フォード・クーガ・タイタニアム

公開 : 2014.08.14 11:15  更新 : 2017.05.22 13:56

期待以上の第一印象

今月から新たな長期テストレポート車として、9月に国内販売が開始された新型フォード・クーガを導入することになった。ご存じのように新型クーガは、ひと足先に上陸した3代目フォーカスと同様に、フォードの“One Ford”戦略に基づいたグローバルプロダクトとして誕生したモデルである。開発は欧州フォードが担当し、日本仕様はスペインのバレンシア工場で造られる。

レポート車は上級グレードのタイタニアム。1.6ℓ直4ターボのEcoBoost(エコブースト)に6段A/Tを組み合わせるパワートレインはベーシックグレードのトレンドと共通だが、タイタニアムはキーレスエントリーやバイキセノンヘッドライト、フルレザーシート、デュアルパネルサンルーフなどの豪華装備が標準となるほか、タイヤサイズは18インチ(トレンドは17インチ)となる。車両本体価格385万円にETC車載器1万4070円(工賃含まず)とフロアマット3万450円を加えた389万4520円が、このレポート車の価格である。ボディカラーはタイタニアム専用のジンジャーエール。のどごしのいい炭酸飲料と同じネーミングとは面白い。ちなみにその他のボディカラーには、ホワイト、シルバー、ブラックが設定され、トレンドではこの3色から選択できる。インテリアはボディカラーを問わず、ブラックが基調となっている。

ボディサイズは先代型より少し長くなった。詳細は別項に明るいが、日本でも扱い易いといえる範囲のサイズであることは先代と変わらない。マツダCX-5くらいかなと調べてみると、偶然なのか全長、全幅、全高の値が同一だった。ちなみにホイールベースはクーガの方が10mm短い。

キネティックデザインコンセプトは先代から受け継ぎ、より進化させたとフォードは説明している。ルックスはシャープさが増したようで、個人的には新型のほうが好みなのだが、いかがだろうか。

装備面で珍しいのはタイタニアムに標準装備されるハンズフリー・パワーリフトゲート。スマートキーを所持していれば、リヤバンパー中央の下側でキック操作(バンパーに触れる必要なし)をするだけで自動的にリヤゲートを開けられる。これは最新のTVゲームでも使われているモーションテクノロジーを応用した技術だそうで、リヤバンパーの2カ所に内蔵されたセンサーが人間の足の動きを検知し、リヤゲートを作動させる仕組み。荷物などで両手が塞がっているときは重宝しそうだ。

そんなユニークな面を持つ新型クーガだが、最大の注目点はやはり、ダウンサイジングエンジンによる走りのパフォーマンスだろう。先代の2.5ℓ直5ターボより出力/トルクが18ps/8.1kgm下回っているという数字だけ見れば不安にもなるだろう。だが、前号(125号)のモリケータさんの試乗記をご覧になればおわかりのとおり、パワートレインにとりたてて不足はなく、むしろコーナリングパフォーマンスに大きく貢献する4駆の良さ、つまりよく曲がるという点が報告されていた。このあたりは担当者も楽しみにしていた8月下旬だったが、9月に入り早速、箱根のワインディングで試す機会に恵まれた。

路面状況やステアリングの舵角、スロットル開度などから、前後のトルクを100:0〜0:100まで自動的に最適配分してくれる新開発のインテリジェントAWDシステムは伊達ではない。確かによく曲がるのである。トルクベクタリングも搭載されるから、ドライビングの腕が2割ほどは増したような錯覚にも充分浸れる。そんなシーンでもダウンサイジングエンジンによるネガはいっさい感じず、むしろ先代より軽くなった鼻先も手伝って、軽やかにコーナーをクリアしていけるのである。

