ポンと付ければイイってものではない
リアルディレクションの奈良岡です。
「ノーマルよりもより気持ちよく走りたい」「サーキットでのタイムをアップしたい」。クルマをチューニングする動機はヒトによって様々です。
そして実際にクルマに手を入れるにあたって「○○を付ければ00秒アップする」「○○はチューニングパーツに交換しないとダメ」というようなことを信じて疑わないユーザーやショップは多いものです。しかし、「チューニングパーツ」といわれるモノをクルマにポンと付ければ速くなるのか? というと、必ずしもそうでもないんですね。
弊社で多く取り扱っている車種であるBMW MINI、とりわけJCWは、元々のポテンシャルが非常に高く、メーカーのセッティングも絶妙なので、単に社外パーツに交換しただけでは逆に乗り辛くなったりタイムも悪くなったりすることもよくあります。
こちらはR56用のインタークーラー。銀色の小さな方が純正で黒くて大きい方が社外品(独ワグナーチューニング社製)です。インタークーラーとはご存じのようにタービンで圧縮されて温度の上がった空気の温度を下げて、エンジンへ吸入する空気の充填効率を高めるパーツです。空気の温度を下げるにはコアの走行風のあたる面積を上げればいいのですが、単に大きくすればいいというものではありません。冷却効率のみを追求するとタービンで過給された圧力が低下してしまい(圧力損失)、結果としてパワーもなくレスポンスも悪くなってしまうのです。
実際、R53の頃には社外品の大容量インタークーラーに交換してパワーもレスポンスもノーマルよりも下がっている個体がたくさんいました。このワグナー製のインタークーラーは冷却効率と圧力損失のバランスが高レベルで取れている製品です。だからといって私はコレをお客様のクルマにポン付けするつもりはありません。
まずはin、outの両側にセンサーを取り付け、空気の温度や圧力とパワーの出方などのデータを実走しながら採取するつもりです。その上で本当にノーマル以上のパワーとレスポンスが得られるセッティングを探っていきます。