フォルクスワーゲン・ポロ ブルーGT

公開 : 2014.11.25 18:52  更新 : 2017.05.29 18:57

1.2ℓモデルから2カ月遅れて1.4ℓが、“ブルーモーション”抜きの“ブルーGT”として追加された。ゴルフ標準モデルの上級車種を凌ぐパワーとエコの両立を示したその名にふさわしい走りなのか?

古来より、二兎追う者は一兎をも得ずと言い習わす。虻蜂取らずとも言う。要は、目移りせずに腹を括って目標を絞れという話だ。ポロのブルーGTに乗って思ったのは、こういう類の故事だった。

このクルマはゴルフのハイラインが積むEA211型1.4ℓ直4ターボを載せている。このエンジンは、カムシャフトずらし方式で2気筒を休止させる機構が盛り込まれている。軽負荷時にその機構を働かせて損失を軽減して燃費を向上させるからブルー。また、最高出力は150psでポロGTIの179psに迫り、最大トルクは25.5kgmで等しい。そういう性能の高さを持つからだからGT。つまり、速さと省燃費を兼ね備えたモデルというVWの主張である。

ところがそのエンジンが、性能面では納得できても感覚的な面では素敵とは言いかねる仕上がりだった。2気筒休止それ自体は確かに効果がありそうだ。4気筒では80km/h巡航時に20km/ℓほどを指す瞬間燃費計が、2気筒に切り替わると40km/ℓ台に跳躍するのだ。しかし、交通量が多くて常に微妙な加減速を頻繁に求められる日本では、その機会がさほど多くならない。平坦な高速道路で空いたところを見計らって試したところ、慎重に右足を使って一定速巡航すれば100km/hを超えるあたりまでは2気筒休止モードに持ち込める。だが、そこから僅かでもアクセルを動かすと、とたんに4気筒に復帰してしまう。思うにこれは、上限120km/hまでの加減速とは言いつつ、日米のそれよりもずっと一定速走行の時間が長いNEDC(新欧州運転サイクル)に準拠した燃費およびCO₂排出量の計測を視野の中心に据えて仕立てられたものだろう。アクセルを抜いたときには2気筒になり、それが回生ブレーキはもちろんコースティング機構ほどでもないが燃費の節約にはなっているようだったから、ブルーの看板に偽りありとは言わないが、謳い文句ほど実利はないと思う。日本車は受験対策のように燃費計測に特化したクルマ作りをすると自動車評論家の皆さまは仰るが、これを見ても分かるとおり欧州車も大して違いはない。

それよりも気になるのは、普通に加速する際のエンジン制御だ。ドイツ車は、アクセル開度スピードに対して非常に敏感に反応してエンジン側スロットルを大開きさせる設定を好むが、ポロ・ブルーGTの直4ターボはその傾向が顕著だ。日本のトラフィックでは、ほんの少しだけ、しかし可能な限り素早く車速を上げたいことが多いが、そんなときにエンジンは無用なまでに元気に反応する。一方で、お通夜のようにアクセルを扱えば2気筒が死ぬ。ブルーとGTの間をこの直4ターボは激しく行き来するのである。それは全くジキルとハイドである。

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