・エンジンを積むドライブ-E T5も、そのパフォーマンスをアピールするのに既に有利な立場にあるのだ。

今回はグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでも有名な上り坂から構成されるルートをテスト・コースとして設定した。このコースに持ちだしたのは、初めてボルボ独自のエンジンと組み合わされたD4と、今回テストするT5である。

T5は8速オートマティック・トランスミッションのみの組み合わせとなりMTを選択することが出来ないのだが、エンジンの特性からこちらのATが最も相応しいと感じる。R-デザインの豪奢なトリムには全モデル共通のナビゲーション・システムが収まり、高級感のあるレザー・スポーツ・シートが前後に並べられる。

車両本体価格は£31,900(472万円)なのだけれど、衝突回避アシストやアダプティブ・クルーズ・コントロールに代表される安全装備や、フロント・シート・ヒーターやステアリング・ホイール・ヒーター、後方パーキング・カメラ、パノラミック・サンルーフなどを含むドライバー・サポート・パックを追加しているために最終的には£39,050(578万円)まで価格がアップしている。

その結果アウディA3BMW 1シリーズがけん引するプレミアム・ハッチバック史上に真っ向勝負していかざるを得ない価格になっているのだが、実際のところはどうなのだろうか。

■どんな感じ?

短い試乗ではあったが、極めて能力が高いと感じた。

上り坂の手前で、試乗の順番が回ってくるのを待っていた最中にはT5エンジンが発する音の静けさに驚かされた。8速ATをドライブにセットし、アクセルを踏み込めば力強く加速を始め、そのあとは一連のスムーズな回転に身を任せるのみだ。1.8ℓTFSIエンジンのアウディA3 クワトロより速い6秒で100km/hに到達し、このタイムはBMW 118i スポーツよりもわずかに速いことになる。

しかしながらエンジンそのものが無理をしている印象は全くなく、レッド・ラインまでも不安なく吹け上がる。オートマティック・ギアボックスも常にこちらの欲するギアを選択してくれ、スポーツ・モードにセットした後はシフト・チェンジに要する時間が大きく短縮されていることに気付かされる。しかしV60 ポールスターがそうであるように、ステアリングにマウントされたパドル・シフトはオプションではなく標準装備にして欲しいところだ。シフト・ノブのみでしか操作できないMTモードは筆者にとっては無意味に感じられるからである。

ハンドリングに関して言えば、俊敏ではあるが落ち着きがないといった印象は皆無だ。1447kgというハンデを抱えながらも(BMWより52kg、アウディよりは120kg重い)、電子制御されたステアリングは軽く正確に操舵することを可能にする。

1999年にこのコースでフォーミュラ・カーに乗ったニック・ハイドフェルド打ち立てたベスト・ラップには当然ながら届くことはなかったのだが、走行を終えたV40は1500rpmほどの回転数で穏やかに、涼しげにアイドリングを続けた。

最初から最後まで、V40はプレミアム・ハッチとして相応しい走りに徹したのである。

■「買い」か?

もちろん買いである。短い時間ではあったが新しいエンジンを採用したこのクルマに乗った後、スウェーデンのクルマづくりにおける熟達はさらに揺るぎないものになったと確信した。さらに嬉しいことに、外部から供給を受けていたエンジンのすべてをこのドライブ-Eユニットに置き換えるというのだ。

複合サイクル燃費は17.0km/ℓ、高速道路での燃費は20.9km/ℓ、そしてCO2排出量は137g/kmというのがボルボの公表値で、仮にこのクルマを買ったなら、それは同時に多様な装備と美しいデザイン、そして優れた経済性を一度で手にする事に等しいと言えるのだ。

欠点はほとんど見当たらないのだが、強いて挙げるとすれば、それはインテリアが既に時代遅れになりつつあることかもしれない。しっかりとして隙のない雰囲気が既に完成されているだけに、ボタンがひしめき合うセンター・コンソールとタッチスクリーン・ディスプレイを見直しさえすれば、クラス唯一のハッチ・バックになることは間違いない。

(ダレン・モス)

ボルボV40 ドライブ-E T5

価格 £31,900(550万円)
最高速度 240km/h
0-100km/h加速 6.3秒
燃費 17.0km/ℓ
CO2排出量 137g/km
乾燥重量 1447kg
エンジン 直列5気筒1969ccツインターボ
最高出力 245ps/5500rpm
最大トルク 35.7kg-m/1250-4800rpm
ギアボックス 8速オートマティック

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

ボルボの人気画像