ボルボ、世界初導入となる歩行者用エアバッグの仕組みを公開
公開 : 2012.05.24 10:13 更新 : 2017.06.01 00:55
ボルボ・カー・コーポレーションは、新型ボルボV40に採用される、世界初の「歩行者用エアバッグ」の仕組みについて公開した。
交通事故死亡者数全体のうち、歩行者事故の割合はヨーロッパで14%、アメリカで12%、中国で25%を占めている。負傷者の数では更に多くなる。車と歩行者の事故による最も深刻な頭部外傷は、ボンネットの下にある硬いエンジンなどの部品と、フロントガラスの下縁部やAピラーへの衝突によって引き起こされているという。
ボルボは、今年3月に行われたジュネーブモーターショーにおいて、世界でも革新的な「歩行者用エアバッグ」を搭載するV40を発表していた。
ボルボのシニア安全技術アドバイザーを務めるトーマス・ブロバーグは次のようにコメントしている。「歩行者用エアバッグを搭載した車をお客様に提供できる事を非常に嬉しく思います。この歩行者用エアバッグの目的は、歩行者がボンネットやフロントガラス、Aピラー部分に頭を打ち付けて致命傷を負う可能性を防ぐことにあります」。
車の正面に埋め込まれた7つのセンサーがコントロールユニットに信号を送信し、車体が何らかの物体との接触を感知すると、信号が変化し、コントロールユニットがその信号を評価。感知した物体が人間の脚として認知された場合、歩行者用エアバッグが展開するという仕組みとなっている。
更に、ボンネットのヒンジ部分には、システム起動時にピンを引き出しボンネットパネルの背面を開放する機能が備えられている。その起動と同時にエアバッグが作動し、ガスの充填を開始。エアバッグが膨張する際にボンネットを10センチ持ち上げ、その位置を保持する。
ボンネットとエンジンコンパートメント内の硬い部品の間に隙間を作ることで、ボンネットを変形させ衝撃を吸収するスペースを与え、歩行者と衝突した際に衝撃を和らげる効果を生み出すのだ。「エアバッグには2つの機能があり、1つ目はボンネットを持ち上げスペースを生みだすこと。2つ目にフロントガラス付近の強固な部分に衝突した際の衝撃を吸収する機能です」とトーマス・ブロバーグは説明する。
エアバッグは、膨らんだ状態で、ワイパー全体の収納部とフロントガラスの約3分の1、並びにAピラーの下部をカバーする。全ての連動したシステムが起動してから完全に膨らむまで、200〜300分の1秒で作動するという。
なお、このシステムは、時速20キロから時速50キロでの走行で作動する。歩行者が関係する事故のうち、75%が時速40キロ以下での走行時に発生しているという分析があるからだ。
「我々は、コンピュータによるシミュレーションと人間を模した脚と頭部の模型を使いこのシステムを開発しました。多種多様な状況を想定し実験を行いました」とトーマス・ブロバーグ氏は話している。