スズキ・スペーシア

公開 : 2014.01.30 16:15  更新 : 2017.05.29 18:41

スズキ・パレットはとてもいいクルマだった。特異なディメンションをあそこまで自然に乗り心地よく走らせた手腕は、素直に評価されるべきと思う。そのパレットを含む“大容量系ハイトワゴン”というべきジャンルを創出したのは、2003年に発売された初代タントで、即座にワゴンRやムーヴとならぶ軽トップセラー争いの常連となった。ダイハツに完全にしてやられたスズキは、両側スライドドア(タントは片側)対抗馬の開発をスタート。2008年1月、フルチェンジするタントと示し合わせたかのように、パレットを発売した。

しかし、パレットは販売競争において、さらに広大な室内空間とピラーレス片側スライドドアの2代目タントの後塵を拝し続けた。そして、一昨年末にホンダからN-BOXが出てきて販売トップに居座るも、タントもけっこう根強く食い下がって……の構図となったが、そこでもパレットはカヤの外だった。このパレットの後継機種が、わざわざ車名を変えたのは心機一転、再出発の意味がある。正直なところ、あえて名義を継承するメリットがあるほどには、パレットの認知度もイメージも高くなかったのかもしれない。

パレットが期待ほど売れなかった理由を、スズキは「室内の広さを打ち出せなかったことと、女性ウケ、とくに子育てお母さん層のウケが芳しくなかったこと」と理解した結果が、このスペーシアである。
 パレットはタントに対してキャビンを絶妙に絞り込んで、視覚的にもクルマらしい安定感を得ていたが、新しいスペーシアは一転して、とにかく四角い。ウインドウは左右もリヤもギリギリおっ立てて、ダッシュボードは削ぎ落として、室内長はクラストップ。

「女性ウケ、お母さんウケ」では、商品企画チーム(スズキでは“カーライン”という)の責任ある立場に女性を置いて「あら使いやすいわ、私も買お、同級生の○○ちゃんのママにも勧めちゃお!」といわしめるクルマにすることを徹底した。スペーシアに投入された女性目線の新機軸はじつにたくさんあるのだが、助手席前のボックスティッシュホルダー(運転席から手が即座に届いて、フタがあるのがキモらしい)やワンタッチスライドオープン機能(ドアロック状態からノブに触れるだけで一気に解錠→スライドオープン)がとくに自慢らしい。リヤシートも見た目や可倒方式はパレットと変わらないが、「女性が片手で直感的に操作できること」のために、シートを新開発して軽量化と操作ステップの簡略化をしたそうだ。

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