エリーゼを再考する。 〜 ライトウエイトの理想型、S1 〜
オーセンティックカーズの小松です。
以前、今所有する現実的なライトウエイトとしてロータス・エリーゼ・シリーズ2のローバーKエンジン搭載車を考察しました。しかし、やはりロータスが21世紀のライトウエイトの理想として描いた、その姿を忠実に体現しているのはシリーズ1、とりわけ98年の極初期モデルであるといえます。
技術者集団であるロータスが90年代において考え得る限り軽量で強度の高いシャーシを作るために採用したのは、航空機技術であるアルミ押し出し材の接着構造と得意のファイバーボディの組み合わせでした。この圧倒的な軽さのシャーシに組み合わされたのは、MGF用のローバーKシリーズ。もとより軽量なエンジンながら、スペックとしては平凡なこのKに一切の手を加えず、ストックのECUとギアボックスごとそのままエリーゼのミッドに積み込みました。軽さを重視するためエンジンに取り付く補器類は最小限、わずかラジエータとオルタネータだけでした。極初期モデルではバッテリーすらフロントオーバーハング内の限りなく低い位置に押し込みました(しかもドライバーの反対側に!)。前後フードのプロップ(つっかえ棒)すら他の部品に兼用させて省略しました。さらにはブレーキローターやハブキャリアにはアルミを採用するという念の入れよう。もちろん、そんなギリギリの設計ですから、エアコンを装着する余地はまったくありませんでした。
そんな偏執的にプリミティブな設計によって車重はわずか700キロを切るところに抑えられました。しかしその後、市場からのモアパワーに応え、VVC付の「111S」、そしてモータースポーツへの参戦のためのマシン「スポーツ190」、そしてエキシージの原型である「モータースポーツ・エリーゼ」が登場するに従い、エンジンパワーのやタイヤサイズの拡大が行われ、オリジナルの設計では耐久性などの面で無理が生じてきました。その結果、ローターやハブは鍛造スチールへと置き換えられ、アーム類への補強も行われました。
シリーズ1エリーゼの到達点である「160」とそのモータスポーツ版「スポーツ160」ではついに吸気系(VVC用を流用)やカムプロファイル、ECUにまで手が入り、その結果本来低回転型のローバーKは7000回転という高回転を強いられるようになり、油温の上昇が避けられなくなりました。そこで採用されたのがフロントの空冷オイルクーラー。エリーゼはパフォーマンスアップという現実のために軽さという理想を少しずつ削られていったのでした。それでもなお最後までエアコンの装着を纏めることは叶わず、快適装備や耐候性に関する要件はシリーズ2に持ち越されることとなりました。
しかし、物理的なスペックアップと裏腹に、実際に運転してみて最も昔ながらのロータスらしい“速さ”を強く感じるのはごく初期のアルミローターのスタンダードモデル。それは絶対的な車重の軽さや重量配分、わずが2000回転で最大トルクを発生するスタンダードKとクロスしたギア比の組み合わせ、余計な補器が少ないことによるフリクションの少なさ、細いタイヤなど、それらの絶妙なバランスによるもの。それは現行のクルマにはもはや望むべくないものです。
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