プジョー108アルーレ1.2トップ

公開 : 2014.07.04 23:25  更新 : 2017.05.29 19:00

■どんなクルマ?

プジョーの中で最も兼価なモデルが発売された。第二世代シティカーとしてプジョー、トヨタシトロエンの3社の共同開発となる今回のクルマは以前のモデルに比べて、更に洗練され品質が向上したことに加えて、重量は55kg増加し、全長は少しばかり大型化している。

しかしながら空気抵抗係数は0.34という数字から評価に値する0.29にまで減少し、アイドリング・ストップ機構の追加、高効率化された2ペダルMTと相まってCO2排出量は88g/km以下である。更に全てのグレードを含めても99g/kmを達成した結果、自動車税免除の適用を受けることができるのだ。

エンジンはプジョー製3気筒NAのピュア・テックであり、更にプジョー107でも採用されたトヨタ製の3気筒も追加予定である。これらのエンジンは兄弟車とも言うべきトヨタ・アイゴやシトロエンC1にも採用されることとなる。

性能に関して言えば以前の70ps、9.8kg-mから82ps、11.9kg-mに向上し、日常使用域である2750rpmから4800rpmにおいてトルクフルとなり0-100km加速タイムを14.3秒から11.0秒にまで更新した。

しかしながら1.2ℓモデルを選択した場合、上級モデルの2グレードのみに限られてしまうため、結果として217万円(£1250)を支払わなければならない。言い換えればプジョー社はモデルを107から108へと進化させる事で価格帯を底上げし、高級路線化を狙っているのだ。

今回オプションとなるファブリック生地の大型電動サンルーフはトップと名付けられ、ハイエンド・モデル向けのダッシュボード・フィニッシャーらと共に多くのオリジナル・カスタマイズが可能となる。

新型の108は以前の107に比べてサイズ変更などの改良は行われたが、基本的にプラットフォームは共有している。40mmボディが延長され、車高は僅かながら低くなっている事に加えてボンネットの長さが延長されたことにより以前の ”蒸気機関車” のようなデザインでなくなったことは喜ばしい。3台トリオの中でもプジョー108のフロント・フェイスはトヨタ、シトロエンの兄弟に比べて比較的落ち着いた感がある。

内装のデザインは一新され、ダッシュボードを中心とした造りは彫刻のように洗練度が高く7インチのタッチ・スクリーンも一体であるかのような印象だ。しかしながら奇妙なことにこのスクリーンにナビ機能はなくミラーリンクと共にスマートフォンを使わなければならない。この構造は悲しいかなトヨタ・アイゴにも共通となる見込みである。

■どんな感じ?

エンジンをかけてすぐの印象は、このプジョー108は静かである。1.2ℓ、3気筒エンジンはかかすかにシートを通して単調な振動を伝えるものの、走り出せばそれも気にはなることはない。

エンジン自体は非常にスムーズであるが、クラッチとアクセルペダルの操作は少し気を使う。アイドリング・ストップ機能が作動する兆候はハッキリとしているものの動作はスムーズである。

3気筒エンジンであるがゆえにエンド・トルクが細い印象であるが、左足でクラッチを蹴り右足でアクセルを踏み込んで、エンジンを回しながらイキイキと走らせるべきであり、またそれは運転を始めたばかりで初心者だった頃を思い出すような体験になるであろう。

これはプジョーも確信犯であるだろう。プジョー108を駆り街中を3つのペダルとギア・レバー、ハンドルを使いながらキビキビと走る事で運転とは楽しいものであると再認識できるはずだ。

1.2ℓクラスといえばたかが知れていると思うかもしれないが、広い道路などにおいてはエンジンの持つパワーをフルに使いきりながら走るという歓びを、スムーズなエンジン・サウンドもまたあなたを後押しすることであろう。

プジョーは比較的コーナリング時のロールが大きい特徴があるが、これはもはやプジョーの特色ともいうべきであり、今や正確なステアリングで軽快にコーナーを駆けることができ、また曲がりくねったカントリーロードにおいても3気筒エンジンのサウンドを背景にリズム満ち足りた走りができるはずだ。

柔らかいサスペンションはたとえ高速では落ち着きがないこともあるものの、プジョーに快適な乗り心地を提供する。巡航時はマナーも良く、細かいハンドル操作にも寛容でうまく処理されおり、コーナーで飛ばさない限りはフロント・シートの快適性も良好である。

リア・シートにはまた違う論点がある。それはクッション性能の問題点ではなく、とにかくスペースが狭いのだ。もしあなたが日常的にベビーカーと子供を後ろに乗せるつもりなら厳しい面があるかもしれない。これは5ドアでありながら2 by 2プラス・アルファといった印象だ。また残念なことに全長は長くなりながらも、この2代目へのモデルチェンジにあたってホイールベースは延長されずトランク容量も以前の139ℓから196ℓへの拡大に留まった。

■「買い」か?

1.2ℓバージョンのプジョー108は断然ご機嫌でエンジンをしっかり回してやれば決して期待を裏切らない走りを披露し、非常にキャラクター性のあるクルマと言えるだろう。

もしあなたがこのクルマでカントリーロードや高速道路を走る機会が多いのであれば上級グレードは買うに値する。もし街乗り用途が多いのであればパワーは劣るもののトヨタ製1.0ℓエンジン搭載のグレードが交通状況にフィットするであろう。これらの悩みはプジョー108のみならず、対抗馬となり得るフォルクスワーゲンUp!にも共通のものである。

ただし、以前のプジョー107より挙動はご機嫌で、クルマ自体の仕上がりもよく、使い勝手もいい上にカラフルで洗練された。1.2ℓを搭載したプジョー108の存在は今後フォルクスワーゲンの頭痛のタネになる可能性を十分に秘めている。

(リチャード・ブレムナー)

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価格 £12,245(215万円)
最高速度 170km/h
0-100km/h加速 11.0秒
燃費 23.3km/ℓ
CO2排出量 99g/km
乾燥重量 865kg
エンジン 直列4気筒1199cc
最高出力 82ps/5750rpm
最大トルク 11.9kg-m/2750rpm
ギアボックス 5速マニュアル

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