先代型は個人的に好印象だった(とくに足の仕立て)。それだけに新型への期待は大きかったが、早速の箱根ドライブでそれを上回る第一印象が得られ、幸先のいいスタートを切れた気分だ。今後、日常ユースでわかる魅力とともに実用燃費にも注目していきたい。導入から約2週間。街乗り6割、高速4割程度の走行で9.4km/ℓだった。本誌では過去に先代型も長期テストを実施した経緯がある。当時の担当者の使い方、走り方はわからないが9.2km/ℓと報告されていた。当然、単純に比較できるものではないが、フォードによれば先代型より20%以上改善されているというから、今後の推移が楽しみだ。  

これから半年に渡りレポートする予定である。

(AUTOCAR No.126 2013年9月26日発売号掲載)

パッケージングも進化

よりシャープな印象を強めたスタリングや、ダウンサイジングエンジンをはじめとする新世代パワートレインの採用による出力と燃費のさらなる効率化などに、新型クーガの魅力は目を奪われがち。それは当然で、進化の度合いをもっとも端的に感じ取れる部分である。その一方で、パッケージング面でも大きな進化を果たしているのも事実だ。

先代型より95mm長くなったボディは、おもに後席レッグスペースと荷室容量の拡大に充てられている。ヘッドルームを含めて高まった後席の居住性がいかに優れているかは、乗員を迎える機会を得たことで実感できた。身長175cm程度の乗員が前後に座っても充分に寛げる後席は、リクライニング機構の効果もあり、実にリラックスできる空間だ。シートの仕立ては座面、背もたれともに可倒機構を備えるタイプとしては高水準といえるものである。

意外と重宝しているのが後席座面のドア側にあるシートバック調節レバー。これはリクライニングと荷室拡大のためのシートバック前倒しを兼ねている。サイズや形状は限られるが、ちょっとした荷物ならリヤゲートを開けなくてもリヤドアから荷室にアクセスできてしまう。編集部近くに借りている駐車場は、駐車時に車両後部にほとんどゆとりがないため、一旦駐車してしまうとリヤゲートは開けられない。後席シートバックの操作性の高さは、このようなシチュエーションでも恩恵が受けられる。

大人4名で都市高速を1時間程度移動した経験からいえば、先代からスペックダウンしたエンジンが演出する走りになんの不足も感じることはなく、合流、中間加速等、実にスムーズに流れに乗れた。後席乗員によれば乗り心地も良好だったようで、走り出してすぐに眠りについてしまったとのこと。ファミリーユースはもちろん、多人数乗車の多いユーザーにも、まさにお勧めできる新型クーガである。

ただ、燃費に関してはいまのところ期待値を超えるものとは言い難い。レポート車導入からひと月半、2000km余りの走行をもとにすると、高速では60〜100km/hの巡航で10km/ℓを超えるのがやっと。街乗りでは8km/ℓ前後に留まる。このデータをどう捉えるかの判断は分かれるだろうが、担当者としては高速で12km/ℓ程度まで伸びるのではないかと予想していたが、少し期待が過ぎていたようだ。

さて、レポート車導入早々に、ちょっとしたトラブルがあったのでご報告を。撮影のために沼津まで足を伸ばしたときのこと。撮影中に左側のフロントタイヤにネジが刺さっているのを発見した。気付くのが早かったようで、刺さっている場所がドレッド面だったのと近くにタイヤショップがあったのが不幸中の幸い。タイヤ交換せずに済んだ。修理は内側からパッチを張り付ける方法で、費用は5250円だった。クギやネジがタイヤに刺さるのは、知らない間に起きていることが少なくないもの。皆さんの愛車のタイヤ、大丈夫ですか?

