メルセデス・ベンツCLS350ブルーエフィシエンシー・シューティングブレイク

公開 : 2012.12.26 18:15  更新 : 2017.05.13 12:52

知っているようで、じつは厳密には知らない人が多い言葉にシューティングブレークがある。文字どおりの意味では“狩猟用のワゴン”であり、私もこれまで「ステーションワゴンの、ちょっとカッコイイ別名」くらいの認識しかなかった。

CLSシューティングブレークの資料には「1960年代に、イギリス貴族がクーペスタイルの乗用車に余暇を楽しむための道具を収納する広いラゲッジスペースを設定した車両をシューティングブレークと呼んだ」とある。その発祥は言葉のイメージどおりにイギリスで、シューティングブレークは歴史的に、お金持ちの特別注文でコーチビルダーなどがつくったケースが多い。アストンやジャガーなどのそれが有名だし、それをカタログモデルにしてヒットしたリライアント・シミターGTEもイギリス車である。

メルセデスがいうように、シューティングブレークは「クーペスタイルに……ラゲッジスペースを設定」というところがミソだ。だからシューティングブレークは2ドア(ゲートを含めて3ドア)でなければならず、いかにスタイリッシュだとしても、セダンベースでは本来シューティングブレークとは呼ばない。このクルマも4ドア+リヤゲートいうボディ形式だから、厳密な意味ではステーションワゴンと呼ばれるべきだが、ベースのCLSは“4ドアクーペ”を標榜するからゆえのシューティングブレークだという。

まあ、そういう細かい言葉遊びはともかくとして、CLSシューティングブレークの成り立ちは、CLSのワゴン版にほかならない。既存のクーペ……というか4ドア版よりリヤオーバーハングが、わずか(5〜30mm)だがキチンと伸びているのもワゴンらしい。日本仕様のエンジンラインナップもセダンと共通の3種類だが、550シューティングブレークは4ドアとちがって4WDの4マティックのみ。日本の現状ではEのステーションワゴンに4マティックがないから、メルセデス日本はCLSシューティングブレークの4WDを、新たなカリスマ的レジャーツアラーに位置づけようとの意図があるかもしれない。

CLSシューティングブレークについて、メルセデスは「すべてはデザイン最優先、機能はただの副産物」と、清々しいほどハッキリと断言する。荷車的な雰囲気は微塵もなくて、ルーフラインはリヤエンドまでひと筆で降りていく。クルマ全体が低くて薄くて、そのうえ長くて巨大なので、こじんまりとまとまった有象無象のスポーツワゴンたちを、なんだかやけにビンボー臭い下級グルマに見せる。写真より、存在感はめちゃくちゃ高い。“シューティングブレーク”という一般的には意味不明のネーミングも、こういうブッ飛んだ独特のオーラと合わされば、とにもかくにも今までにない新しさの演出に大いに役立っている。

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