BMW、次期3シリーズから4WDのEVモデルを投入

公開 : 2015.01.10 22:50  更新 : 2017.06.01 02:11

BMWは、次期3シリーズからロールス・ロイスに至る全モデルに4WDのEV版を投入する準備ができていることを明かした。

ボディとパワートレインの用意が出来つつあることが、このような考えに達した要因だという。後輪に動力を供給し、従来のトランスミッションでスチール製ボディを動かすというレシピは ’過去のもの’ になるというのが、エンジニアリング部門の見据える将来像だ。

ボディはスチールやアルミニウム、複合材から構成され、パワートレインの主要ソースは大型バッテリー・パックから支援を受ける電気モーターへと変わっていくのだそうだ。

基本構造から徹底的に見直された内燃機関を新たに開発する可能性もあり、その際にはほとんどのタイミングで発電装置として作動させることにより、常に高い経済性を確保する。

もちろん目標達成のためにはエアロダイナミクスの向上に注力し、空気抵抗に対する抜本的な見直しも図るということだ。

接続技術に関しては3Dサテライト・ナビゲーションを採用。いち早く進行方向の傾斜を察知し、エネルギー消費を抑えながら、バッテリーを再充電するコースティング機能を作動させる。

また高速走行における空気抵抗も加味して、ナビゲーションがモーターウェイに近づいていることに気づけば、車高を自動で落としてくれる機能も加えられる予定。さらに前部のエア・インテークを閉じることにより、さらなる空気抵抗の低減を追求する。

このようにBMWが根本から考えを改め直したことには、一段と厳格化されるEUのガソリン消費レギュレーションが大きく影響を及ぼしているのは言うまでもない。

自動車メーカーはCO2排出量を85〜110g/km、平均で95g/kmまで抑えなければならないという課題を突きつけられているのだ。

1シリーズやミニ・ファミリーよりも大きい3/4/5シリーズは総じて75%、数値的には50g/kmかそれ以上の低減を求められていることになる。

その手始めに、2016年には3シリーズ e-Driveを市場投入し、その後数年でより大型のモデルにも同様の技術を採用する予定だ。

近年のプラグイン・ハイブリッド技術の抱える、バッテリー・スペースや重量、コストの問題は、3シリーズ e-Driveの開発時に根本的に見直すのだそうだ。

その一環として、まずはボディの軽量化に力を注ぐ。その第1世代は、今年の夏に登場予定の次期7シリーズになる予定で、こちらのボディシェルは複合素材を多分に用いる。

具体的には高張力鋼板と、鋳造あるいは押し出しのアルミニウム、カーボンファイバーなどを織り交ぜて製作するのではないかというのがAUTOCARの予想である。

屋根やピラー、シルなど強度が必要な部分には複合材料を用いることにより、ダイエットを進めながらも剛性を高めていくのではないだろうか。

カーボンファイバー素材そのもののコストは、他の素材に比べてまだまだ高いため、2018年、つまり次期3シリーズがデビューする頃は、上記の複合材を用いる手法を採り、その後にカーボンファイバーをメイン素材として使用する方法にシフトしていくのだそうだ。

パワートレインに関しては、将来のBMWはすべてオンデマンド方式の4WDシステムを採用するというのは興味深い。”3シリーズからV12のロールスまで” と表現するハイブリッド・パワートレインは1つはリア・アクスルに、1つはエンジン直後に設置される2機の電気モーターを使用する。

大型のバッテリーはセンター・トンネルと、ガソリン・タンクがあった部分の一部に設置され、鼻先におさまるエンジンは、その大部分が電気モーターをアシストするためのジェネレーターとして働く。つまり前部の電気モーターがパワートレインのキーとなるのだ。

通常走行時は、まだ詳細が明かされていない新型トランスミッションを介して前輪を動かす。80km前後以下ではエンジンがモーターを ’アシスト’ することに留まり、高速走行時のみ推進源として仕事をする。