(AUTOCAR No.127 2013年10月26日発売号掲載)

欲の出る動力性能

新型クーガに搭載されているパワートレインは、182ps/24.5kgm引き出す1.6ℓ直4のエコブースト・エンジンに6段トルコンA/Tを組み合わせる。これまでもご報告のとおり、先代型より出力/トルクのスペックは下回るものの、1720kgの車重を感じさせない加速感を演出してくれる。新型クーガも、すっかりお馴染みの“ダウンサイジング”を上手に表現できているクルマの1台だ。

このひと月は2000km余りを走行する機会に恵まれ、街乗り、高速、そしてワインディングと、公道で試せるシーンをほとんどこなすことができた。あらゆる場面でこのパワートレインが充分といえるパフォーマンスを発揮できることを再確認できたわけだが、なにぶん足がいい。とくにワインディングでの身のこなしは、自分の腕が急に上がったかと錯覚するほどだ。そうなると人間欲深いもので、さらなる加速感(とくにコーナー脱出時)を望んでしまう。例えば仮に、エクスプローラーに搭載している2.0ℓエコブースト(243ps/37.3kgm)をこのクーガに搭載していたらどうなるだろう。もっと加速にパンチが付くのでは……などという妄想(?)が頭をよぎるのである。クーガのハイパフォーマンスモデル(ST?)として、限定モデルでもいいから、ぜひご検討いただきたいものである。

ちなみに新型クーガに搭載されるガソリンエンジンは、欧州仕様でも1.6ℓ(182ps)がもっとも高出力。ドイツやイギリスで販売されている欧州仕様にはデュラトルクと呼ぶディーゼルもあり、こちらの最も高出力なエンジンは2.0ℓで163ps/34.7kgmを発揮する。

改めて装備の価値に感心したのがシフトノブに備わる変速ボタン。クーガの場合、Dレンジのままボタンによる変速が可能で、シフトダウン後はアクセルを開けていくと自動的にシフトアップしてくれる(Sレンジは任意に変速)。つまり自分のタイミングで減速しながらコーナーに入り、その後はアクセル(とステアリング)操作に集中できるというわけだ。すでにボタン変速は体が覚えたらしく、たまに別のクルマでドライブするときも、パドルがあるのにシフトノブを触ってしまうことがあるくらいだ。

いまどきのSUVにはパドルシフトすら備わるクルマも珍しくないのだから、取り立てて言及することもないかもしれない。だがこのボタン変速による6段A/Tと1.6ℓエコブースト・エンジンのキャラクターとのコンビネーションは、なかなかにマッチしていると思う。仮にクーガにパドルシフトを装備していたら、それこそDCTとの組み合わせを望んでしまうし、さらには先に触れた2.0ℓエコブーストを載せたモデルの存在も一層期待してしまうかもしれない。

さてレポート車は新車登録から3カ月を経たようで、点検のために3日程フォード・ジャパンに預けることになった。その間フォーカスをお借りしたのだが、こちらはDCTを搭載しているからなのか、Dレンジのままシフトボタンでの変速はできず、任意の変速は“S”に入れなければならない。クーガにもパドルがあってもいいと思うが、もし搭載するなら、やはりフォーカスの方が先のようだ。それはともかくクーガと乗り比べると、当然ながら走りは軽快。DCTの素早い変速もスムーズな加速にひと役買っている。ただ内外装のデザイン(キネティックデザインコンセプト)や、しなやかな足捌きをはじめとする走りのフィーリングなどにクーガとの共通点は多く、欧州フォードが開発した新世代モデルを実感した次第である。

(AUTOCAR No.128 2013年11月26日発売号掲載)

キネティック=動的な

このひと月もまったくのトラブル知らずで順調に走行を重ねているクーガ・タイタニアム。本格的な冬を迎え、3段階の調節が可能なシートヒーターのありがたみを感じている今日この頃だが、気温の低下とともにエアコンの設定温度が上がり、シートヒーターの使用頻度が高まっていることも関係しているのか、燃費が低下気味なのが少々気になるところ。といっても今月は混雑した街中をドライブする機会が大半を占めたので、別項の燃費データはしかるべき値といえばそれまでではあるのだが。

