【素足でアクセル操作】ルノー・ゾエ 航続距離の記録更新 最長764km、挑戦の裏側

公開 : 2021.06.29 18:05

ルノーの小型EVゾエが一度の充電で764kmを走り、航続距離の記録を更新しました。その裏側を紹介します。

純正仕様でも680km超

text:John Evans(ジョン・エバンス)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

6月初め、ルノーが欧州で販売するEVゾエの「EテックR135 EV 50kWh GTライン」は、工場出荷時の仕様に何の改造も加えず、1回の充電で公式のWLTP航続距離より約290kmも長い、684kmを走行するという新記録を樹立した。

この記録は、レースサーキットを平均速度32km/hで走行し、快適機能を一切使用しないという条件で達成された。昼から夜に変わっても、ゾエのヘッドライトは消えたままで、6人のドライバーチームは暗視ゴーグル、標準のデイタイム・ランニングライト、蛍光のマーカーを頼りに走行した。

記録を更新した2台のルノー・ゾエ
記録を更新した2台のルノー・ゾエ

盲目に近い状態のドライバーが乗るゾエで、夜は寒く、昼は暑いクローズドのサーキットを穏やかに周回する。何のためにそんなことをするのか?新記録の樹立のためだ。

この記録は、2018年にフランス人ジャーナリストのピエール・デジャルダンが、40kWhの小型バッテリーを搭載したゾエR110で出した記録を上回るものだった。彼は、WLTP航続距離よりも265km長い565kmをドライブした。彼はパリのペリフェリック(環状道路)で走行したのだが、交通量は少なく、周囲の気温はバッテリーに優しい35度だった。

しかし、デジャルダンだけでなく、ゾエEテックR135 EV 50kWh GTラインで英スラクストンを24時間以上走り続け、記録を更新した6人の英国人ドライバーとそのサポートクルーも祝福したい。彼らは2台のゾエを走らせた。

2台とも同じモデルだが、一方は新設計の転がり抵抗の低いタイヤを装着していた。この特別なタイヤのおかげで764kmを走行し、1kWhあたりの走行距離も純正のミシュラン・プライマシーを履いた標準車が14.6km、デジャルダンのゾエが12.7kmだったのに対し、16.9kmを記録した。

ハイパーマイリングを猛練習

このような耐久テストは、実施する人の腕前に左右される。スラクストンでは、優秀な人材に不足はなかった。今回の記録挑戦は、英国の軍によるモータースポーツ慈善団体であるミッション・モータースポーツによって企画された。6人のドライバーのうち5人が退役軍人であり、6人目のケビン・ブッカーはEVを取り扱う法人のマネージャーで、ハイパーマイリング(クルマの航続距離を最大限に引き出す運転)に情熱を注いでいる。

彼らはまず4時52分の日の出とともに出発し、各ドライバーは32kmの走行を行った。前の晩から適切なバッテリー温度を維持しようとしたが、霧が出ていて気温も7度しかなかったため、冷えたバッテリーの性能が発揮できず、85km走ったところで一旦走行を中止してバッテリーを充電。9時40分に再スタートした。

記録更新に挑戦したドライバーとクルー
記録更新に挑戦したドライバーとクルー

チームは記録達成に向けて丸2週間の練習を行い、ブッカーの指導のもとでハイパーマイリングの技術(アクセルを柔らかく踏むため、素足で足の指を使ってペダルを操作するなど)を磨いていた。

ミッション・モータースポーツの創設者兼CEOであるジェームズ・キャメロンは、「今では目隠しをしたまま、暗闇の中で3.8kmのサーキットを走ることができるほど熟知しています」と語った。

2日目の6時33分には、純正タイヤを履いたゾエでデジャルダンの記録を更新していた。ドライバーは、元王立ランカシャー連隊のトリスタン・ドーバーだ。

「脳のスイッチを切ることはできません。常にコースを読み、路面のグラデーションを探るのです。記録を更新したときは、胸にグッときました」

8時30分、標準のゾエのバッテリー残量は5%、低転がり抵抗タイヤを装着したゾエは13%だった。2台のゾエは朝方まで滑るように走り続けた後、停止した。

「航続距離の不安を感じたのは、720kmを超えられないと思ったときだけでした」とブッカーは言う。

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