新しい電気モーターとトランスミッションに関する詳細情報はまだ無いに等しいが、とあるエンジニアによると、エンジンは前輪のみを動かすだけで、動力を与えるとしても一般的なシチュエーションでは全体の約10%程度のものだとAUTOCARに明かしてくれた。

あくまで補助的な役割しか担わないため、これまでのガソリン・エンジンのように ’味わい’ を添えるものではなく、無駄が省かれた簡素な機械構造体としてガソリンの消費を極力抑えていくのだそうだ。

今日の多くのシステムに見られる、複雑さと嵩むコストを省みることにより生じた余剰分を、電力装置に投入できると考えていることが伺えた。

もちろんBMWの掲げる ’究極のドライビング・マシン戦略’ が失われたわけではなく、その証として、バッテリーは車体の低い部分に、ジェネレーター/モーターは車体の中心部に限界まで寄せられている。したがって現在のFRモデルと比較して、さらにバランスがよくなっていることも予想される。

電気パワートレインに移行する際には、従来のモデル名表記も新たなものに変わるとのこと。動力性能は電気モーターに多くを頼ることになるため、最大トルクをモデル名に反映するのだそうだ。したがって ’345’ は3シリーズ/450Nmを意味する。

以下に総点をおさらいしていこう。

BMW3シリーズ・プラグイン・ハイブリッド(2016年)

電化の先行馬として投入するのは、先述の3シリーズのプラグイン・ハイブリッド版。最大の人気車種だけに、”開発は急務” というのが社の見解だ。

エンジン
その3シリーズ・プラグイン・ハイブリッドは、コンベンショナルな180psの2.0ℓ 4気筒ターボを採用。組み合わされるギアボックスは8速ATのみとなる。

バッテリー・パック
7.6kWhのバッテリー・パックはリア・アクスル部に搭載され、荷室容量はほんのわずかに小さくなるに留まる。電気のみの航続可能距離は35kmとなる。

3Dサテライト・ナビゲーション
もちろん3次元で前方のルートを捉えるが、これに加えて、システムから得た情報をコンフォート/スポーツ/エコ・プロからなるドライブ・モードを変換する。

コースティング機能
160km/hまでは ’惰性’ 走行が可能。トランスミッションを切り離し、エンジンをアイドリング状態に切り替えることによりガソリン消費をゼロにする。

電気モーター
従来のトルク・コンバーターは電気モーターに置き換わり、最大で96psと25.6kg-mを発揮する

BMW3シリーズ・ハイブリッド(2022年)

90%は、希薄燃料のジェネレーターとしての仕事しかせず、2機の電気モーターが並外れたトルクを発生するため、従来のエンジンとしての働きをするのはごく稀なシチュエーションのみ。したがってターボ加給や、インタークーラー・システム、バルブトロニック・システムを必要とすることはなさそうだ。

システム構成は単純なものとし、価格も抑える方針。エンジン重量は、驚くほど軽くなっているのだという。

新しいトランスミッションは3段以上にはならない予定であり、遊星歯車機構を採用する可能性が高い。ここ最近、多くのメーカーが採用する8速/9速ATや、デュアル-クラッチよりも安価に済むことが一因だ。

プロペラ・シャフトを省き、従来のガソリン・タンクを縮小することで、バッテリー・パックを大型化する。リアのディファレンシャルも必要なくなる。またモーターが制動もおこなってくれるため、機械的なブレーキ・システムは小さく、軽く、安く済む。

多くの複合素材からなるボディ・シェルのおかげで、従来の3シリーズより100kg以上軽くなる。バッテリーの重さを加味しても、この軽量化は多くの利益をもたらすことが容易に想像できる。

ハイブリッド・パワートレインは、一時的あるいは恒久的な4WD走行を可能にする。また、このシステムは2022年以降どのモデルにも採用予定だ。

発電機やバッテリー・パックをシンプルなものにすることで、サイズを変えやすくし、したがって3シリーズからX5やロールス・ロイス・ファントムに至る幅広いモデル・レンジに適合させる。この結果莫大な制作資金をセーブすることができるうえ、リサーチや開発資金を紡ぎだせる計算だ。

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