最近都内を走行中、クーガとすれ違う機会があった。ある時はホワイト、そしてまたある時はブラックのボディだった。レポート車のジンジャーエールとはやはり見た目の雰囲気がひと味違い、モノトーンのボディもなかなかスマートに見えた。洗練されたイメージはむしろモノトーンボディのほうが高いかもしれない。ボディカラーを問わず、この洗練性を感じさせる大きな原動力となっているのが、フォードが近年導入しているキネティック・デザインと呼ぶコンセプト。先代クーガにも採用されているが、新型ではより洗練・熟成を深めているという。

ご存知の方も多いと思うが、キネティックとは日本語で“動的な”という意味。フォードが推進しているキネティック・デザインは、立体感溢れるプレスラインやボリューム感のある面構成を上手く組み合わせた効果で躍動感を演出し、見る者に優れた動力性能やドライビングの楽しさを連想させるのが狙い。フォードのデザイン・エグゼクティブ・ディレクターであるマーティン・スミス氏は「新型クーガのエクステリアのテーマは躍動感です。そしてその内側に秘めたエネルギーを伝える筋肉を想起させて、ランナーや水泳選手などアスリートのような印象を与えたいと考えました」とコメントしている。

改めてクーガのエクステリアを眺めてみると、このコンセプトがよくわかる。上下二分割の台形グリルや切れ長の眼を連想させるヘッドライドによって、フロントマスクをシャープに、そしてフロントからサイドに流れるキャラクターラインはスピード感を演出。フロントフェンダー後部に設置されたサイドベントがサイドビューのアクセントとなっている。好みの問題はさておき、このデザインがフォードの新世代モデルを巧みに表現していることは充分に伝わってくる。個人的にはやり過ぎ感が無く、スマートなイメージが気に入っているのだが、皆さんはどんな印象をお持ちだろうか?

このキネティック・デザインのコンセプトはフォーカスはもちろんのこと、2014年初頭に日本デビューが予定されている新型フィエスタにも採用されている(日本仕様は本誌104〜107ページをご覧のとおり)。横線バーで構成する逆台形型のフロントグリルはアストン・マーティンに似ているが、躍動感のあるデザインはコンパクトボディながら街中でも高い存在感を発揮しそうだ。

さてレポート車のクーガは、年明け1月中旬までを目処にタイヤをスタッドレスに履き替える予定だ。早ければ次号で雪上での走りの印象をご報告できるかと。オンロードでももちろん享受できるインテリジェントAWD(前後駆動力配分が最大100:0〜0:100まで可変する)の真髄に雪道でじっくり迫ってみたいと思う。

(AUTOCAR No.129 2013年12月26日発売号掲載)

頼もしいヨンク

前号の予告どおりタイヤをスタッドレスに履き替えた。本誌締め切り直前の交換だった関係で、思い存分にという程ではなかったが、クーガの走りの良さを確かめるくらいのドライブは叶った。

クーガに搭載されている4駆システムはインテリジェントAWDというネーミングのとおり、実に賢い。通常は前輪駆動としながら、状況に応じて前後駆動力が最大で100:0〜0:100まで最適に配分される。このシステムのおかげでクーガは、多彩なシチュエーションでスムーズな走りが楽しめる。この美点は、スタッドレスを履いているとはいえタイヤの限界速度が低くなる雪上においても当然変わらない。

装着したスタッドレスはミシュランのX-ICE XI2。最新モデルではない(最新は同XI3)が、少なくとも圧雪路での確かなグリップとステアリング操作に対する応答性の高さは実感できた。クーガとこのタイヤとの組み合わせはすこぶるいい。聞けば、クーガのオーナーがディーラーでスタッドレスを注文すると、基本的にはこの銘柄になるという。つまりフォード側が認定しているタイヤと捉えるのが妥当なわけで、マッチングが悪いはずがないのである。

