【未来の都市型モビリティ】電動キックボード 安くて便利、渋滞解消にも貢献 市場は白熱

公開 : 2021.04.14 06:25

電動モビリティへの注目度が高まっています。パンデミックを機に販売は拡大。自動車メーカーも注目しています。

パリでは増えすぎて問題も発生

text:Jim Holder(ジム・ホルダー)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

Lime、Bird、Flask、Vogo、Grin and Yellow、Skip、Spin……いずれも数百万ドル(あるいは数十億ドル)規模の企業で、その一挙手一投足を自動車メーカーが注目している。

これらの企業は、電動モビリティ革命の中心的存在であり、電気を動力源とするバイクや自転車、キックボードなどを手掛けている。

VWグループ傘下のセアトが開発したeスクーター
VWグループ傘下のセアトが開発したeスクーター    セアト

投資家は、こうした企業が持つファッション性と破壊的イノベーションという2つの要素に着目している。現状を打破して、手っ取り早くお金を稼ぐチャンスを提供してくれるのだ。また、普及すれば排出ガスや渋滞の削減にもつながる。

都市部における「eスクーター(電動キックボード)」のシェアリングサービスは、時代の流れに乗っている。アプリで利用できるこの交通手段は、タクシーより安く、自転車より労力がかからず、バスよりも便利だと利用者に評価されている。

パリは2018年にこの動きの先陣を切ったが、ある政府関係者が「アナーキー」と表現したように、2万台のeスクーターが路上を占拠するのを、パリの議員たちは恐れおののきながら見ていた。スピード違反や飲酒運転、衝突事故が頻発し、路上放置による通行の妨害などもあった。

あまりの人気の高さに、当局は多少の後退を余儀なくされ、12の事業者の権利を取り消して3つの事業者に再発行し、今年の時点で5000台のスクーターを提供できるようにした。大量に導入された場合、交通量が50%、公害が30%削減されるという予測があるが、それはまだ現実ではなく目標に過ぎない。

今後10年間で市場規模は拡大

しかし、サプライヤーの間では機運が高まっている。現在の市場規模は150億ポンド(約2兆2500億円)と推定され、2030年には300億ポンド(約4兆5000億円)に達すると予想されているが、これは控えめな見方だ。

日本では、eスクーターは原付と同じ扱いになるため、ヘルメットの着用やナンバープレートの装着義務のほか、歩道を走れないなどの制約がある。英国では、私的利用は依然として違法だが、サブスクリプション・サービスの試験運用が行われている。

VWグループ傘下のセアトが開発したeスクーター
VWグループ傘下のセアトが開発したeスクーター    セアト

eバイク(電動自転車)もこの争いに加わっている。eバイクでは、人間がペダルを漕ぐのをバッテリーの電気の力で補うのが一般的だ。eバイクはパンデミックで大きく売上を伸ばした。2019年に欧州で販売されたeバイクは370万台だったが、2020年は23%増加し、2024年には年間1000万台、2030年には1700万台に達する見込みだ。そうなると、新車の販売台数を上回ることになる。

自動車メーカーが注目しているのも当然だ。eスクーターやeバイクと価格帯は異なるかもしれないが、こうした新しいモビリティが持つメッセージは明確だ。特に都市部での電動化は、自動車を大きく超えて、交通手段、ひいては社会そのものに変化をもたらすだろう。

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