【目指すは本物の四輪駆動】イネオス・グレネーダー 試作車へ試乗 ディフェンダーを再設計 後編

公開 : 2021.07.05 19:05  更新 : 2022.08.08 07:29

見通しの付かない社会を反映するように、人気が高まるオフローダー。新興メーカーが生み出した気鋭の1台を、英国編集部が評価しました。

BMW製の直6ターボにローレンジ・ギア

text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
イネオス・グレネーダーの動力源は、BMWの3.0L直列6気筒ターボ。トップクラスのオフロード性能とオンロードでの実用性に対し、必要なパフォーマンスとトルクが得られるエンジンとして採用したと、イネオス・オートモビル社を率いるハイルマンが話す。

「当初は6気筒だけでなく、4気筒の可能性も検討しました。コストとパッケージングを精査する中で、BMW社製の直列6気筒がベストだという結論に至りました。ガソリンとディーゼルの両方で」

エンジンは2.5t以上の車重を持つオフローダーに合わせて、チューニングを受けている。ガソリンの最高出力は287psで、最大トルクは45.8kg-m。ディーゼルは253psと50.9kg-mを発揮する。

ただし、数字はまだ最終決定ではないらしい。ハイルマンによれば、量産までにディーゼルは5.1kg-mほどトルクが増える可能性がある。

トランスミッションは、ZF社製のトルクコンバーター式8速AT。そこに、トレメク社製のローレンジ・トランスファーが組み合わされている。いわずもがな、四輪駆動だ。

グレネーダーに乗ろうとすると、ボディの高さを強く意識させられる。サイドステップに足をかける以上の努力がないと、運転席には座れない。

ドライビングポジションは素晴らしく、シートはゆとりがある。ドアトリムの作りも良く、腕を載せられる厚みもある。ドライバーのすぐ横にドアがあった、オリジナルのディフェンダーとは大きく異る。

初代ディフェンダーより遥かに優れる洗練度

ダッシュボードの奥行きは、最近珍しいほど浅い。でも高い位置にあり実用的なデザインだ。運転席からの視界も良好。ボンネットやフロントフェンダーの角がよく見える。リアミラーも、後方を確認するのに不足はない。

まだ正式発表前ということで、ここではインテリアへは詳しく触れられない。構造はトラディショナルだが、フロントシート側は広々としている。メーターパネルやエアコンなどの操作系は、イネオス社のオリジナル。訴求力はあると思う。

イネオス・グレネーダー・プロトタイプ
イネオス・グレネーダー・プロトタイプ

オンロードを走り始めると、ATが印象的なほど滑らかに仕事をこなしてくれるが、BMW由来のガソリンエンジンの力強さは額面ほど感じられない。グレネーダーの車重は2600kgから2700kgの間に収まるらしく、かなりの重量級だからだ。

それでも、納得できる発進加速を引き出せ、トルク感にも余裕はある。洗練度も高い。高級車の水準ではないにしろ、10年前のディフェンダーより遥かに優秀。試作段階だからか、トランスファーケースからメカノイズが少し響いていたけれど。

直立したフロントガラスと大きなサイドミラーのおかげで、高速走行時の風切り音はかなり大きい。ギア比を調整して、最高速度が160km/hに設定された理由でもある。

257mmの最低地上高とリジッドアクスルという組み合わせから、ハンドリングには期待を持てなさそうだが、実際はそこまで悪くもない。確かにスプリングは柔らかく、車重も重く、コーナリング時にはボディロールが大きい。

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