当然といえばそれまでだが、雪上など滑りやすい路面で避けたいといわれている、“急”の付く操作さえしなければ、クーガは雪上路においても、高い安定感と安心感をもたらす。想像以上にアグレッシブに“踏んで”行けたことには感心至極。頼もしい。周囲の安全を確認したうえで、ちょっと意地悪にブレーキペダルを強めに踏み込んでみるとさすがにABSが介入するが、車両姿勢に乱れはいっさいない。このあたりの所作だけでも、まさに4駆システムの優秀さを表していると思う。残念ながら、スタッドレスタイヤの限界を超える走りを試せるような安全な場所での試乗は叶わなかったが、クーガの4駆が雪上でもその美点を発揮できる点は充分確認できた。別項のとおり、この4駆システムはメーター中央の表示で、前後左右輪が個別に駆動力配分状況をモニターできる。さすがにある程度スピードに乗ってしまうとこの表示を凝視していられないが、発進時にほんの少しリヤに駆動力を回し、スムーズなスタートを演出していることは目視確認できた。

それから、このスタッドレス。街乗り高速問わずにドライ路面でもしっかりとしたフィーリングが得られた点は、付け加えておきたい。このドライ性能を備えているのなら、冬の間スタッドレスを履かせっぱなしにしたとしても、きっと普段使いに大きな支障・不満は出ないはずだ。

雪上での確かな走りが確認できたこともあり、これでいつ関東にドカ雪が降っても安心だと思っているのだが、なかなか降らない。皮肉なものである。

最後にお詫びと訂正を。前号のレポートで前席のシートヒーターが3段階調節と記しましたが、正しくは5段階でした。訂正してお詫びいたします。

(AUTOCAR No.130 2014年1月26日発売号掲載)

抜かりなき安全装備

扱い難くないボディサイズ、高水準の走りといった魅力に目を奪われがちなクーガだが、高い安全性能を備えている点も見逃せない。今月は当レポート車、クーガ・タイタニアムに標準搭載される安全装備に、改めて注目してみたい。

まずはアクティブ・シティ・ストップ。いわゆる自動ブレーキシステムだ。フロントガラス上端中央に内蔵されたレーザーセンサーが前方約6mを監視し、走行車両や停止車両を検出。車両間の相対速度が15km/h未満の場合は追突を回避し、15〜30km/hでは追突のダメージを軽減してくれる。前車との相対速度から衝突の可能性があるとクルマが判断した場合はブレーキ圧を高めてスタンバイし、その後もドライバーが回避操作をしなければ自動的にブレーキがかかるとともに、エンジントルクが抑制される。

次にBLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)。レーダーセンサーを使用して車両の左右後方3mまでの死角をモニタリングし、この死角に後続車が侵入するとドアミラーに設置されたインジケーターで注意を促してくれる。高速をはじめ複数の走行車線のある道路でレーンチェンジする場合等、ドライバーの良きアシスト役となる。

そしてアドバンストラック。これはABSやトラコン、ESPを統合制御することによってブレーキやエンジン出力を制御し、車両姿勢を安定させるもの。このクルマにはさらにRSC(ロール・スタビリティ・コントロール)を組み合わせる。言わば横転防止装置で、ジャイロセンサーが毎秒150回、ロール角やロール加速度をモニタリングし、横転の危険性を検知するとアドバンストラックを作動させて横転のリスクを回避してくれる。またこれには、オーバースピードでコーナーに侵入してしまった際、自動的に減速するカーブコントロールも含まれている。トルクベクタリング・コントロールやインテリジェントAWDとの組み合わせにより、安定したスタビリティと高いトラクション性能を演出している。

これらのアクティブセーフティデバイスは現代のクルマでは決して珍しい装備ではないが、やはりあると安心感は高い。ちなみにベーシックグレードのトレンドにはこれらが未装備となる(アドバンストラックの代わりにアンチ・ロールオーバー・ミティゲーションを装備)のは少々残念だ。

一方、パッシブセーフティも高水準だ。運転席ニーエアバッグを含む計7つのエアバッグを搭載するほか、先進のシミュレーション技術を駆使し、5000回以上にも渡るクラッシュテストによって改良を重ねた安全ボディを採用。これによりユーロNCAPで最高の5つ星を獲得。ミドルサイズSUVで歴代最高評価となる総合保護性能で88%を記録している。

