エミッション・スキャンダル ーー その問題の根源とディーゼルの今後

公開 : 2015.09.26 22:30  更新 : 2017.06.01 02:04

今回のエミッション・スキャンダルの結果、フォルクスワーゲンが信頼を取り戻すには相当長い年月を必要とするだろう。そこで、ディーゼルのエミッション・テストのキーとなる問題を議論していこう。

何故、フォルクスワーゲンはシステム偽証を行ったのか
アナリストの分析によれば商業的な理由が最大のものとして挙げられるという。EPAテストを正規にクリアするエミッションを達成しようとすると、ゴルフ、ジェッタ、ビートルの性能と燃焼効率が下がってしまうのだという。フォルクスワーゲンはアメリカでボリュームの大きなセールス・マーケットで戦っている。そのセールスを少しでも良くするためには、良い性能と燃焼効率を示すことが必要であり、そのためテストを偽るという考えが浮かんだのだろう。

今後、2.0TDIはアメリカのテストをパスすることができるか
専門家はイエスと答えている。EA189エンジンは、窒素酸化物を吸収するためにNOxトラップ触媒を使用している。このテクノロジーは広く使われているものであり、正常に機能する触媒でもある。BMWもこの触媒を使用している。従って、プログラムを正常なものに直せば、テストをパスするものと考えてよいだろう。

旧いフォルクスワーゲンも影響を受けるのか
これに関してはまだわからない。しかし、旧いモデルまで遡ってプログラムに修正を加えるとなると、そのコストは恐らく数億ドル(数百億円)になるだろう。

今後、アメリカでのフォルクスワーゲンの販売戦略は
しばらくはガソリン・エンジン・モデルのみの販売に移行し、ディーゼル・モデルの販売は中止しなければならないだろう。また、GTEのバッジをつけたハイブリッド・モデルの増産をすることとなるだろう。しかし、カーディフ大学のビジネス・スクール教授、ピーター・ウェールズによれば、ハイブリッド・モデルが充分にディーラーに供給されるようになるまでには18〜24ヶ月必要になるという。また、ハイブリッド・モデルは高価であるため、フォルクスワーゲンの売上高は落ちることになるだろう。オプションとして考えられるのは、グループ会社のアウディを売ることに力を入れることだ。しかし、そのボリュームをフォルクスワーゲン並に一気に引き上げるのは難しいと思われる。

今後、ヨーロッパでのディーゼル市場に与える影響は
昨年アメリカで販売されたディーゼル・モデルが3%だったのに対し、ヨーロッパ市場ではディーゼル・モデルが53%のシェアを占めた、従って、今回の問題が「ディーゼルの終焉」といったシンプルな見出しで語られることはないと思う。とは言え、確かにディーゼルは、欧州各国の政策として推し進められてきた感が強い。従って、メーカーもその長所ばかりをアピールすることに熱心だった。しかし、今、欧州の多くのユーザーは、ディーゼルの魅力を知るところになり、多くの人が次のクルマもディーゼルを選ぶことになろう。

他のディーゼル・モデルはEU6に本当に対応しているのか
少なくとも私の知る限りでは “無効化機能” が搭載されているという証拠は一切ない。また、これが真実だろう。メーカーはCO2排出量を1g/kmでも少なくするため、知恵を絞っている。

ガソリン・エンジンに同様の問題はないのか
“無効化機能” がガソリン・エンジンに使われていたという証明は現時点ではない。現在進行中の調査でもこの点はクリアにしなければならないだろう。

都市部でのNO2をどう考えるか
現実的な使用方法では、EU6に適合したすべてのディーゼル・エンジンが、テストと同じ燃費とNO2排出量を達成できるわけではない。そう言った意味に於いては、テスト結果と現実の乖離がある。また、例えば、イギリスのMoTテストを除けは、長く使われくたびれた排ガスを多く撒き散らすようなクルマを除外することが車検時に求められていない。EPAは、現時点で使われているクルマに対しての検査は行っていないのだ。しかし、今後、これは組み込んでいく必要があるだろう。しかし、アメリカには多くの州、例えばミシガン州もそうだが、車検というものが存在しないので、難しい問題ではある。

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