こんにちは、オーセンティックカーズです。

実は今、弊社のショールームには2代目ロータス・エラン（M100）がなんと2台も仲良く並んでいます。

ライトウェイトスポーツのクラシックとしてその名を燦然と輝かす初代エランと、新世代ライトウェイトの旗手とも言えるエリーゼに挟まれたM100エラン。フロントエンジン・フロントドライブというスポーツカーとは縁遠いとされるディメンションを持つが故に、マイナー車の地位に甘んじているともいえます。しかし、歴代ロータスと同様のファイバー製ボディの内側には、これまた同じく伝統のバックボーンフレームを持つ、まごうことなきロータス一族であり、ロータスとして恥じることのないハンドリングにセットアップされたライトウェイトスポーツカーです。とりわけ、ミドシップカーではナーバスになりがちなウェット路においては、FWDならではの安定性で侮れない戦闘力を発揮するというのは、実際にこのクルマをドライブしたことのあるドライバーならば、誰もが頷くはずです。

さて、ショールームの2台のM100エランに話を戻しましょう。シルバーの個体は’90年の右ハンドルの英国仕様・自然吸気エンジン・スタンダードモデルです。いすゞから供給された1600cc・DOHC4気筒エンジンは自然吸気130ps仕様、右ハンドルのインテリアは、サイド部が黒レザーでセンターがクロスのスタンダードなシートとなっています。エクステリアでは無塗装のドアミラー、トランクリッドと一体になったリアスポイラー（ハイマウントブレーキランプなし）といった特徴を持ちます。

レッドの方は’92年の左ハンドルの日本仕様・ディーラー車でターボSEグレードです。いすゞ製エンジンはターボを備えた165ps仕様。インテリアもSE（Special Equipment）らしくレッドxブラックのフルレザーとなっています。こちらの外装はボディ同色のドアミラーに、トランクリッド上に別体でマウントされた3分割式のリアスポイラー（ハイマウントストップランプ付き）が特徴です。

その他の違いとしてはNAではインパネセンターの3連メーターにアナログ式時計を備えますが、ターボSEでは代わりにブースト計が。追い出された時計はデジタル式のものがエアコンのセンター吹き出し口の左側に備えられています。ちなみにシルバーはエアコンなし、レッドはエアコンを装備しています。

そして相違点の中でも面白いのがヘッドライト。いずれも左側通行用ですが、初期のモデルであるシルバーの個体は、ロータスが“オペラグラス・ヘッドライト”と称する、ヘッドライトカバーとランプ本体が独立しており、カバーがポップアップする動きに連動して上向きに格納されていたランプユニットが起き上がってくるという、非常に凝った構造になっています。これが高年式のレッドの個体ではカバーとランプが一体になっていて、前向きに固定されたランプユニットがカバーごとポップアップする構造に改められています。

その他、ロータスらしさを感じさせるのがトランクリッドやトノカバーなどの可動するパネルの精度と建て付け。後期モデルではパネル間の隙間がきちっと揃っているのに対し、初期モデルはその辺りが比較的おおらかだと言えます。初期型ほど技術者の理想が強く表れ、後期型になるほど市場で揉まれて実用性と信頼性が向上するというあたりはエリーゼの進化していく様子にも当てはまりますね。ボディパネルといえば前後フェンダーの真ん中にボディサイドを貫くように入れられたキャラクターライン。ドアパネルのものは確かにデザイン的な処理なのですが、前後フェンダーの方はこのラインに沿って上下で別パーツに分割されています。実はこの構造はエリーゼにも受け継がれているというのも興味深いですね。この構造によってバンパーやスポイラー類を仕向地や仕様ごとに作り分けることが容易になっていると思われます。法規やコスト面から生じるデザイン上のネガをエンジニアリングで巧みに処理していく手法は、ロータスの面目躍如といえるでしょう。

今やなかなか目にすることも少なくなったM100エランですが、偶然にもコンディション良好な2台が並ぶこととなりました。しかも初期と後期、右ハンドルと左ハンドル、NAとターボと実に対照的なこの2台。このクルマに興味を持って探しておられた方にとってはまたとないチャンスではないでしょうか。今ならば比較しながらチョイスすることができますので、ぜひ一度ショールームまで足をお運びいただき、実際に見比べてください。