安全性を声高に主張しているようには感じないフォードだが、改めてみると先進技術の惜しみない投入がわかる。幸い、まだこれらの装備にお世話にはなっていない。今後もならずに済むといいのだが。

ところで、先月よりスタッドレスを装着した当レポート車、なかなか関東に雪が降らないと前号で言ったが、2月8日、記録的な大雪に見舞われた。嬉々として雪上ドライブに繰り出し……と報告したかったのだが、生憎その数日前に飛び石をくらい、フロントウインドウにひびが。あえなく修理へ。これまたなんとも皮肉なものである。

(AUTOCAR No.131 2014年2月26日発売号掲載)

フォードにはクーガがある

昨年8月末から約7カ月に渡ってレポートしてきたクーガの長期テストは、今月号をもって退役する運びとなった。

通算で8500kmを超える距離を共にした今でも、クーガのスマートな足捌きには感心させられる。軽すぎず、かといって重くもない適度な重み付けのステアリングフィールは、街乗りシーンでもワインディングでのアグレッシブな走りでも好印象だった。アイポイントの高さやコーナーでのロール挙動でSUVを再認識するものの、基本的にはステーションワゴン感覚で走れてしまう。タイトコーナーでドライバーが先に音を上げてしまいそうになるシーンでも、“路面食い付き性”は想像以上に高い。欧州仕立てのフォードらしさは、追い込んだコーナリングで際立つことを実感した。そしてインテリジェントAWD。ドライ路面はもちろん雪上でも安定感・安心感は高く、ドライビングの腕が少し上がったかのような錯覚に浸ることもできたくらいだ。

動力性能面での不満らしい不満はなかったが、足の仕立てがいいだけに、もう少しパワーを上乗せしたエンジンを積んだクーガに乗ってみたくなったのも事実。200ps超級のエンジンで“クーガ・スポーツ”なんていうグレードがあったら面白いかもしれない、と妄想が膨らんでしまう。

燃費はどうだったか。混雑した街乗りでのドライブが6割以上を占めた数値は別項のとおりだが、個人的な印象としてはやはり、街乗りでの伸びがもう少しあってもよかったかと思う。インテリジェントとはいえ、フルタイムAWDシャシーの宿命ということなのだろう。

内外装の洗練性の高さも、フォードの新世代モデルを実感させてくれた。個人的には知性をも感じさせるシャープなフロントマスクが気に入っているのだが。そして装備面でもユニークだ。代表的なのがハンズフリー・パワー・リフトゲート。キーを所持していれば、リヤバンパー付近でキック操作をするだけで、クルマに触れずにリヤゲートが開けられるこの機構、実際に荷物で両手が塞がっているときなどは重宝した。一方で、今後期待したいのはナビというか、いわゆるヒューマン・マシン・インターフェイスのさらなる進化。ナビは現状でもアクセサリーで装着できるのだが、ナビの装着を選んでしまうと、センターパネルに標準装備されるSYNC(デジタルメディアプレーヤーに保存された音楽の再生や、携帯電話のハンズフリー通話を可能にするシステム)が使えなくなってしまうのだ。今後は、ぜひともナビとSYNCが融合したシステムを搭載して欲しいところだ。スマホをナビとして使うには現状でも問題ない(スマホ用クレードルはアクセサリーで用意されている)から、あくまで私見ではあるが。

走りの面でも装備の面でもつい欲が出てしまったが、それは言い換えるならクーガの出来がそれだけよかったからとも言えるわけで、ミドルサイズSUVとしての完成度は実に高かったと報告できる。昨今、このクラスを含めクロスオーバーも視野に入れるとコンパクトSUV系は話題に事欠かない。デザインや価格、あるいはブランドバリューなど選ぶポイントは千差万別だが、パフォーマンスの高い走りを軽視しない選び方をするなら、クーガはその候補リストの上位に名を連ねてもいいクルマだ。

(AUTOCAR No.132 2014年3月26日発売号掲載)

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