ダイハツ・タント・カスタム RS

公開 : 2013.11.26 19:28  更新 : 2017.05.29 18:45

ある程度は予測できたことなのだが、本当にやってくれると、やっぱり驚く。従来のタントは左側のピラーレス・スライドドア(正確にはピラー内蔵スライドドア。ダイハツによれば側突面での不利はないという)+右側スイングドア……という独特のボディ形態がバカウケ。登場以来、長らくスズキワゴンRと軽販売ツートップの座を堅持してきた。しかし、一昨年末にホンダN-BOXが出ると状況は一変。ピラーレスでこそないが両側スライドドアを持つホンダN-BOXの後塵を拝することが、すっかり恒例となってしまったわけだ。

こうなると、タントの次なる一手は両側スライドドアしかない。しかし、みずからの売りも手放したくない……と、新型タントは右側を新たにスライドドア化しつつ、右側のピラーレスボディも維持。“片側ピラーレス両側スライドドア”というボディ形式そのものにはトヨタ・アイシスなどの前例はあるが、それをアイシスよりはるかに小さな軽自動車枠でやりきったことがタントの快挙である。これまでも決して軽くなかった重量面で、さらに厳しくなるのは容易に想像がつくが、ミライース以来の新思想モノコック設計やほどほどに抑制されたホイールベース、ボディパネルの樹脂化(エンジンフード、フロントサイドフェンダー、リヤゲートなど)などで実際のウエイトは先代と同等にキープされたのは素直にたいしたもの。それでもスペーシアより重いが、N-BOXよりは軽い。

タントの室内空間はそもそも、先代ですでに「これ以上、広くしようがない」ところまで達しているのだが、それでも執念のダイハツはさらに空間拡大(笑)。今回はAピラーの角度をさらに立てて前席の頭上空間を広げたが、ここはハッキリいってデッドスペースであり、あくまで心理的余裕という意味での拡大だ。

新型タントにおける最大の変更点は前記のとおり、右側スライドドア化だが、それをひとまず横に置けば、走り面の進化が印象的。先ごろビッグマイナーチェンジを受けたムーヴから、主要モデルにフロントスタビライザーを標準化するなど、ダイハツは基本ダイナミクス性能の向上に手をつけはじめた。この点は長らくダイハツがスズキに後れを取っていた部分である。

先代タントはムーヴと共通の足まわりを、バネやショックで背高高重心ボディに対応しており、自然吸気モデルは当時のムーヴ同様のスタビなしが基本だった。しかし、新型タントではターボの有無に関係なく主要モデルでフロントスタビライザー標準化、さらにリヤスタビが全車につくのも新しい。また、2WDのフロントショックにはリバウンドスプリングも追加。今回のタントは背高高重心ボディに対して、ほぼ考えられるかぎりのロール剛性強化策が施されている。

実際、新型タントでは、ロールの絶対量およびロールスピードの低減、自然吸気の乗り心地向上が著しい。直進性も明確に向上していて、高速で絶えずユラユラしていた上屋の動き(先代タントを運転していて、クルマ酔いしてしまった経験が私には数回ある)も新型では感じ取れなかった。また、静粛対策もムーヴ以降のダイハツの美点で、新型タントでも絶対的な遮音性が明らかに高まっているだけでなく、加減速時の急激なエンジン回転の高まりも適度に抑制されており、トータルで明らかに静かなクルマになった。

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