早川鈑金
TEL:045-593-3826
営業時間:9:00〜19:00 定休日:日曜日、祝祭日
※一部スタッフ:新型コロナウィルスワクチン接種完了
ポルシェからも認められた
板金塗装のオーソリティ。
工業製品として大量生産され、使い潰されてゆく自動車の中において、その圧倒的高品質故に、そして熱い走り故に、驚異的な現存・実働率を誇るスポーツカー、ポルシェ。その思想に共感して半世紀、数多のポルシェを救ってきた鈑金塗装のスペシャリストが早川鈑金だ。
早川鈑金では軽微な補修はもちろんのことながら、その社名が示す通り構造にまでダメージが及んだボディの修復や、レストレーションまでを手がける。工場内にはイタリア製のグローバルジグ式修正機“CAR BENCH”を備えている。この修正機は車種別に最適化された治具を使用して三次元的に正確なフレーム修正を行えるため、超高速走行時までの性能を要求されるポルシェをはじめとしたドイツ車には最適なシステムなのだ。特に911のボディは剛性が高いため正確なボディアライメントを出すためには、ボディを治具で完全に固定しての修正作業が必須となる。当然ながら同社ではポルシェ911歴代モデルの専用治具を備え、対応している。また、同社にはポルシェ以外にもメルセデスやVW、BMWなどのドイツ車も多く入庫している。
同社の代表である早川敏典氏は、ポルシェの公式なボディ・リペアに関する課程を修めている、日本においては数少ない鈑金塗装職人の一人でもある。これは本国の技術者の指導の下、正規の手順によるボディの修理法を習熟するものであり、すなわちポルシェ本社に認められた鈑金塗装のオーソリティであることを意味する。
ボディのレストレーションも同社の真骨頂。腐食により欠損したドアパネルやステップ、フェンダーなども一枚の鋼鈑より制作され、熟練の技術で歪みもなく継ぎ合わされる。取材当日も65年式の356Cがボディのフル・レストレーションの最中だった。よく「ナローはボディがユルい」などと言われているが、それは主にフロアなどの構造部分が腐食していることに起因するものであり、しっかりとした修理・修正をおこなえば、本来の剛性を取り戻すことができるという。また、同社は基本的には鈑金塗装工場であるが、機関や内装などに関しても協力関係にある信頼できるスペシャリストを紹介することもできる。
早川鈑金ではドイツ系のメーカーであるSTANDOX社の塗料を使用している。また、“VOCエナメル”と呼ばれるシリーズの低環境負荷タイプ塗料もラインナップしている。このような環境対策タイプの塗料は発色や特性など取り扱いが難しい傾向にあるのだが、そこは長年の経験と技術でカバーしているという。
さて、早川氏はどのような経緯でポルシェのボディのスペシャリストとなったのか。それは約半世紀ほど遡る。氏は最初に勤めた鈑金工場でVWビートルやカルマン・ギア、“ハネベン”と呼ばれたW110系のメルセデスなどの欧州車に触れ、その先進性と高品位な素材に感銘を受けたという。そんな氏のポルシェとの出会いは二十歳の頃。ナローの911が新車として販売され、356も現役だったその時代、六本木にあったミツワ自動車の工場で見たポルシェのメカニズムに今までのクルマ観が一変したという。
そして現在にいたるまでの約50年間、356や歴代の空冷911の修理を手がけてきたわけだが、70年代半ばのいわゆる“スーパーカーブーム”の頃には、今なおマニアの間で語られる伝説的な仕事にも携わっている。また、歴代のあらゆるモデルのポルシェ(の車体構造)を知り尽くしており、そこからフィードバックされたボディ補強にも定評がある。一からボディ制作され、20年以上も元気にサーキットを走り続けているクルマも多数いるというから、そのクオリティは推して知るべしだろう。
現在はご子息の浩一氏との二人三脚という体制の早川鈑金。卓越した技術とベテランの信頼感を持って、きっとこれからも美しいオールドポルシェたちを後世へと遺し続けるだろう。