ボルボS60 D4 SE

公開 : 2014.02.08 22:00  更新 : 2017.05.29 19:08

■どんなクルマ?

歴代のボルボの中で最も経済性に優れ、100g/kmを下回るC02排出量を実現した初のモデルがこのボルボS60 D4である。搭載されるエンジンは全面的に新設計されたもので、設計と製造は共にボルボ自身の手によって行われている。S60シリーズの中では、この新型D4が一連の新開発エンジンを搭載する最初のモデルである。

ボルボはいずれすべてのエンジン・ラインナップを、ガソリン仕様とディーゼル仕様の2つのユニットに絞るという。ディーゼル仕様は最高出力を122psから234psの間で4つのレンジに分けて構成するとのことだ。今回テストした181psのモデルは3番目のレンジを担うものと思われる。そのために99g/kmというCO2排出量にもかかわらず、クルマ好きには堪らない性能が与えられているのだ。とりわけ徹底的な電子制御化を狙った新設計エンジンにそれを見ることができる。

デンソー製の最新式燃料噴射テクノロジーを利用したエンジンは、2500気圧仕様のコモンレール式噴射ポンプを採用している。この燃料噴射ポンプはほとんどのライバルより約500から700気圧も高圧化されたものだ。また、4本のインジェクターで1つのセンサーを共用するのではなく、各インジェクターにセンサーが備わることにより高精度な燃料供給を実現している。ボルボの話しでは1燃焼サイクルにつき最大9回のマルチ噴射が可能だという。

それ以外にも、摩擦損失の低減、温度管理の改善、排出ガス後処理システムの改良という新技術が盛り込まれている。

■どんな感じ?

素晴らしいの一言に尽きる。スペックを見る限り、同じレンジに位置する他のディーゼル・エンジンがすべて無用の長物に思えてしまうほどだ。0-100km/h加速の6.9秒という記録は、2.4ℓ5気筒モデルのD5とぴったり同じで、26.3km/ℓと発表された複合燃費はレンジ内で最も優れている。

このクルマは一般のドライバーにとって最高の選択になるだけでなく、社有車として利用する従業員の財布にもやさしい魅力的な一台なのである。エントリー・グレードとなるビジネス・エディションを選べば、20%の現物給与税が適用される人は毎月の負担が£53.99(約9000円)になり、BMW 320d SEを選ぶよりも£35.80(約6000円)の節約となるのだ。

このクルマに搭載される新設計の2.0ℓエンジンは、維持費が手ごろなクルマの割には力強さがあるうえ、直線路においては素晴らしいパフォーマンスを発揮するのだ。長年親しんだ5気筒、6気筒エンジンの生産終了を聞いて涙した人たちには、この4気筒ディーゼル・エンジンの優れた静粛性や滑らかに高まっていくパワーはうれしい驚きになるだろう。

ステアリングは正確でスムーズな動きをし、十分なフィードバックとグリップが得られる。まさにボルボの典型と言ったフィーリングを味わえるのだが、飛びぬけて優れていると言えるものではない。

しかし、S60には切り札と呼べるものがある。ビジネス・エディションとSEスペックの場合、標準サイズのホイールと組み合わせると素晴らしい乗り心地を味わえるのだ。柔軟なサスペンションは路面の凹凸を吸収し、メカニカル面での優れた改良によりエンジン音と、さらには風切り音まで上手に封じ込めているのだ。

■「買い」か?

その通り。主観的に見ても客観的に見ても、新開発のD4 DRIVeエンジンはただでさえ魅力的なプレミアムDセグメントに狙いを定めている。

動力性能ではBMW 3シリーズアウディA4にはかなわないかもしれない。しかし、多数派のドイツ勢に追従するだけのメーカーにはない威厳をこのクルマには感じるのだ。さらに優れたランニング・コストを考えると、とりわけ社有車利用にかかる税金に苦しむドライバーにはますます無視できない存在なのである。

(スチュアート・ミルン)

ボルボS60 D4 SE

価格 £29,395(493万円)
最高速度 230km/h
0-100km/h加速 6.9秒
燃費 26.3km/ℓ
CO2排出量 99g/km
乾燥重量 1580kg
エンジン 直列4気筒1969ccターボ・ディーゼル
最高出力 178bhp/4250rpm
最大トルク 40.1kg-m/1750-2500rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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