フィアット500 カルト ツインエア 105

公開 : 2014.03.07 22:45  更新 : 2017.05.29 18:51

■どんなクルマ?

フィアット500が2014年モデルにアップデートされる。2014年モデルには新型エンジンが与えられ、新たなトップ・グレードが設定される。

興味深いことに現代版の500は発表されてから7年経つというのに、発売開始当初と比べてマーケット・シェアが落ち込んでいないのだ。それにもかかわらずフィアットは500のフェイスリフトを行うという。スタイリングに関しては、それほど大きな変化は生じない。以前からあるグレードでは、ペイントの仕上げが新しくなり、アロイ・ホイールと内装のデザインが新しくなるくらいだ。

しかし今回のフェイスリフトでは、新たなフラッグシップである”カルト”がラインナップに加わる。4月に発売開始されるこのモデルは、現行の最上級グレード”ラウンジ”よりも約£1500(約25万円)ほど高い価格と予想されている。

“カルト”ではテールランプの囲いやドア・ミラーがグロスブラック塗装になっている。このドア・ミラーについては追加料金なしでクローム仕上げを選ぶことができる。また、ホイールは16インチのアロイ・ホイールが装着され、”ラウンジ”の15インチからアップグレードされている。他にも、バック・センサー、フラウレザー・シート、ドライバーの正面にはダイアル式メーターに代わって7インチのカラー液晶ディスプレイが備わる。空調についても、4気筒の”ラウンジ”ではマニュアル・エアコンだったが、”カルト”ではフル・オートエアコンが装備される。これはツイン・エアの”ラウンジ”のみに設定されていたものだ。

われわれのような人間にとって注目点と言えば、106ps仕様の0.9ℓツインエア・ターボが導入されることだ。小さいながらも働き者のエンジンがプラスの21psをひねり出すこの仕様は、85psモデルに£700(約10万円)を追加するだけですべてのグレードで選択可能だ。106psモデルの最大トルクは14.8kg-mのまま変わりはないが、0-100km/h加速を10秒足らずで達成し、最高速度は14km/hも速くなっている。

6段ギアが追加されたことによって、都市部を離れると燃料消費率がわずかに改善し、28.6km/ℓという素晴らしい数値を記録する。しかし都市部に戻ると、低出力グレードの燃料消費率18.2km/ℓに比べて15%ほど悪い数値になってしまう。多少心配なのは、ツインエアの初期モデルでは公式発表の複合燃費に比べて、半分ほどしか走れなかったことだ。その他の点では、106psモデルは搭載するブレーキが改良型のものになり、フロントが新型のベンチレーテッド・ディスク、リアは85psモデルがドラムであるのに対してソリッドディスクになっているのも大きなポイントだ。

■どんな感じ?

凝った意匠の”カルト”のインテリアは多くの人に受け入れられるだろう。レザーシートは固めのもので腿の辺りをしっかりグリップする。スポーツ仕様のSグレードで標準となるTFT液晶メーターはなかなかの装備で、ツインエアをスポーツモードで走らせると、ブースト系の表示がホワイトからレッドへ反転していくのが楽しめる。

エンジン始動時には初期設定でエコ・モードになるので、最高出力は本来の106psから98psへ落ち込み、最大トルクも12.3kg-mまで減少する。もしも走りを楽しむつもりなら、すぐにスポーツ・モードへ変更することをお勧めする。スポーツ・モードでは、ターボが掛かると一呼吸置いて回転が高まるのを感じられ、エンジンルームから迫力のあるハーモニーが響いてくる。運転しているとそれが楽しくて、0-100km/h加速は実際の数値よりも速く感じるのだ。しかしそこからはあっという間にレブ・リミッターが介入してくる。3速では6000rpmでリミッターが働き、1、2速ではさらに低い回転から介入してくる。まるでトルクの谷間に落ち入らないようシフトアップを促されているようで、少々わずらわしいものだ。ことによると、”息継ぎしてトルクが沸き上がる”の繰り返しが嫌になるという人もいるだろう。

このクルマは目に余るようなトルクステアを発生しないが、加速とともにステアリングの手応えが重くなるのが不自然な感触だ。また乗り味はスポーティというよりは柔らかめのもので快適性重視のセッティングだ。それでもロールは適度に抑制されていて、過度に足回りを固められたアバルトよりも好ましい。

■「買い」か?

どちらかと言えば106psのツインエアは趣味性の高い選択だ。なぜなら84psモデルの走りに比べて、良いところも不満なところもずっと際立っているのだ。市街地走行が一番多いというドライバーなら、気になるのは都市部の燃費がそれほど優れたものにならない点だ。わたしの感覚ではこのクルマに興味をもつラグジュアリー志向のドライバーは、走り重視というわけではなく、上品に仕上げた1.3マルチジェット・ディーゼルのようなものを好む。

しかしアバルトのエントリー・グレードと迷っている若いドライバーなら、106psのツインエアSグレードはおよそ£700(約10万円)を節約できるし、保険料も安く収まる点が大きな魅力だろう。さらには、このクルマならではの使い勝手の良さも見逃せない利点の一つと言えよう。

(リチャード・ウェーバー)

フィアット500 カルト ツインエア 105

価格 £15,000(約250万円)
最高速度 188km/h
0-100km/h加速 10.0秒
燃費 23.8km/ℓ
CO2排出量 99g/km
乾燥重量 940kg
エンジン 直列2気筒875ccターボ
最高出力 104bhp/5500rpm
最大トルク 14.8kg-m/2000rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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